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小話 ~絆~

「帰るのか?」

後ろ髪引かれるように振り返り、そのまま、じ…、と扉の向こう側へと視線を向けるシオンに、ユーリは意外そうな表情(かお)を向けていた。

「……あぁ」

少しだけ考え込むかのような間があって、それでもシオンは先ほどまでいた部屋へと背中を向けて歩き出す。

「まぁ、過保護になりすぎるのも問題だしな」

気持ちはわかるけど。と小さく肩を落とし、ユーリはその隣を歩き出す。

てっきりアリアを家まで送っていくつもりなのかとも思ったが、どうにも残りたい雰囲気を醸し出していた少女の気持ちを優先させたらしい。

さすがに「待つ」という選択まではせずに優雅な足取りでその場を後にしたシオンの横顔をちらりと見上げ、ユーリは様子を伺った。

愛しい少女を片時も離さず手元に置いておきたいというのがシオンの本音だろうが、現実にはそんなことができるはずもない。ここでアリアを待っていたとしても普通に受け入れてられてしまう程度には無防備であろう少女を思うと、なんとも表現し難い苦笑が洩れてしまうけれど。

何処にでも駆けて行ってしまう少女を心配する気持ちはユーリも同じ。

だから。

「だったらちょっと付き合えよ」

このままウェントゥス家まで同乗させろと見上げてくる強い瞳に、シオンは一体なんだと眉を寄せる。

「特訓」

「特訓?」

真っ直ぐ前を見据えたその横顔に問い返せば、ユーリの身体へとぐっと力が込められた。

「最近、かなり操れるようになったから」

ルーカスからの指導を受けて、最近ユーリは随分と強く(・・)なったらしい。

自分の意思ではどうにもならなかった光の魔力を、少しずつ手中に収めつつある。

基礎は学んだ。

あとは。

「実践あるのみ、だろ?」

真剣な眼差しがシオンへと向けられる。

「…強くなりたい。お前だってそうだろ?」

さらに、強くなるためには。

守るべきものを守るためには、その先を目指さなければ。

僅かに目を見張ったシオンへと、今度はユーリは少しだけおどけたように苦笑いを貼り付ける。

「ついでにお前との連携技とか練習できると嬉しいんだけど」

この先、なにがあっても守れるように。

たった一人の、少女の笑顔が脳裏に浮かぶ。

強くなりたい。誰よりも。

それはきっと、全員(・・)の共通意思。

「…手加減しないぞ?」

「上等!」

くすっ、と洩らされた親友(・・)の意味深な笑いに、ユーリは拳を握り締めていた。

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