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小話 ~アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク~

ノアの奏でる、美しいピアノ音が室内を満たしている。

その実力を認められ、今日、ノアは、プロの楽団が開催するコンサートで一曲だけピアノを披露することになっていた。

是非見に来て欲しいと言われ、アリアはシオンと共に前室とも言える部屋でウォーミングアップをしているノアへと、花束を手に挨拶に訪れていた。

「…この曲……」

「あぁ、知ってる?」

音を奏でる指の動きは止めぬまま、ノアの視線がチラリとアリアへ投げられる。

"あちらの世界"であれば、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう有名曲。確か曲名は…。

「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」

好きな楽曲の中の一つだと言って、ノアは意味深な瞳をアリアへ向ける。

「今度一緒に奏でてみない?」

鍵盤の上を滑るノアの指先はとても綺麗で、その動きだけでも思わず魅惚(みと)れてしまうほど。

「…連弾てこと?私に弾けるかしら?」

コトリと首を傾けて、アリアは瞳を瞬かせる。

二台のピアノを同時に奏でるのではなく、一台を二人で弾く"連弾"。

経験(・・)がないわけではないけれど、その楽曲は今のアリアにはとても難しすぎる。

「…そーいう意味じゃない」

くすり、と溢された口元だけの微笑は、なぜか仄かな色香を纏わせている。

「え?」

「アンタの啼く声が聴いてみたい」

誘いかけるような音色とその瞳は、一体なにを意味するのか。

「……え……?」


「夜にお前を(・・・)奏でていいのはオレだけだ」


「え…っ、シオン…ッ?」

グイッとアリアを手元へと引き寄せて、囁きかけるように告げられたシオンの低い吐息にアリアは仄かに頬を染める。


「"天才ピアニスト"が調律(・・)してあげる」

「間に合っている」

意味ありげに笑うノアへと、シオンの威嚇にも似た瞳が向けられる。



アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク。

その楽曲のその意味は。


ーー夜の、小さな、音楽。


それを、二人で一緒に奏でましょう?

クライネ=小さい

ナハト=(ナイト)

ムジーク=音楽(ミュージック)


R18版は夜更新予定です。

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