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小話 ~波音(ハノン)~

タン…ッ、タタン…ッ。

と、指先でリズムを刻む。

ここ最近、指先で机の上を叩くのが癖になってきている。

「…なにしてるんだ?」

今日も頭の中で流れる譜面に合わせて無意識に指を動かしていたアリアへと、セオドアの不思議そうな視線が向けられる。

今は、授業と授業の間の休み時間だ。

「この前、ピアノに触れる機会があって」

机の上で指を弾ませながら、アリアは先日のことを思い出して少しだけむぅ、と口を尖らせる。

プロ相手に比べられても下手なことなどわかっているが、「下手くそ」と思い切り笑われたことはさすがに少し悔しく思う。

見返してやりたい、などと思っても、あの超毒舌キャラ相手ではどうにもならないことなどわかってはいるのだけれど、それでもついつい対抗してしまう。

「ピアノ?」

楽器そのものは知っているけれど、観たり聴いたりする以上のことはまずないアリアのその発言に、セオドアは意外そうに目を丸くする。

「ちょっと弾いてみようかな、って」

だから、イメージトレーニング。と苦笑して、アリアはピアノを弾く真似をしてみせる。

家では紙に描いた鍵盤の上で指を動かしてみたりしているものの、本物のピアノに触れているわけではない。かといって、さすがにその為だけにピアノを購入することも憚れるから、できることと言えばイメージトレーニングくらいのものだった。

「相変わらず面白いものに興味持つんだな」

普通の令嬢であれば、まず自分自身が弾く(・・・・・・・)という選択肢を思い描かないであろうアリアの行動に、セオドアは優しく目を細める。

「俺もやってみようかな」

冗談めいた口調でそう言って、セオドアも宙で鍵盤を叩く真似をしてみせる。

「似合いそうだけど」

穏やかな雰囲気を持つ優等生キャラのセオドアであればピアノを弾く姿は様になるだろうと、思わずピアノに向かう幼馴染みの姿を妄想してしまい、アリアはくすくすと微笑みを洩らす。

「そうか?」

「えぇ。すごく素敵だと思う」

タタタン、タン…ッ!と指を弾いて、アリアは首を傾げたセオドアへと花のような笑顔を向けていた。

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