最終話
そこは暴力が支配する、荒廃した住宅街……
その住宅街のある豪邸の前で、三人の中年女性が井戸端会議をしていた。
「ねぇ……皆様……」
三人の中でも恰幅の良い中年女性が口を開く。
「何々?」
「どうされたの?」
興味津々に聞き耳を立てる残りの背高の中年女性と小柄な中年女性。
「あそこの家の御主人、最近とても大きなお家を建てられたでしょ?」
「えぇ、私びっくりしましたわ!」
「何処にそんなお金あったのかしら!?」
恰幅の良い中年女性の言葉に、わざとらしく反応する背高の中年女性と小柄な中年女性。
「奥さまは、何かご存知ですの?」
「奥さまは、何かご存知ですの?」
繊細さをとうの昔に置き去りにした背高の中年女性と、小柄な中年女性は恰幅の良い中年女性にぐいぐいと訳を聞いてくる。
「その事なんだけどね……何でも……」
「ふんふん」
「ふんふん」
「正拳突きを三万回こなしてから外に出ようとしたら……」
「はいはい」
「はいはい」
「玄関が宝の洞窟と繋がっていたんですって!!」
「まあぁ!」
「まあぁ!」
恰幅の良い中年女性の台詞に、口元に手を当て大袈裟に仰け反る背高の中年女性と小柄な中年女性。
「世の中、不思議な事も起こるものねえぇ!」
「世の中、不思議な事も起こるものねえぇ!」
そして、心にも無いこと口にする背高の中年女性と小柄な中年女性。
最後に中年女性三人組は、目の前の豪邸の方を一斉に振り向き、口を揃えてこう言った。
「すごい!!」
「すごい!!」
「すごい!!」
……おしまい。