第二話
そこは暴力が支配する、荒廃した住宅街……
その住宅街のあるアパートの前で、三人の中年女性が井戸端会議をしていた。
「ねぇ……聞きました?」
三人の中でも恰幅の良い中年女性が口を開く。
「何をですか?」
「何々?」
興味津々に聞き耳を立てる残りの背高の中年女性と小柄な中年女性。
「あそこの家の御主人、最近亡くなられたんですって!」
「まあ!」
「まぁ!」
恰幅の良い中年女性の言葉に、わざとらしく反応する背高の中年女性と小柄な中年女性。
「原因は何ですの?」
「原因は何ですの?」
繊細さをとうの昔に置き去りにした背高の中年女性と、小柄な中年女性は恰幅の良い中年女性にぐいぐいと訳を聞いてくる。
「何でもね、パスワードの入力を」
「ふんふん」
「ふんふん」
「間違えたのが原因みたい!」
「まあぁ!」
「まあぁ!」
恰幅の良い中年女性の台詞に、口元に手を当て大袈裟に仰け反る背高の中年女性と小柄な中年女性。
「心中、お察しするわあぁ!」
「心中、お察しするわあぁ!」
そして、心にも無いこと口にする背高の中年女性と小柄な中年女性。
中年女性三人組は、目の前のアパートの方を一斉に振り向き、口を揃えてこう言った。
「パスワードはちゃんとメモって置かないと駄目ねえぇ!!」
「パスワードはちゃんとメモって置かないと駄目ねえぇ!!」
「パスワードはちゃんとメモって置かないと駄目ねえぇ!!」