表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/25

5 さて、どうしたものか?

「困っちゃって……」

 RBSテレビ旧館六階の広くはない通路で桜が寿実とすれ違う。丁度、昼食時だったこともあり、社内食堂へ向かう。桜は次回ドラマの打ち合わせ、寿実は『出会わなくても良いですか?』スタッフとの打ち合わせ後、移動前の空き時間だ。

 注文を決め、席に座り、一口水を飲んでから、

「行き詰ってるの……」

 と寿実が問う。

「まあ、それもあるけど……」

 自分から口を滑らせたわけだが、適当な接ぎ穂が見つからず、桜が言葉を濁す。その態度に、寿実がいぶかしむ。

「今日は時間がないけど、言うだけ言ってみたら、すっきりするかもしれないから……」

「ありがとう」

 桜は答え、悩んだ末、

「実は……」

 と自分が西条美貴に告白されたことを白状する。寿実は一通り、桜の話を聞いた後で、

「いいわね。モテて……」

 と、そっけなく感想を述べる。

「わたしなんか、恋の『こ』の字もないからさ」

「でもね、そういう気持ちの相手じゃないから困るのよ」

「商社マンなら、お金に困ることないじゃない。結婚したら、好きな作品が選べるよ」

「そうか、その視点はなかったな」

「桜は男に甘えない人だからね」

「いや、不器用なだけ。できるようならやってるよ」

「じゃ、手始めにひらひらの服でも着てみたら……」

「そういう問題じゃない気がするけど……」

「男に愛される女の形から入るのよ」

「そりゃ、愛されれば気分はハイになるけどさ」

 僅かな間の後、寿実が問う。

「桜は、これまで何回告られた」

「そんなにはないよ。小、中、高、大、で一回ずつ……」

「ふうん。で、付き合ったのかな」

「小学校の頃は、その気はあったけど、何となく無視して……」

「そう」

「中学校のときも同じ……」

「男かよ」

「高校のときは相手が強引だったから成り行きで付き合って……」

「いろいろと経験したとか……」

「ご想像に任せます」

「気になるな」

「もう昔のことだから時効だけど、お父さん以外で初めて見た」

「うそっ」

「単に見ただけだけどね」

「いったい、どういう展開……」

「それこそ、ご想像に任せます」

 桜が言うと、寿実が再度、目を見開く。

「桜って、顔に似合わず、することはしてんのね」

「いったい、寿実にはわたしがどう見えてんのさ」

 桜がそう文句を述べたときのことだ。

「久し振り、藤本さん……」

 牧村組、撮影助手の山浦幸助に声をかけられる。

「寿実ちゃんと内緒話ですか」

「ああ、山浦さん」

 そっけなく、桜が返事をすると、

「藤本さんには、そろそろ、山ちゃんとか、幸ちゃんとか、友人っぽく、呼んで欲しいな」

 と、お道化て幸助が桜に願う。

「いや、でも、それは……」

 幸助の言葉に桜が困っていると、

「そういえば、朝倉さんがアンタのこと探していたわよ」

 寿実がすっと助け舟を出す。

 朝倉は牧村組のメインカメラマンで幸助が尊敬する師匠でもある。

「えっ、本当……。どこで……」

「わたしが見かけたのはGスタジオの前だったけど……」

「あんなところに用があったのかな」

 寿実の言葉に幸助が左右に首を捻る。

「そこまでは知らないけど……」

「わかった。とにかく行ってみる」

 言うが早いか、幸助が桜と寿実の許を去る。その後ろ姿を見送った後、

「いいの。あとで困らない」

 桜が寿実に問いかける。

「いいのよ。山浦くん、佳苗さんにモーションをかけ始めたらと思ったら、今度は桜にでしょ」

「単なる社交辞令かもしれないし……」

「それに朝倉さんがアイツを探していたのは事実だし……。さっきの打ち合わせの前だけど……」

 寿実の言葉はどこか遠い。桜は、そこにある種の雰囲気を感じるが、口にはしない。

 暫く経ってから、

「まあ、考えても損はしないから……」

 明るく桜を見、寿実が言葉を紡ぐ。桜と美貴の件だろう。それから急に思いついたように、

「そうだ。いっそのこと、噂を流してあげようか。桜が昔の知り合いから告られたって……」

「えっ」

「だってさ、もし牧村さんが少しでも桜に気があるなら、そんな噂を聞いて急接近して来るかもしれないじゃない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ