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006 お市略奪


治癒魔法をこんな風に使う主人公はいなかったんじゃないでしょうか?




お市を抱きかかえながら俺はひたすらに走った。

誘拐したのがポルトガルの信心深いカピタンだと信長が誤認してくれれば、信長は南蛮人を信用しないだろう。

何しろ最愛の妹が南蛮商人に奴隷として奪われたんだからな。

そして俺はこれからの立ち回り先をどうしようかとも思案する。


――北へ逃げるのは悪手だろうな


王都クスコの警視総監が言っていたっけ……


「勇者殿、逃亡する者はみな北へ逃げる傾向があります。

 どういう訳かは分かりませんが、これは戦における敗残の兵にも当てはまるのです」


そうなると北はまずい。かと言ってこのまま東へ行って、今川の関与を疑われるのも良くない。下手をすると信長が駿河まで軍を進める恐れがある。


…となると南だな。

伊勢方面から伊賀へ抜けたと偽装するか――そういう目算の結果、伊勢長島へと足を向ける。

途中の草叢で目立つ黒騎士を解除して人目を避けつつ、打ち捨てられた山寺を見つけてその本堂にお市を横たえた。

今までの間、気配探知に俺達を追ってくる者がいないことを確かめてほっと一息をつく。

お市は安定した呼吸で胸を上下させていた。


「これなら大丈夫だな。

 あとは朝まで治癒魔法をかけ続けていれば問題ないだろう」


そして看病をしようと近付いてみたら、お市の衣服がかなりひどいことになっているのに気付いた。

「しょうがない。脱がせるか」とお市の着物を剥いでいく。

着物の合わせ目を広げてみると雪よりも白い肌がうすっらと紅を帯びて息づいているのが目に入った。


「……こりゃ、目の毒だな」


目を瞑りながらお市の帯を解き、ゆっくりと脱がしていくと彼女の身体から汗のにおいがプーンと漂ってくる。

男性ホルモンの影響下にあるとこれが良い匂いに感じられるらしい。


ここではたと気づく。

お市に着替えさせるものを俺は持っていない。


「う~ん……そうだ、あれがあったじゃないか!!」


アイテムボックスをがさごそと引っ繰り返してあれを引っ張り出す。

ラビア王国が誇る女騎士と姫騎士の精鋭集団、白銀の薔薇騎士団の標準装備。

こいつを当座の着物替わりにすればいいじゃないか。

そういう訳で俺はお市に体に鎧兜を装着させていく。

気を失ってぐったりとしたお市はおとなしくて俺のなすがままだ。


取り敢えず俺はお市に装備を付け終えた。

少し離れてみるとどこからどうみてもファンタジーに出てくる美貌の姫騎士なのだが何かが足りない。


「うーん……」


唸りながら俺は考える。

どこかしっくりと来ないのだ。

穴が開くほどお市を見つめ続けてはたと気が付いた。


「髪が金髪じゃない……」


そうと分かればあとは簡単。

お市の毛根と髪に治癒魔法をかけて髪の色素を分解させプラチナブロンドに作り替えてみた。

そうして全体をパッと見るとファンタジーの女騎士っぽくなったが今一つでもある。


……よし、顔の骨格も弄るか。


頭蓋骨の作りは悪くないから、あとは、額の骨格を発達させて、鼻梁が高くなるように軟骨の遺伝形質を弄る。

そして骨全体の強度が上がるようにカルシウム密度を増加せて……っと。

よしよし、これでそれっぽくなったな。それから瞳の色も弄っておこうか。

瞳の色は青にしようか緑にしようか……よし、碧でいこう。


こうして俺はお市が寝ている間にどんどん色々と治癒魔法をかけて行った。


「よし、これでどこからどう見ても立派にファンタジーの女騎士だな」


お市の人体改造の成果に満足した俺は、この世のものとは思えない凄まじい美貌と化したお市の耳に最後の施術を施していく。

そして出来上がったお市の体に俺は満足の笑みを漏らした。


「やっぱ、姫騎士と言ったらエルフだよな。耳はエルフ耳じゃないと」

夜明けまでかかった施術の成果に満足そうな笑みを浮かべているとお市が「ううん」と目を覚ました。




主人公は計算高いんです。


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