プロローグ 異世界にてゴブリンにどつかれる
ここは異世界。
スキルも魔法も無い。
レベルも1。
低いステータス。
会話の途中、男は何かに頭を殴られた。
膝から崩れ、その場に倒れる。
理不尽な暴力の前に、雑魚は為す術もなくゲームオーバー。
……ではなく。
『景護、俺が力を貸している状態だ。その皮膚は、武器を通さぬ鋼鉄並みの強靭な体だ。ダメージも無いのに何で倒れてる?』
油断を誘って不意を衝くため。
『あら、運ばれてるわよ?いいの?』
様子を見よう。
目的地は、ゴブリンが群がっている村のはず。
『分かった。お前に任せる』
『力が必要ならいつでも言ってね』
ありがたい。
そう、異世界には彼らが付いて来てくれた……もとい、憑いて来てくれた。
男女の霊二人。
しばらくして、村に放り込まれた後、助けを求める声がした。
「誰か、誰か助けて。こんなわけの分からないところで死にたくないよぉ!怖い、……誰か、助けてよぉ!」
『景護、戦うのか?』
ああ。
力を、貸して欲しい。
『当たり前だ。力を抜け、俺に身を委ねろ』
剣を借り、立ち上がった男を、悪党は笑う。
「グフ、グハハハハ!!レベル1!レベル1で何しに……」
『行け!』
抜刀一閃。
ゴブリンは、切断され真っ二つ……ではなく跡形も無く弾け、消し飛ぶ。
「……ハハ、レベル1で何しに……何しに……」
何しに?
レベル1で何ができる?
この世界のスキルが無くとも、魔法が無くとも。
ゴブリンを全滅させると、指揮を執っていた悪党は逃げる。
『私の出番かしら?』
どうにかできそう?
『そうね、弓が欲しいわ。どんなのでもいいから』
彼女の力の一つは雷。
用意してもらった弓。
雷撃の矢で、悪を貫く。
何ができるか?と問われれば、こう返す。
この世界のスキルが無くとも、魔法が無くとも。
レベルが1でも。
二人がいれば、敵を屠り前に進める。
異世界にて、己の道を歩く。
そんな男と霊二人の物語。