さあ、世界に踏み出す時が来た
チュートリアル編、これにて終了!
綺麗な街並みを見ていると、遠くから白い壁のようなものが迫って来るのが見えた。……いや、正確には遠くの風景からポリゴンが崩れて白くなっているみたいだ。と思ったらもう近くまで壁が来て……、そして目の前が白くなった。
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気付くと、最初にアバターを作ったあの電子の世界が見えた。
「お疲れ様でしたー! いやー、最初からすさまじい冒険だったねー!」
僕の前にヘイムダルさんが現れた。
「さて、戦闘とか、ミッションとかのチュートリアルはこんな感じだけど、大体分かったかな?」
「あ、はい」
「よろしい。さて、ここでやる最後の説明なんだけど……」
そう前置きして、
「メニューを開けると自分のステータスも表示されてるの、分かります?」
そういえば、装備するときとかにメニューを見たけど、今のHPの量とか、何かのレベルとか、そういうのが出てた気がする。
「それなんですけどね、プレイヤーの皆さんが持つレベルは二つ。『冒険者レベル』と『ジョブレベル』があります。両方とも今回みたいなミッションをクリアすると経験値が入って、一定以上溜まるとレベルアップする、という訳ですね」
それは分かる、けど……。
「二つもレベルがあるんですか?」
「そ。『冒険者レベル』も『ジョブレベル』もレベルが上がると、それぞれでポイントを貰えて『スキル』っていう特殊能力を覚えられるの。で、『冒険者レベル』が上がることで覚える『汎用スキル』はどのジョブでも同じように使えるんだけど……」
「『ジョブレベル』の方は?」
「『固有スキル』っていって、他のジョブに変わると使えなくなるんだな」
「そうなんですか?」
「正確には使えるものと使えないものがある、かな。もっと言うと、使えるものは威力が落ちたり、特殊効果の発生率が落ちたりするのよ」
「へぇー……」
「まぁ、それはもっと後の話。ジョブを変えるときに詳しく聞くといいよ」
そうヘイムダルさんは締めくくった。
「あの、ところで……」
「ん?」
「あのパーティーって、これからどうなるんですか?」
「あ、気になる? じゃ、そっちも説明しちゃおうか」
僕は頷く。
「このゲームのゲームモードは二つ。『ソロ・ストーリー』と『グローバル・ストーリーズ』。まあ平たく言えばシングルプレイとマルチプレイね。チュートリアルで一緒に戦ったパーティーとその後どうなるかについては、『ソロ・ストーリー』の方をやってちょうだい」
「分かりました」
「で、『グローバル・ストーリーズ』の方をやるにあたって、最初に所属する国家を決めてほしいんだけど……」
「そんなのもあるんですか?」
「そうなの。どの国家も特色があって面白いわよ? 国家同士での対抗戦みたいなのもあるし……。今一覧を出すから、よく考えてみてね」
そう言われた後、僕の前に地図のようなものが出てきた。……これ、よく見たら現実の世界地図を反転したものじゃ……。もっと見てみると、世界は六つの国家に分かれているようだ。どんなのがあるかというと……。
『スチムス合衆国』
地図的には北アメリカ大陸の方。鉄と蒸気の世界で、科学技術が一番発達しているらしい。それらを活かした武器の研究も盛んで、変わった武器を毎日のように生み出してるとか。
『エウロパ魔法諸国』
地図的にはヨーロッパの辺り。世界で一番魔法が盛んな国だそうで、普段の生活にも魔法を取り入れているとか。ザ・ファンタジーが好きなら是非こちら! ……とのこと。
『アフサバ連合』
地図的にはアフリカの辺り。広大な自然と生き物がたくさん息づく。世界観的にはまんまモンスターを狩るゲームのアレ。採取できるアイテムの数が一番多いそうな。
『エイジア共和国』
地図的には大陸側でアジアと呼ばれる国々の辺り。いわゆるアジアン・テイストの濃いところで、独特の文化を作っている。怪しいオカルトチックな文化も満載らしい。
『ルシアン連邦』
地図的にはロシアの辺り。ひたすら寒いところだが、ここでしか見れない景色だの、珍しい物だの、そんなのが多い。時々『Урааа!!』と叫びながらモンスターに突撃する人がいるらしい……。
『ジパング』
地図的には日本。何でここだけエイジア共和国から独立してるの? 文化的には現代風戦国とか江戸のアレ。右を見ても左を見てもサムライ、ニンジャ。そんなわけで外国の方々に大人気。
何ていうか……、どこも濃そうだなぁ……。個人的には『ジパング』が良さそうだけど……、う~~ん、他も捨てがたい。
「そうそう、どこかの国家に所属してもそこしか行けない訳じゃなくて、ファストトラベル機能を使えば各国の首都にはすぐ行けますよ? そこからは自分で歩かないといけないですけど……。
「あ、そうなんですね。……あの、これ、どこの国家にも所属してないところって、何なんですか?」
「あぁ、そこはいわゆる未開拓地帯です。先住民達が暮らしていると考えてくださいな」
ふぅん、そうだなぁ……、どうしようかなぁ……。じゃあ、折角のRPGだし……。
「エウロパ魔法諸国で」
「お、魔法の国ですか。いいですよねぇ。やっぱりこういうゲームやると、憧れますよね。それじゃ、所属を決定しますが、よろしいですか?」
確認画面が出てくる。僕は『YES』を押す。
「はい、OKです。それじゃあ、チュートリアルはこれでおしまいです。私は一旦お別れですが、困ったことがあったら気楽に頼ってくださいな。私はいつでもブランさんを見守っていますよ」
「ありがとうございました!」
「いえいえ~。これもお役目ですので」
電子の世界がだんだん崩れていく。
「最後に一つ。グローバル・ストーリーズを始めるときは、ブランさんが最初に行くところに『ギルド』っていう、冒険者のための建物があります。まずはそこに行くといいですよ」
「分かりました」
「よろしい。それでは、また。良い冒険者ライフを!」
ヘイムダルさんは崩れゆく電子の世界の向こう側に、消えた。
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僕はゲームのスタートメニューに戻っていた。メニューにはソロ・ストーリーとグローバル・ストーリーズの二つが追加されていた。でも、そろそろいい時間なので、一旦ここでゲームを止めることにした。
明日はどっちをやろうかなぁ……。
次はちょっと現実でのお話を挟みます。ふぅ……。
ブックマークしてくださった方、誠にありがとうございます!
また、当作品を見つけて頂いた方も、ありがとうございました。
基本的に「こんなゲームのこんな要素があったら面白いかなあ」という妄s……じゃなかった、空想で書いてます。だからあっちこっちに色んなゲームの要素を詰めていってるのです。
そんなお話ですが、よろしければこれからもお付き合い頂ければ、と思います。
次回もお楽しみに!