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BRAVE NEW WORLD<素晴らしき新世界>  作者: olupheus
チュートリアル
8/27

着いた先には未知の世界が広がっていた

さあ、チュートリアル編も終盤ですよ!

>街まで残り6,000m


 僕たちは馬車で街を目指す。後ろ……、というか上空にはガルダがいて、この馬車を狙っている。さっきの戦闘でそれなりに翼を傷つけたおかげか、そんなに速度は出ていないけど、じょじょに追いつかれている。


「いいか、当てようとは思うな! さっきの戦闘で矢が危険なものだと向こうも分かっているはずだ、撃たれれば避けるはず! それを繰り返して街まで逃げ込むぞ!」


 僕たちは積み荷の中にあったボウガンと、ボウガン用の弓をありったけ出してガルダを狙う。オウロさんの弓と合わせてどんどん撃つけど、中々当たらない。


「ギィェェ!」


 と、ガルダが突風を起こした。馬車がきしむ。


>馬車の耐久力:90%


 これ以上ガルダを近付かせないよう、更に矢を撃ち込む。


「矢はまだあるか!」

「大丈夫……、だと思うけどあんまり無駄撃ちはしないで!」


 馬車の奥側で矢の受け渡しをしているマロンが叫ぶ。

 と、いきなり馬車が右に傾いた。突然のことに踏ん張れず、体がゴロンと転がる。


「すまない、この先しばらくカーブが続くんだ! 振り落とされないようにしてくれ!」


 御者台のハイドさんが叫ぶ。もうちょっと早く言ってほしかった……!


「ホラ起きろ! またガルダが来るぞ!」


 体を起こす暇も無く、マロンから矢を受け取り、装填。

 何となくで照準を合わせ、撃つ。

 矢はガルダの下側に向かったけど……。

 丁度ガルダが高度を落とした。

 胴体に矢が刺さった。


>街まで残り5,000m


「いいぞ!」


 ガルダの動きが鈍ったところにオウロさんの矢が唸りを上げて突き刺さる。ガルダはたまらず高度を上げ、後退した。


 その時、今度は馬車が左に揺れた。体は倒れたままだったので体勢を崩すことは無かったけど、そのままでも良くないので、体を起こした。


「よし、今のうちにこっちも準備を整えよう。……多分、あいつはまた来る」


 オウロさんの号令で僕たちも一息つく。


「矢はどれくらいある?」

「もう最初の半分を切ってる。このペースだと街に着くまで持つか……」


 ロッソの質問にマロンが答える。まだ街までは4km以上ある。そう考えると確かに微妙だった。


「俺の矢も残り少ないな……。くそ、もう少し準備しとくべきだったか」


 オウロさんも悔しげに呟く。腰に下げた矢の入れ物と思われるものは、ほとんどが空になっていた。


>街まで残り4,000m


「うわぁ、前、前!」


 突然ハイドさんの声がした。馬車の奥にいて、一番御者台に近いベルデが覗く。


「……! ガルダが、前に……!」

「先回りしやがったのか!」


 ゴゥ、と音がする。あの風が来る……!


「左に曲がれ!!」


 オウロさんの声で馬車が左に曲がる。その反動で右に傾く。咄嗟のことでまた踏ん張りがきかない……!


「あっ!」

「しまった!!」


 ロッソとシンザの声。何とかそっちを見ると、二人のボウガンが衝撃を手を離れ、馬車の外に飛び出してしまった。


 続いて馬車のきしむ音。


>馬車の耐久力:80%


 馬車の耐久力はまだ余裕があるけど、ガルダに攻撃できる火力が減ってしまった。


「大丈夫か!」

「無事です! けど、ボウガンが……!」

「今は気にするな! だが、そうか、まずいな……」


 外を見ると、ガルダは馬車と並んで飛んでいる。と、ガルダがこっちに近付く。

 ガン!! と耳をつんざく音。馬車の中の人と、物が揺さぶられる。


>馬車の耐久力:60%


「くそ、体当たりか……!」

「まずいよ! 今のでボウガンの矢が半分くらい馬車の外に……!」


 悪いことは続く。このままじゃみんなやられる……!


「……あ、街だ! 見えてきたぞ!」


>街まで残り3,000m


「……いいか、街にたどり着きさえすれば、街にいる連中が何とかしてくれる。俺は馬車の前に行って、緊急用の信号弾を用意する。お前達に、ガルダを任せるぞ」


 オウロさんは言って、馬車の奥に向かう。残った僕たちは顔を見合わせた。


「……やろう、絶対生き残るんだ!」


 僕は、そう言った。みんなの瞳に、やる気がみなぎるのが見えた。


「ボウガンはあと二つ。これはブランとアスールが持ってくれ。どうも俺に射撃武器は合わないらしい」


 ロッソが言う。


「シンザ、大楯、あるでしょ? それで馬車の中に攻撃が来るのを少しでも防ごう」

「分かった。ロッソ。すまんがまた支えてくれるか?」

「任せてくれ!」


 マロンがシンザに指示を出す。


「ベルデは奥に。回復魔法は大丈夫?」

「うん、ケガしたら、言って……!」


 杖をきゅっと構えて、ベルデが応じる。


 馬車の出口近くで、シンザが大楯を構える。シンザの後ろにロッソが、アスールと僕はシンザの左右に、大楯に身を隠してボウガンを構える。マロンは矢の受け渡し。ベルデは馬車の一番奥で待機する。


「ギィヤァァァァ!!」

「来たぞ、右だ!」


 ガルダの鳴き声が右からした。アスールと僕でボウガンを構える。


「まだだ……、ギリギリまで引き付けよう……」


 ロッソが呟く。


「矢ってあと何本あったっけ……」

「あと二十本くらい……」


 僕の呟きに、マロンが答えた。


「来るぞ……、真っすぐ向かって来る!」

「今だ、やれ!」


 シンザとロッソの叫び。それに合わせて矢を放つ。

 ガルダの鼻先をかすめる。

 ガルダは軌道を変えた。

 馬車のすぐ後ろを通り過ぎる。

 突風が吹き荒れる。

 すぐに大楯の後ろに隠れる。

 もたつきそうになりながら、次の矢をつがえる。


「ガルダは!?」

「左で旋回してる!」


 大楯の影から様子を伺う。

 ガルダは大きな翼を広げ、方向転換している。


「こっちを向いたところを狙うぞ!」


 ボウガンの狙いを付ける。

 まだ……、まだ……、……今!


 矢が唸りをあげて飛ぶ。

 だが、ガルダの下を飛んでいってしまった。

 アスールの矢も当たらない。

 ガルダが突っ込んでくる!


 ガダン! という衝撃。


>注意:馬車の耐久力が半減

>馬車の耐久力:40%


「しっかり狙えよ!」


 また矢をつがえる。


「街はまだ!?」

「じょじょに近付いてる!」


 ガルダはまた旋回してくる。

 矢を放つ。

 今度はガルダをかすめた。

 ガルダは大きく飛び上がる。


>街まで残り2,000m


「ここからなら街からも見えるだろ! 信号弾を上げる!」


 オウロさんが弓に何かを取り付け、空に打ち上げた。

 赤い閃光と音が響く。


「これで街の方も気付くはずだ、もう少しだ!」


 矢をつがえて、また準備する。


「おいおい、ウソだろ……」


 シンザの呟き。


「どうしたの!?」

「あいつ、真後ろから突っ込む気だぞ!」


 見ると、ガルダは馬車の真後ろから、同じ進行方向で飛んでいる。

 翼を後ろに向けて、速度を上げている。


「くそ、撃て! 近づけるな!」


 矢を放つ。

 進行方向が同じなので狙いが付けやすい。

 そのおかげか矢がガルダに刺さったけど……、


「逃げないのか!?」


 ガルダは今までみたいに避けることをしなかった。


「撃ち続けろ!」


 じっくり狙いを付けることはせず、とにかく撃ち続ける。


「もう矢が六本しかないよ!」


 マロンから焦ったような叫びがする。


「ガルダが来るぞ!」


 シンザも焦っている。

 何か、あいつの気をそらす方法は……!?


 必死に考える。

 今ガルダは確実に距離を詰めてる。

 矢はあと六本。

 今アスールが撃って五本になった。

 ガルダは馬車を追っているから、見た目そこまで速くない。

 アスールが更に撃つ。あと四本。

 街まではあと1kmくらい。

 自分のHPは?

 100%に戻っている。

 矢はじき無くなる。

 そうなると武器はもう……。

 ……武器?

 ふと、自分の右手を見る。

 それなら、気をそらせる?

 馬車とガルダの速度の差はそんなに無い。

 なら……、飛びつく(’’’’)こともできる?


「……くん、ブランくん、どうしたの!?」


 急に現実に戻された感覚がする。

 マロンの声でハッ、となった。


「もうガルダがすぐそこに!」


 ロッソの叫びで外を見ると、本当にすぐそこにいた。

 時間が無い。

 なら……、できる!


 僕は立ち上がり、長剣を抜く。

 青いエフェクトが散る。


「ブランくん、何を……!」

「みんな、馬車を頼んだよ!」


 僕は大楯を乗り越えて、跳ぶ。

 みんなのあっ、という声が後ろから聞こえる。

 抜いた武器から出る青いエフェクトを散らしながら。

 目の前にいるガルダの、頭に。

 長剣を。

 突き立てた。



「ギィァァァァァァァァァ!!」


 今まで聞いた中で一番の叫びが僕を貫く。

 意識が飛びそうになるけど、ここで手を離す訳にはいかない。

 必死にしがみつく。


 僕の全体重を剣に乗せ続けたおかげか、ガルダの軌道が変わる。

 ガルダが頭を振る。

 あっけなく、剣から手が離れた。

 ガルダも体勢を崩す。

 僕たちは、地面に投げ出された。

 HPのバリンという音を聞きながら。

 馬車が街に向かうのを見た。

 直後、目の前が暗くなった。



◇◆◇◆◇-------------◇◆◇◆◇


 誰かが僕を揺すっている。

 誰かが僕を呼んでいる。

 視界は暗いまま。

 声もエコーがかかってぼんやりする。

 そこにいるのは誰?

 と、ふいに暗い世界に光が差す。

 光を求めて、僕は目を開けた。


「……くん! ブランくん、しっかりして!」


 目に映ったのは、ロッソ、アスール、シンザ、ベルデと、マロン……。一緒に試験を受けていた、パーティーメンバーだ。


「目を覚ましたぞ!」

「試験官を呼んできて!」

「オウロさん、目覚ましましたよ!」


 みんなが周りで騒ぎ立てる。


「ブランくん、大丈夫!? 痛いところ、ない!?」


 マロンがそう言ってくる。


「あぁ、うん、……大丈夫だよ」

「そう、……良かった」


 涙声になっていた。

 と、オウロさんが近付いてきた。


「ブラン、大丈夫か?」

「あ、はい、何とか……」

「そうか……」


 オウロさんは深いため息をついた。


「あの、ここは……?」

「ここは目的地の街だ。馬車は無事に到着することができた。ガルダは街に駐留する連中が倒したよ」

「そう……、なんですか?」

「あぁ、で、お前が飛び降りた辺りで、意識を失ってたお前を見つけ出して、街まで運んだんだ」

「そう……、ですか」


 その言葉を聞いて、体のどこかにあった緊張がほぐれるのを感じた。


>Main Objective completed

>Mission accomplished

>進行中のSub Objectiveはキャンセルされました


◇◆◇◆◇-------------◇◆◇◆◇


 その後。僕はオウロさんとか、パーティーメンバーにしこたま叱られました。

 命を粗末にするな、とか、すごく心配した、とか。

 実際その通りだったので、あんまり反論できない……。


「……それで、試験はどうだったんですか?」


 弱り切った僕は、何とか声を絞り出してオウロさんに聞く。


「あ? ああ、今回ガルダが出たのは完全にこちらの落ち度だ、すまなかった。あれは新人冒険者が相手するようなやつじゃないからな」

「だがそんな中でも誰一人欠けることなく馬車の護衛をやり遂げた。文句なしの合格だ。ギルドも同じ見解を示してる」


 合格。僕の後ろでみんな喜び合っている。


「良くやった。この後ギルドに来てくれ。……と、その前に」


 オウロさんに続いて建物から出る(僕は診療所のような所に担ぎ込まれていたらしい)。そこには……。


 今いる所が街で一番高いところなんだろう。見渡す景色が下に、下に続いていた。たくさんの建物がずらりと並び、陽の光を浴びて輝いている。そして人。人が何人も街を歩いている。武器を持っている人もいればそうでない人もいる。喧騒がここまで聞こえてくる。


 遠くに目をやれば、街を取り囲むように壁がぐるりと建てられている。もっと向こうはどこまでも続く草原。空は青く澄み渡り、山がぼんやりとシルエットを浮かべている。手前側には海か、湖のようなものも見え、水がきらきらと光をたたえている。


 それらが僕に押し寄せる。広い世界が、そこにあった。


「ようこそ。冒険者の世界に。これから色々なものを見て、聞いて、感じることだろう。それらがお前達の人生を彩ってくれることを、俺は願っている。そして、冒険者の先達としてアドバイスするなら……」


 一呼吸。


「絶対に生き残れ。生きてさえいればまた来られるんだ」


 ――これが僕の、『BRAVE NEW WORLD』の始まりだった。

┏──   Progress    ──┓

《Mission Objective》

〇 街まで馬車を護衛する


《Main Objective》

〇 装備を整える

〇 パーティーを組む

〇 簡易広場まで進む

〇 馬車の周囲を見張る

〇 敵襲を凌ぐ

〇 街へ向かう

〇 街まで逃げ延びる


《Sub Objective》

- 怪鳥ガルダを討伐する


┗────      ────┛


何、馬車の速度が速すぎるって? こ、これ、ゲームですから……(震え声)

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