新しいゲームの初戦闘って、何でかドキドキする
さあ、戦闘です!
最近のRPGもぼーっと突っ立ってるものより、アクション要素のあるものが主流になって来てますね。いいと捉えるか、合わないと捉えるかは、まぁそれぞれ次第ということで……。
馬車の前方で、激しい戦闘が繰り広げられている。僕の前にも敵が一人。後ろには治癒術士のベルデと、念のために残った盾騎士のシンザ、そして馬車がいる。護衛対象を守り抜くには、ここで何とか敵を倒すしかない。
覚悟は決まった。
ゆっくりと長剣を構える。
野盗はにやにやと、こっちの様子を伺っている。
僕は真っすぐ飛び出した。
たちまち野盗が目の前に。
そのまま左を通り抜ける、
ついでに長剣を振り抜く。
ヒット。
野盗のHPがぐっと減る。
あと二撃くらい?
僕を追いかけてきた野盗が剣を振る。
上段から真っすぐ。
僕は横に飛んで、何とかかわす。
攻撃は大振りで、見やすかった。
剣を振り下ろして固まっているところに、もう一撃。
今度は縦に振る。
ヒット。
さっきと同じダメージ。
相手の体制が整う前に。
下に振り下ろした長剣を、上に振り上げる。
ヒット。
それで野盗のHPは尽きた。
血は出ず、ポリゴンが弾けた。
>エネミー:野盗は倒れた
他はどうかな?
ロッソはアスールと協力して、今野盗を倒し切ったようだ。
マロンはまだ倒し切れていないようだ。僕が行くとしたら、そっち。ベルデに目配せして、僕は駆け出した。
マロンは踊るように短剣を翻している。
ただ、いかんせん威力が低いのか、押し切ることができていない。
僕はマロンが戦っている野盗の後ろから奇襲をかけた。
長剣を横に一閃。
左から右へ。
ヒット。
元々ダメージを負っていたのと、奇襲によってダメージが増えたおかげで、野盗は一撃で弾けた。
>エネミー:野盗は倒れた
周りを見る。
敵は、いない。
どうやら、初戦闘は大した被害を出さずに終わらせることができたらしい。
マロンが近寄ってくる。
「ありがとう、助かったよ!」
その言葉を聞いてようやく僕は、緊張を吐息に乗せて解くことができた。
>周囲にエネミーの反応無し
>経験値を獲得
◇◆◇◆◇-------------◇◆◇◆◇
それから何度か野盗の襲撃があったけど、僕たちはどうにか切り抜けることができ、予定通り野営ができる簡易広場までたどり着くことができた。
>Main Objective completed
>Checkpoint Reached
「じゃ、野営の準備をしようか」
それぞれがテントを作ったり、ご飯の準備をしたりする。最近の色んなゲームに搭載されている空腹度、眠気といったステータスはこのゲームにもきっちり搭載されており、HPと同じく%で表される。
このゲームでは0%になったら一気にバッドステータスの嵐が襲ってくるのではなく、一定値を切ると軽いバッドステータスから発症し始めるようになっている。そこから更に数値が下がるとどんどん重いバッドステータスが……、という感じになるそうだ。
だから適切なタイミングでの食事、休息が必要になる、というのがヘイムダルさんの弁。ちなみに、空腹度については簡易糧食、いわゆるレーションを食べることで、眠気はごく短い仮眠を取ることである程度カバーすることができるとのこと。
そんな説明を聞いているうちに食事ができたので、ハイドさんを交えてみんなでご飯を食べる。あの戦闘が、とかあの連携が、とか話題はそんなのばっかりだったけど、ご飯は大変おいしく頂くことができた。
その後、休息を取ることになったのだが……。
「簡易広場とはいえ、全員で寝たら何かあった時に対応できない。交代で周囲を見張ったほうがいい」
というシンザの言により、見張りの当番を立てることになった。初めは男性陣だけで、という話だったが、マロンとベルデが自分たちもやる、と強硬に主張したため、結局六人を三グループに分けて順番に担当することとなった。
んで、くじ引きの結果……。
一番目:シンザ、ベルデ
二番目:ロッソ、アスール
三番目:マロン、僕
僕は夜明け前頃の見張りを担当することになった。それまでは眠れるので、ハイドさんが貸してくれた寝袋にくるまり、馬車の中で横になった。
◇◆◇◆◇-------------◇◆◇◆◇
>Main Objective Update
>『馬車の周囲を見張る』
仮眠の時間はあっという間に過ぎた(ゲームだから当たり前か)。ロッソに揺られて僕は起きた。一言二言挨拶を交わすと、ロッソは寝袋にくるまり、あっという間に眠りに落ちた。
馬車の外に出る。陽はまだ昇っていないので、真っ暗である。光源はたき火だけ。何となしに空を見ると、たくさんの星々が煌き、一部は河のように連なっている。なんとなしにぼーっと見ていると、煌く星の間を光の帯が通り抜けるのを見つけた。
風は穏やかで、時折草木をさわさわと揺らしている。普段だったら何となく不気味に思うかも知れないけど、きれいな空を見たせいか、僕は安心感を覚えた。
そんな風に立ち尽くしていると。
「ブランくん、いつまでもそんなところで立ってないで、こっち来たら?」
たき火の横に座る、マロンから声を掛けられた。マロンの横に座ると、
「静かだねぇ」
そんな風に言われた。
「そうだね……。風の音しかしない」
そう返すと、
「あの……ね、朝はありがとうね」
いきなりそんなことを言われた。
「朝? 何かあったっけ」
「ほら、野盗に襲われたとき、助けてくれたでしょ? だから……」
「あ、ああ、いや、あれくらいは同じパーティーだし……」
「それでも、だよ」
そして、沈黙が包む。……なんだけど、僕の脳内では。
(あれ? これ、どうなってんの? どゆこと? 何でマロンが話し掛けてくる率が多いの?)
《それはホラ、あれですよ~。NPCとの親密度ってやつ。ブランさんは最初からマロンと親密度が高めになってるんだよ!》
いきなりのヘイムダルさんの声にびっくりしたけど、何とか顔に出さないようにする。
(いきなりびっくりするじゃないですか! ていうか、親密度高めって言われても、学校のことは何にも知らないからそのうちボロが出ちゃいますよ!)
《だ~いじょうぶですよ~。NPCは実際にプレイヤーの周りであったことしか話題にしませんので。ま、頑張って!》
(何を!?)
という疑問に答えてくれる人の声はそれきりありませんでした。ぼーぜんとしていると、
「どしたの? 何かあった?」
というマロンの声。
「い、いや、何でもないよ?」
これでごまかせるんだろか……。
そんなことを話しているうちに、向こう側の空が白んできた。こういう時間は早く進むようになっているらしい。夜明け前の明るくなってきた空に目を細めていると、
ヒュッ
という音と共に衝撃。何が、と考える暇も無く、またヒュッという音がする。それらは僕には当たらず、地面に突き刺さった。よく見ると……。
「矢!?」
そうしている間にも、矢がどんどん降り注いてくる。僕は無理やり叫んだ。
「敵だー!!」
馬車の方からごそごそ音がし始めたけど、準備には時間がかかりそうだ。マロンは既に短剣を抜いている。ここは僕たちで何とかするしかない……!
>Checkpoint Reached
>Main Objective Update
>『敵襲を凌ぐ』
┏── Progress ──┓
《Mission Objective》
・街まで馬車を護衛する
《Main Objective》
〇 装備を整える
〇 パーティーを組む
〇 簡易広場まで進む
・ 馬車の周囲を見張る
・ 敵襲を凌ぐ
《Sub Objective》
┗──── ────┛
ついでに言うと、戦闘とそうでない時間の区切りもシームレスなものが増えましたよね。いちいち画面が切り替わらないでそのまま戦闘! みたいな。
個人的には三國無双6以降の演出が当時素晴らしいと思いました(小並)。