エンドロール 『君の隣で考えた』
ちょっと本編のラストが物足りないかな、と思い、本当に少しですが追加しました。
隣にいながら考えた。
この爛れ落ちた恋心で、僕は君に何をしてやれるだろう。
この恋の欠片は強く輝いているけれど、それもいつまで続くか分からない。
僕の心はまだ壊れたままで、戻る見込みなんてない。
心の残骸に埋もれていたものが今、僕に光を差しているけれど、それはとても、とても脆い光だ。
いつかこの光は潰えて、この恋は二度目の終わりを迎えるだろう。ーーそれはきっと、僕の死を意味する。
だから、僕の運命が完全に停止してしまう前に、いったい君に何をしてやれるだろう、と思う。
僕の未来は無限じゃない。未来はすぐそこに迫り、僕を追い立てている。僕はいつ死んでもおかしくないんだ。
兄様の追っ手が落とし穴分だけとは思えないし、追っ手から逃れて女だらけの騎士団を抱えてどこに行けるかも分からない。
それなのに、愛することすら不十分で、心も壊れかけで。体さえも成長し切れなかった自分に、何ができるだろう。
……繋いだ手を放さない事くらいは、出来るだろうか?
君に笑いかける事くらいは、出来るだろうか?
まるで心が元どおりになったように、振舞えるだろうか?
分からない。…分からない事だらけだ。昔はもう少し分かったような気もするけど、今はおかしくなった目しか持っていないから、しょうがない。
一寸先の未来さえ、僕の目では見通せない。
だから、僕は現在において、行動する。
君の手を握り締め、
君に精いっぱい笑いかけ、
昔の自分の真似をしよう。
未来なんて僕は知らない。
僕に未来は無い。
だから今、僕は君に笑いかける。
上手く笑えたかなんて知らない。
その答えは、君が知っている。
ーー僕の知らない一寸先で、隣の君は笑う。
未来の在る、君が。
まだまだ読んで下さって、ありがとうございました。