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第8話 彼女の選んだ言葉

※本話はリリアン視点です。


報告は、簡潔だった。


 王太子――いや、次代の王ロベルトが、廊下で動けなくなっている。

 声をかけても反応が鈍く、執務に戻れる状態ではない、と。


 リリアンは、書類から目を離さなかった。


「そう」


 それだけ。


 ペンを走らせ、署名を終える。


「医師を。

 それから、今夜の会議は予定通り行うわ」


 側近が一瞬、言葉を探す。


「……陛下のお身体は」


「王は、体調が万全でなくとも“在席”できる」


 冷静な声。


「発言権は必要ないもの」


 それ以上、説明する必要はない。


 側近は深く頭を下げ、部屋を出ていった。


 リリアンは、窓の外に視線を向ける。


 王宮の庭園は、いつも通り美しい。

 世界は何ひとつ変わっていない。


「壊れたのなら」


 独り言のように、しかし確かに告げる。


「使えない部品は、交換すればいいだけ」


 情はない。

 怒りもない。


 あるのは、統治者としての判断。


「あなたは王であればいい。

 それ以上は――もう望まないで」


 ロベルトに届くことはない言葉。


 だが、それでいい。


 リリアンは再び書類に向き直る。


 王宮は、滞りなく回る。

 王が壊れても。





 女王がいる限りー



物語はいよいよ終盤に入ります。

次話では、それぞれが選んだ「未来」を描きます。

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