第2話 ダリア視点
※本話は、
第1話で描かれた出来事を、
別の立場から見つめ直す回になります。
同じ出来事でも、
見る人が違えば、意味は変わる。
そんな視点の違いを感じていただけたら嬉しいです。
王宮の廊下は、いつも静かだ。
磨き上げられた床に、私の足音だけがやけに大きく響く。
――側妃に選ばれた。
その言葉を告げられた日のことを、私はまだ夢の中の出来事のように感じている。
嬉しくなかったと言えば、嘘になる。
ロベルト様に想われているのだと、そう信じたかったから。
けれど。
「正妃はリリアン様だ」
そう淡々と告げられた瞬間、
胸の奥で何かが音を立てて崩れた。
分かっていた。
最初から、分かっていたはずなのに。
私は“選ばれた”のではない。
“必要とされた”だけなのだと。
側妃とは、そういう存在だ。
王家の血を繋ぐための器。
愛情は不要。感情は邪魔。
それでも――。
ロベルト様が私を見る目は、優しかった。
あの夜、確かに彼は私の手を取り、震える声で「すまない」と言った。
その言葉だけで、私は救われた気になってしまった。
(大丈夫……私は、耐えられる)
そう思わなければ、ここに立っていられなかった。
正妃様は、冷静で、美しく、完璧だった。
決して感情を表に出さず、私にも礼儀正しい。
だからこそ、余計に分かってしまう。
この人は、私を見下してはいない。
ただ――“眼中にない”。
王妃の隣に立つのは、王。
側妃は、王家の影。
私は影として生きる。
そう決めたはずなのに。
夜になると、胸が苦しくなる。
もしも。
もしも私が、王家とは無縁の家に生まれていたら。
好きな人と、好きだと言い合える人生があったのだろうか。
そんな考えが浮かぶたび、
私はぎゅっと唇を噛みしめた。
――考えてはいけない。
これは、私が選んだ道なのだから。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
第2話では、
側妃という立場に置かれたダリアの心情を描きました。
彼女はまだ、自分の選択を信じようとしています。
けれど、
それぞれの「立場」と「想い」は、
少しずつ、すれ違い始めていました。
次話では、また別の視点から、
この関係を見つめていきます。




