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Dreamer  作者: midale
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アガルタ

前回までのあらすじ


目標にしていた&Luck(アンドラック)が活動休止を発表し絶望に打ちひしがれた岩瀬 凪(いわせ なぎさ)

もう終わりにしようと思った路上ライブ日に1人の男が凪に向かって質問した。


「お前にとって音楽ってなんだ?」


答えを出せずにいた凪を横目に男は言った。


「お前俺のバンドでボーカルをやってくれないか

俺の船に乗れ

見たことない景色を見してやる」


困惑し答えが出せずにいる凪。すると男は集合場所と日時を伝えその場を立ち去った。


当日バンドのボーカルになる答えを胸に集合場所に来てしまった凪。すると後ろからあの時の男日野(ひの)(あかり)が肩を組むやいなやバンドメンバーを紹介し始めた。


「さぁ来い凪次は俺らがスポットライトを浴びる番だ」


戸惑いつつもこの言葉は凪自身の居場所を示していた。


これは夢を捨てきれない5人の群像劇

2曲目 「アガルタ」


イントロ


「やーやー、諸君遅れてしまってメンゴ」


 (あかり)の一言は場の空気を変える力を持っていた。謎の沈黙が数秒流れ(なぎさ)はこんな適当な人にバンドを誘われより不安が募っていた。


「……おせーよ、俺と遥斗(はると)はもう30分待ってるんだぞ」


「ほんと、時間にルーズだよね燈って予定通りに集まってるの見た事ない」


「ま、まーまー(かける)、遥斗、集まれたんだから穏便に行こうよ最後のメンバーが揃って険悪バンドとか思われたくないよ……」


「いや……今回ばかりは違う!凪を探してた。俺だけのせいではない。凪も共犯だ」


「え!?」


 思いもよらない責任転換。困惑と戸惑いを隠せない凪を横目に燈は続けて言った。


「てなわけで、この子でーす。このバンドのボーカルで俺がずっと探し続けていた人です。バンドの顔となり最高の歌声を持ち今日の遅刻の原因です。煮るなり焼くなりなんなりとどうぞ!」


 凪はよくこんなスラスラと……思いながらも確かにボーカルはグループ、バンドの顔になるなと改めて自覚をし始めていた。

 すると、翔は不思議そうに凪を見つめてポツリと言った。


「……お前が燈を認めさせた人か……」


 えぇ……なんか睨まれてるぅ……


 凪はなんて返せばいいのか分からなくなっていると突然遥斗が顔の前に近づけてきた。


「それ、染めてるのめっちゃ綺麗だね、維持大変でしょ」

「あ、うん、そうなんだ……ありがとう」

 見た目のインパクトで染めた髪の毛を初めて褒められ内心気持ちが上がっていた。すると今日初めて一言目を発した途端2人の質問攻めが始まった。


「どこ出身なの?」

「ギター弾くって聞いてんだけど何使ってんだ、Fenderか?Gibson?はたまた国産の珍しいメーカーか?」

「その服無茶苦茶シンプル……でも……うん、いいね。ブランドどこの?」

「そもそもテレキャス、ストラト、レスポールどれなんだ?まさか……ジャズマス……」

「翔そんなことよりこのシンプルイズベストの服どこの聞いてるから邪魔しないで!」

「俺が先に話かけてんだ。邪魔してんのはそっちだろ?」


 凪は目の前でいきなり始まった質問攻めそしてその延長線上の言い争い見てより不安は募った。


「もー、みっともないよ20半ばになって公の場で言い争いなんて」

 

「「……確かに……」」

 

 大和(やまと)が一言いうと言い争いはピタッと無くなった。


Aメロ


後ろでスマホをいじっていた燈が口を開いた。

「……なー、そろそろ行かねー……俺疲れてきちったよー」

「どこに行くんだ?」

「もちろん……ホームに……予約とったでー」

「じゃ、行きますか」


 そういうと4人はいつもの事のようにその場を後にし始め凪は後をついて行くことしか出来なかった。


「……あいつ、怒るとちょっと怖いんだ」


 隣を歩いていた翔が凪に対し呟いた。


「え、あいつって……」

「あー、大和だ、大和。緑頭の男いるだろ?アイツ」

「あ、あー、さっきのね……怖いってそんな?」

「大和は怒ると……うん……」


 翔はなぜだか言葉を詰まらせるように言った。するとすぐ横から遥斗が口を開いた


「大和はねー怒ると癇癪起こすのよ。ちょっと面白いよねー毎回止めるの大変なんだよ?」

「あ、あーそうなんだ……へぇー……」


 言えねぇ……それってこのメンバーのせいじゃね?なんて……


 凪は自分の言葉を押し殺すように会話を途切れさせていた。同時にまともな人はもしかしたらいないんじゃないかとも考えた


「さぁー、着いたここじゃ俺らのホーム」


 そこには24時間営業のカラオケルーム「PLAYERS」だった凪は行った事も聞いたことも無い珍しい所だなと思っていた。


「さぁさぁ入りましょうや」

「遅刻魔が何率先して案内してんだか」

「罪悪感?後、ここ予約取ったの俺だから?かなー」

「燈、罪悪感とかないでしょ?というか一度も感じない」

「まーまー、予約取ってるし早く入ろうよ」

「よし、じゃー凪先陣を切れ!」

「え、えぇー!?」


 みんなに押されるように店内の一部屋に押し込められるするとそこにはギター、ベース、キーボードやドラムまで揃っていた。凪はここは?と頭にハテナマークが浮かぶほど普通のカラオケルームとは思えないほど異様な光景が広がっていた。


「ここは俺たちのホーム、楽器の置いてあるカラオケルームですよくここ来るんだよねー、てかほぼここしか行ってないかな渋谷来たら。後は楽器店フラフラするくらいかなーって感じなのよ俺ら」


 燈が説明をしているが凪には目の前の光景はこの上ない自分にとっての今までの中で夢のような空間に近い場所だった。


「で……早速だけど聞かせてくれお前の歌声」

「そうそう、それが聞きたくって今日集まってる様なものだしね」

「一応燈が連れて来てくれたんだから信用はしてるんだけどね。でもお互いのレベルを把握してるのはメンバーとしてはやっておきたいんだよ」


 凪は困惑していた聞かされてなかったからだ。いきなり審査のような眼差しを受けどうしようもなく燈の方を見ると「見せつけてやれ」と言わんばかりの目線を向けていた既に後に引けなくなっていた。


 やるしかない……


 と思い凪は&Lack(アンドラック)の「ヒキコモリヒーロー」を入れマイク片手に特定の人に見せる羞恥心や恐怖心も振り切りながら歌った。目の前は「まだお前を認めてない」と言わんばかりの目線が凪に集中していた。


Bメロ


 ジャーン……


 歌い終わってから数秒の沈黙が流れていた「もしかして俺……ダメ……?」と思うほどその数秒間は永遠に感じた。しかし開口一番の一言は思っていたものとは違いすぎる言葉だった。


「お前……歌手とかで事務所とか入ってないのか?」

「え、入ってないけど……」

「燈、こいつ新宿で見つけたんだよな?」

「あー、そうそう凪ゲットだぜって感じで」

「普通にありえねぇ……新宿ってなんか変なフィルターでもかかっているのか」


 翔はこのレベルの人間が脚光を浴びないことがにわかに信じられなかったキレイなハイロングトーン澄んだ透明感のある声。新宿で路上ライブをしていて誰にも見向き去れないということがなぜなのか疑問が積もるばかりだった。


「……てなわけでもういいでしょ?こいつがうちのバンドのボーカルだ意義がある人は?」

「いやーないよどう考えても」

「俺も賛成だ正直このクラスの人が来るとは思わなかった」

「僕も賛成かな」

 

 3人の同意も得られ凪は今日一の緊張から解放された。


サビ


「じゃーあらためて凪、ようこそBackLightへ」

「バンドの名前であるBackLightとは逆光という意味だ。日の目を浴びられなかった者たちが光を浴びる番という意味が込められている」

「かっけぇ……」


  凪がバンド名に惹かれていると燈がバックからノートパソコンを取り出して電源を入れた。

 

「さぁメンバーも揃ったことだし我々BackLightの曲を発表したいと思いまーす」


 燈がそう言いだすとメンバーはやっとかと言わんばかりの顔を浮かべていた今までバンドのボーカルが決まっていなかったため曲を作るに作れなかったからだオリジナルの曲を作ると聞いたのと同時に凪は初めての曲作りに不安よりも嬉しさと楽しみが先行していた。


「曲名はアガルタ。アガルタとは19世紀から20世紀にかけて流行ったオカルト都市伝説による地下理想都市の名だ。この曲はギター中心のロックで自分自身の理想と現実を歌い地下都市ということでアングラな俺たちにピッタリかなって思ったんだ」

「アガルタね、これをそれぞれが編曲してくるって感じ?」

「そゆこと、最終的には俺がみんなの編曲をまとめて完成だ凪はボーカルとして言葉の意味をしっかりと表現できるように考えてくることつまりはニュアンスをレコーディングまでにある程度形づけてきてな」

「わ、分かったやってみる」


 と言ったものの正直分からないでいたニュアンスと言っても今までとは違く既存の曲ではなく新たに作られた曲に対して歌詞が持つ意味とメロディのニュアンスを考える事は比べ物にならないくらい難しいと考えたからだ

 

「んじゃ、レコーディングは半月後とかかな?それ以前大体1週間半には俺に編曲データちょうだい今日はこの辺で俺らこの後打ち合わせなんだよねー」

「あー、確かにもうそんな時間か」


 そう燈と翔が言うと退室の準備を始めた時間として1時間もないだろう凪は1人こんなに短い時間なのにとても長く感じていた


 打ち合わせってなんの事だろう……


「打ち合わせって?」

「ん?……おい燈、凪に言ってないのかよ」

「うん、言ってない。まー俺はサプライズ大好き人間だからね」

「すごい、まじで訳の分からない人にいきなり誘われてバンドメンバーになってるんだね」

「僕……凪心配だよ……簡単に騙されそうで……」

「えぇ……?」


 鈍感な凪でさえ何か隠されているということは何となく察せていた確かに思い返せばいきなりバンドメンバーに誘われトントン拍子でこの場に居る自分は本当にメンバーの事を何も知らないと思った。


「まー、近々分かるよ来てもらうし取りあえず連絡先を交換しよう」

「あー、そういえばそうじゃん俺浅木(あさぎ)遥斗ねよろしくキーボード担当だよー」

「俺は長瀬(ながせ)翔。ギターリストだ」

「僕は飯田(いいだ)大和。大和って呼んでね歳は翔と同い年で28なんだ凪は?」

「俺は岩瀬(いわせ)凪27……」

「え!?俺と一緒じゃんおーなーいーどーしー!仲良くしような古着屋行こうぜ連絡するわ」

「じゃー結局燈が1番年下ってことか」

「そうだな俺25でも、このバンドのリーダーだし1番業界歴長いからねー後敬語はなしにしよう年齢とかで意見とかが左右されるのは良くないあまり壁を作ることはしないようにすることいいな?後凪、来月の25日1日空けとけよ見せたい物があるから」

「う、うん分かった」


 凪は全員と連絡先を交換して店を出るとすぐに解散した。


  この時間は人生で1番充実してたかも


 この日は凪にとって人生の起点になる日だった。


Dreamer挿入歌「アガルタ」youtubeで配信中⤵︎ ︎


https://youtu.be/V_MZIyc46U4?si=oC2G1TkkkjG6Plig

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