第2話 入学式
いよいよ入学式。入学式が終わった後の一大イベントと言えば!クラス分け。4人は誰かと一緒のクラスになることが出来るのか!
俺の住む町みはらさが市、そこから電車で4駅だいたい10分前後で着くだまち市にある下間高等学校、そこが俺たちが通うことになる高校だ。俺たちは現在だまち駅に向かうため、朝の満員電車に身をゆだねている。今日から華やかな高校生になるというのに、毎日この通勤ラッシュに巻き込まれると思うと少し、いや、だいぶ憂鬱だ、なんてマイナスなことを考えていると、俺のまだ汚れ一つ付いてない制服の右袖をそっと掴んできたやつが。
「ゆう、少し…掴ませて。」
頬を赤らめて、息をあげながら周りに配慮した小さい声で話しかけてきたのは結城もみじ。
こいつは人懐っこいが、満員電車やショッピングモールなどと言った不特定多数がミチミチとしているところが苦手なのだ。
「もみじ、大丈夫…じゃないよな、後1駅だけど一旦降りるか?今日早めに出たし余裕あるぞ。」
俺はもみじと同じく、もみじにしか聞こえないような音量で話した。
「どうしましたか?顔赤いですよ?もみじ」
「みーちゃん大丈夫?」
丁寧で優しい口調で話かけたのは成宮桜。
続いて心配そうに声を掛けたのは天宮海。この二人もまたもみじの異変に気付いてもみじと俺に聞こえるように話してきた。
俺が2人に聞こえるよう経緯を説明。2人とも了承してくれて一旦次の駅で降りることに。次の駅ではぞろぞろと人が降りていき俺らもそれに身を任せて4人で途中下車した。
「みんな、ごめん。」
いつもの語気の強さ無く、謝ってくるもみじ
「大丈夫ですよ。もみじこそ平気ですか?」
「みーちゃん人混み苦手だもんね。この時間に電車使わないから人の多さにうちもびびったよー!」
こいつらがもみじを慰めている間に俺は駅の自販機に水を買いに行き、それをもみじに差し出した。
「桜ありがとう。今はだいぶ落ち着いた。海もありがとう。ゆうも、本当にありがとう。あとお金返すね…」
「金はいらないよ。とりあえず水飲んで落ち着いたら次の電車に乗って行こう。」
「ありがとう。」
本当に疲れてしまったのだろう、語気が一切感じない。
「まぁ、まだ入学式までは時間あるから大丈夫だよ、桜と海もありがとうな!俺も正直覚悟が足りてなくて、まだ学校行ってないのにもう疲れてる。これ毎日通うとかまじかよって思ったわ」
「夕陽君もですか?もみじが頑張ってたから私がいうのもって思ってましたが、内心私も疲れてしまったので一旦降りれて良かったです」
「うちもだよー!これを毎日は大変だよーー。明日からは扉の近くにいて毎回一旦降りる方が楽かもなぁ、今日は中の方まで入っちゃって降りる人たちの流れに若干逆らったのも合って本当に疲れたよーー。」
2人ともナイスフォローすぎる。
「明日からは時間もしっかり見て、少しでも空いてる電車に乗ろう。ってか、明日からも一緒に登校して良いのか?今日は流れで一緒に来たけど、俺が一緒だと何かしら不都合ありそうだし。」
と、俺の悪い癖が出てしまった。忘れてくれと謝ろうとした瞬間、誰よりも真っ先に
「ゆう、そういうの良くない。本当に。もみじはもみじが望んで一緒にゆうといる。だから今後も毎日一緒に学校行く。クラスが違くても、友達が出来たとしても、同じ家から一緒に同じ学校に行く。喧嘩しても。だから、ゆう、あんま自分を悪く言わないで。」
先ほどまでとは違い、しっかりと覇気も語気もある、そんな怒っているのに優しい言葉を言ってくれた。
今度こそ謝ろうと、したら
「夕陽君毎度いってますが、私達が望んで一緒にいるのです。もみじの言う通りです。私達もためを思うのなら自分を卑下するのはやめてください」
「ほんとほんと、夕陽の悪いとこだよ!その自己肯定感の無さというかさ、他人にはお人好しの時限越えてるくらい優しいのに、自分に厳しすぎるというか、うちらを心配しすぎと言うか。」
桜も海も続けてもみじと同じく、怒っていて、そしてどこか切なく俺に諭してくれた。
「ごめん。俺が悪かった。この考え方はなるべく治すよ、だから、何というか本当にありがとう。」
俺は笑顔で返した。
「そ、それはそうともみじ?体調はどうだ?だいぶ顔色は良くなったけど。」
俺は気まずさもあり、元々の本題に話を移した。
「も、もう大丈夫。次の電車乗れる。みんなありがとう」
「おけ。なら次の電車で!」
そうして3分後の電車に乗車した。ちなみに最初の電車より混んでいて、もみじが死にそうな顔をしたのはそういう運命だったのかも知れない。
そうして、だまちに着いた俺たちは学校へと歩き始めた。下間高校までは駅より歩いて10分前後、駅を出て左に曲がり、その後3つの信号をまっすぐ進んだところにある。
「いよいよ入学式だな。緊張するわ!」
「電車、怖い」
もみじはまだビビっていた。
「緊張もしますけど私は楽しみです!」
「うちは友達出来るか心配だなぁ、後は3人の誰か一人でも良いから同じクラスになりたいよ!」
「それはそうだな。お前らと一緒のクラスなら気持ち的にすげぇ楽だわ」
「もみじはゆうと、同じクラスが良い」
とまぁ、こんな感じの和気あいあいとした会話を楽しんでいると。いよいよ目の前に我らの学び舎、下間高等学校のお目見えだ。
下間高等学校は全校生徒1200人の割と大きい高校で、生徒の自主性を重んじる方針である。なので、部活動も盛んであり、反して帰宅部もまた多い。
「でかいな」
小声で呟いた俺の発言をかき消す如く
「新入生の皆さんは向かって右側の体育館に向かってください。」
と矢印の書いたプラカードを持っている、スーツを身にまとっているガタイの良い恐らく先生であろう人が案内していた。
その案内を聞いた新入生とそのご家族たちが次々を校門をくぐり、体育館があるであろう方向に歩んでいた。
「そういえば、みんなの親御さんは入学式来ないのか?」
「私のお母さんたちは後で来ますよ」
「うちも後でパパが来るはず?」
「同じく、後で来る。」
「じゃあ来ないのは俺だけか。とりあえず俺たちも体育館に向かうか」
そうして俺たちも流れに身を任せて入学式をやる体育館へと歩んでいった。
体育館に着いた後身分証などの確認をし順番に席に案内され、俺たちは4人ならんで座ることが出来た。
「いよいよ始まるんだね!入学式。ここから高校生活始まると思うと楽しみでしょうがないね!」
元気な声で海が言った。
「ですね」と桜が相槌。
「少し、怖い」ともみしも相槌?をした。
着席20分後、人の出入りが止まり色んな声がそこらで聞こえている。そうして入学式開始を待っていると、プつっとマイクが入った音が。その瞬間話し声が一切止んだ。
「それではこれより入学式を開始したいと思います。新入生の皆様、またそのご家族の皆様ご起立をお願い致します。」
一斉に立ち上がる。
「礼。」
一同礼をする。
「ご着席お願い致します。」
一同着席していく。
「校長の話」
そうしていわゆる、入学式のプログラムが始まる。校長先生の話、校歌合唱、在校生から新入生へのメッセージ等々、約1時間ほどにわたり進行していった。
「以上を持ちまして入学式を閉式致します。皆様ご起立お願い致します。」
「礼。」
「新入生の皆様はこの後クラス分けがございます。体育館でてすぐの校庭の中ほどにクラスが書いてある掲示板がございます。名前順に並んでおりますのでご確認の上記載されているクラスに向かってください。別途クラスまで案内する者もいますので案内に従って向かってください。ご家族の皆様には学校説明会を実行しますので、お子様がお戻りになるまでよろしければそのままご着席ください。では移動お願いします。」
次々と外へ向かう新入生たち、また俺たちもその波に飲まれていく。
「クラス誰かと一緒で頼む!!」と俺は言いながら4人でクラス分け会場に向かう。
各々の名前のところに確認しに行き、再度落ち合い一斉に発表することにした。
「俺は1年4組か。」
俺はしっかりと間違いがないか確認して、集合場所へ。そして全員集まった。
「じゃあ俺がせーのっで発表な!せーのっ」
「「「4組!!!」」」
「え?今なんて」
「私は4組でした。」
「うちも4組!!!!」
「もみじも、4組。」
「俺も4組だ。おいおいマジかよ、誰か一人と一緒になれたらラッキーだと思っていたのに、まさかみんなと同じになれるとは。」
「やった!!!!」
「うん、嬉しい」
「安心しました。本当に嬉しいです!」
そうして一通り喜びを分かち合い、先生であろう人が案内してくれて俺たちは4組の教室へと足を踏み入れたのであった。