155 死の風について調べよう
「きれいになった!」
「ぼくもです!」
ミナトとコリンが体を洗い終えると、みんなで湯船に入る。
「きもちいいね~。あ、奥の方ふかくなってるっぽいから気をつけてね」
「気持ちいいです!」
ミナトとコリンは湯船にゆったりと入る。
「わぅ~」「ぴぃ」「ぴぎ~」
タロとピッピ、フルフルは奥の深い方へと泳いでいった。
「にゃ!」
「りゃむ~」
コトラはルクスに、こうやって泳ぐのだと教えている。
「コトラとルクスはあまりとおくにいったらだめだよ」
「んにゃ!」「りゃむ」
ミナトに言われて、コトラとルクスはミナトの側で楽しそうに泳ぎはじめた。
「ふぅ……今日はいろんなことが、あったですねぇ」
「あったねぇ」
ミナトとコリンは、みんなを見守りながら、のんびりしている。
「結局、変な気配って、あの風の気配だったです?」
「たぶんそう。呪いじゃないけど、サラキア様とか至高神様とは別の気配だった」
「なんの気配ですかねー。神様ならわかるですかね?」
「あ、そうだね。あとで、サラキアの書で調べてみよっか」
「ぴぃ~」
すると、タロの周りで泳いでいたピッピが「任せろ」と鳴いて、脱衣所へと飛んでいく。
そして、二十秒ほどで戻ってくる。
「あ、ありがと! サラキアの鞄をとってきてくれたんだね」
「ぴ~」
ピッピは「きにすんな!」と言って、再びタロの周りで泳ぎ始めた。
ミナトはサラキアの鞄から、サラキアの書を取り出した。
「さっそく調べてみよっか」
「……サラキアの鞄もサラキアの書も濡れないです?」
コリンが不安に思うのも当然だった。
サラキアの鞄は湯船の外にベチャって置かれ、サラキアの書はお湯に少し浸かっている。
「ぬれてもだいじょうぶだよ! 川とか泥の中に落としても大丈夫だったし」
「そ、そですか」
仮にも神器を川や泥に落としていることに、コリンは少しひいていた。
だが、サラキアとしては、ミナトが川や泥の中に落とすことは想定の範囲内。
五歳児に授ける時点で、サラキアは当然起こる事象だと考えていたのだ。
「あ、そうだ。一応……」
ミナトは念のために周囲の気配を探る。
ミナトの【索敵】スキルのレベルは49。誰かがこっそり潜んでいても見つけられるのだ。
「うん。誰もいないね!」
安心したミナトはサラキアの書を開いた。
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【死の風】
呪われし風の大精霊が起こした暴風に、死神の神獣の権能が混じったもの。
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「まじっているんだね?」
「死神の神獣? 神獣っていうと、タロ様みたいな子です?」
「わふ?」
コリンの言葉を聞いて、深いところを泳いでいたタロがやってくる。
一緒にピッピとフルフルもついてきた。
お湯の中に座るミナトとコリンの後ろから、タロがサラキアの書をのぞき込む。
ピッピはミナトの頭の上に、フルフルはミナトの肩に乗って、のぞき込んだ。
「みんなもきになる? つまり……風の大精霊の近くに死神の神獣がいるみたい」
「そもそも、死神ってなんです? 不死者たちの神ですかね?」
「どうなんだろ、しらべてみよっか」
ミナトはサラキアの書のページをめくった。
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【死神】
死を司る神。
主な権能は生物の魂を神界に連れ去ること。
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「魂を神界に連れ去るって、つまり?」
「殺すってことじゃないです?」
「たしかに。そうかも? 死の風で死んでる人いるものね」
「それに、呪われた大精霊様の側にいるってことは……死神は呪神と手を組んでるです?」
「……可能性はある」
「わぅ~」
タロは「大変だ」と言っている。
「そだね。このままだと、どんどん村人は死んじゃうかも」
時間が経てば、死の風によって、村人はみんな死んでしまうかもしれない。
「ミナト、大精霊様が呪われて呪者になっちゃったら、多分もっとひどいことになるです」
「うん。今はただの暴風だけど……」
呪者と化した大精霊は、呪いが混じった風を常時吹かせるようになるかもしれない。
「そうなったら……人が死んじゃうのは村どころじゃないかも」
国が、いや大陸全体の生物が死に絶える。
「それに、死んだ人を不死者にされたりしたら大変です……」
「た、たしかに……とにかく急がないとだね」
風の大精霊が呪者になってしまう前に、村人が死んでしまう前に。
なんとか、風の大精霊の島に渡らなければならない。
「まずは、アニエスたちにも相談してみよ」
「わふ~」
「サラキア様ありがとうございます。あとであんパンを供えます」
「わふわふ」
調べたいことを調べ終えたので、ミナトはバシャバシャと泳ぎ始めた。
その間、サラキアの書はお湯にぷかぷか浮いていたのだった。




