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【2025年1月16日4巻発売】ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します  作者: えぞぎんぎつね
四章

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147 幼き海竜の長ユーリス

 ミナト達は数分歩いて、海竜王の屋敷の前までやってきた。

 屋敷の前には身なりのいい優しそうな老人を筆頭に、五人の村人が待機していた。


「お会いできて光栄です。至高神の聖女様。私が村長を務めさせていただいております――」


 どうやら老人は村長らしい。


「歓迎感謝いたします。私が至高神の聖女アニエスです。こちらが――」


 アニエスが村長達に、皆のことを紹介していく。


 自己紹介が終わると、村長が、

「海竜王陛下の元へご案内いたします。どうぞこちらへ」

 といって歩き出し、皆でついていく。


「中もおっきいねぇ」「わふ~」

「中に入ると、余計に立派に感じるです」「んにゃ~」

「海竜王陛下のお屋敷ですから」


 村人の青年はどこか自慢げだった。



 屋敷の中をしばらく歩き、立派な扉の前に来る。


「こちらに海竜王陛下がいらっしゃいます。どうぞ」


 村長に続いて、アニエスを先頭に海竜王の部屋へと入る。


「陛下、聖女様がいらっしゃいましたぞ!」

「よくぞ、来てくれたのじゃ!」


 部屋の奥には立派な椅子があり、そこに小さな女の子が座っていた。


 綺麗な赤色のドレスを着ており、ドレスのすそから太い尻尾が見えている。

 竜だから本当の年齢はわからないが、外見年齢は六、七歳ほど。ミナトより少し年上に見えた。

 腰まである髪は、グラキアスよりも濃い青色だ。


 手足や首、頭、至る所に身につけた魔道具がキラキラと輝いている。


「わらわが海竜王ユーリスなのじゃ!」

「ユーリス様。至高神の聖女アニエスにございます」


 アニエスが優雅に頭を下げると、ジルベルト達もそれに倣う。

 ミナトとコリンも一応真似しておいた。


「……わふ?」

 タロは一応、伏せをしておいた。


 その間に、村長は静かに移動し、黙ってユーリスの右側、やや後ろに立った。


 アニエスは皆のことを紹介してから丁寧に切り出した。


「ユーリス様。私達はお願いがあってまいりました」

「むむ? なんじゃ?」

「風の大精霊様の島に渡りたいのです」


 アニエスがそう言うと、ユーリスは「むぅ」と唸って、顔をしかめる。


「風の大精霊様が暴れているとお聞きしました。大精霊様が暴れるのはよほどのこと――」


 アニエスは大精霊が危機に陥っている可能性が高いこと。

 そして、それを救うのは聖女の役目だと力説した。


「聖女様のお話はわかったのじゃ。だが、難しい」

「ユーリス様。風の大精霊様の危機を救うことは、この村にとっても大切なことで――」

「わかっておる。わかっておるつもりなのじゃが……」


 ユーリスは困った様子で、右に立つ村長を見る。


「聖女様。海竜王陛下は手を貸したいとお思いですが、事情があるのです」

「そうなのじゃ! 事情があるのじゃ! 村長、聖女様に事情を説明してさしあげるのじゃ!」


 村長は、ユーリスに深く頭を下げるとアニエスを見る。


「聖女様も、村を襲うリザードマンをご覧になったでしょう?」

「はい。リザードマンのことも気になっておりました」


 ミナトも気になっていたので、村長をじっと見つめた。


「あやつらのことにも関係あることなのですが――」


 村長は深刻な表情で語り始める。


 先代の海竜王が崩御した際、次の王として指名されたのがユーリスだった。


「ですが、先王の次に力を持つと言われた海竜オーガスが、陛下の即位を認めなかったのです」


 先王に使命された正当なる海竜王たるユーリスと最も強い海竜のオーガス。

 海竜達や領民達は、その二者のどちらを推戴するかで二分されているという。


「ねね。どうして、一番強いオーガスが指名されなかったの? 性格が悪いの?」


 疑問に思ったミナトが尋ねると、村長は一瞬驚いた表情でミナトを見た。

 きっと幼いミナトが口を開いて、問いを発するとは思わなかったのだろう。


 だが、村長はすぐに笑顔でミナトを見ながら答えてくれる。


「もちろんオーガスは自己中心的な乱暴者で王の器ではありません」

「なるほど~」

「ですが、最大の理由は、陛下が聖獣の竜。つまり聖竜であることです」

「あ、氷竜王グラキアスと同じだ」

「その通りです。先王陛下も聖竜でした。聖竜が王になるべきなのです」

「そっかー」


 グラキアスは、一般的に魔獣より聖獣の方が強く賢いため、王になりやすいと言っていた。

 だが、王は聖獣でなければならないとは言っていなかった。


「オーガスはわらわが幼いゆえ、認められぬのであろう」

「ユーリス様は何歳なの? あ、僕は五歳」

「わう」


 タロも「僕も五歳!」といって尻尾を揺らす。


「わらわは十七歳なのじゃ」

「そうなんだ!」「わふ~」


 ミナトとタロは人間の十七歳より大分幼く見えるなぁと思った。


「私と同い年ですね。ユーリス様」


 そう言うと、アニエスはユーリスに微笑んだ。


「うむ! だが、わらわは聖竜ゆえ、寿命が長く成長も緩やかなのじゃ!」


 だから、外見年齢が幼くても仕方ないと、ユーリスは言っているのだ。


「そっか。そういうものなんだね」「わふ」


 ミナトとタロが納得すると、ユーリスは満足げに頷いた。


 そして、少しさみしそうにぼそっと小さな声で言う。


「わらわはまだ幼いゆえ、いくら聖竜とはいえ、オーガスには勝てぬのじゃ」


 ユーリスは少し悲しそうな表情を浮かべている。


 古代竜の聖竜のルクスは成長すれば、誰よりも強い竜になるはずだ。

 だが、今の幼いルクスは、レックスよりも大分弱い。それと同じだろう。


「そんなことはありませぬぞ! 陛下は弱くなどありませぬ!」

「よい。わらわはオーガスより弱い」

「いえ!事実として陛下がこの村を守っておられるから、オーガスは手を出せぬのです!」


 村長は、少なくともオーガスが容易に手を出せぬぐらいにユーリスは強いと考えているらしい。

 だが、ユーリスの自己評価は、そうでもないようだ。


「りゃ!!」


 そのとき、ミナトの頭の上に乗っているルクスが元気に鳴いた。


「あ、ルクスは……何歳だろ?」

「りゃぁ!」

「ルクスとやら。先ほどから気になっておったのじゃ。抱っこしても良いか?」


 先ほど、アニエスは流れ作業のように、軽く全員を紹介した。

 その際、ルクスも「こちらがルクスで、こちらは……」と言って軽く流した。


 そのとき村長はともかく、ユーリスはルクスのことをじっと見つめていたのだ。


「ルクス、ユーリス様がルクスを撫でたいんだって。いい?」

「りゃむ!」


 ルクスは元気に鳴くと、ユーリスの元へと飛んで行く。


「おお、なんと、かわいらしい子なのじゃ。いいこじゃなぁ」

「りゃむりゃむ~」


 ユーリスは、ルクスのことを宝物のように大切に抱っこし、優しく撫でる。

 その表情は、本当に嬉しそうで、慈愛に満ちていた。

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