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【2025年1月16日4巻発売】ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します  作者: えぞぎんぎつね
三章

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135 戦いの後始末

 ミナトは、自分と契約したばかりの地の大精霊、改めモグモグの頭を撫でる。

 そうしながら、体に異常が無いか、魔法で診察した。


「だいじょうぶ? モグモグ」

「……ありがとうございます。楽になりました」

「よかったよかった。アニエス、ありがと」


 アニエスは、至高神への感謝の言葉で祈りをしめると、ふぅっと大きく息を吐いた。


「ご無事で良かったです。モグモグさん、お体に異常はありませんか?」

「ありがとうございます。ご迷惑をおかけして……」


 アニエスが心配そうに魔法で診察する間、モグモグは恐縮していた。


「タロとコリンもありがと」

「ばうばう~」

「お役に立てて嬉しいです!」


 タロとコリンは、嬉しそうに尻尾を振っている。


「ミナト。……どうして地の大精霊様の名前がモグモグなんだ?」

 レックスが不思議そうに尋ねる。


「モグラだから?」「わふ~?」

「ああ、なるほど」

 レックスはそんなものかと思った。


 その後、ミナト達はモグモグと一緒に、入り口へと向かった。

 道中、サーニャがミナトの隣にやってきた。


「ミナト。フルフル。聞きたいことがあるだけど」

「なに?」「ぴぎ~?」


 ミナトの近くにはタロとフルフルが歩いている。


「なんで、フルフルが核を持ってきたの?」


 サーニャの疑問は、アニエス達も知りたいことだった。

 全員の注目がミナトとフルフルに集まる。


 ミナトがフルフルに出した指示は「フルフル、わかる?」だけだ。


「えっとね。あのとき、僕とタロとフルフルとピッピは核の場所がわかったの」

「わふわふ」「ぴぃ~」「ぴぎっ」


 タロ達は「うん、わかった」と言っている。


「どうして、急にわかったの? それまでは詳しい場所はわからなかったんだよね」


 核は坑道の奥にあるということしかわかっていなかった。


「……多分だけど。呪神の使徒が隠す魔法かスキルを、別のことに使ったのかな?」


 それまで呪神の使徒は核を厳重に隠していた。

 それを、壁に擬態する呪者や坑道の空気穴に潜む魔物の隠蔽に使ったのだろう。


「場所がわかったけど、狭くて入りにくいところにあったから、フルフルに頼んだの。ね?」

「ぴぎぃ~」

「あれだけの言葉で、意思の疎通をするとは、さすがですね」

「ぴぎぴぎっ」


 アニエスに褒められて、フルフルはとても嬉しそうにプルプルした。


「あ、そうだ。モグモグ。さっきまた呪われたからこれ飲んでね」


 歩きながら、ミナトは自作のレトル薬をモグモグに差し出した。


「こんな貴重な物を……、ありがとうございます。何から何まで……」

「すぐ作れるから、遠慮しなくて大丈夫!」

「かたじけない。……おいしい、本当においしい。まるで全身が生まれ変わったかのようです」


 モグモグがミナト作のレトル薬を飲むと、みるみるうちに力が戻っていった。

 全快とまでは行かなくとも、八割ほどは回復している。


「モグモグはずっとここに住んでるの?」「わう?」

「そうなのです。ずっと山で暮らしていたのですが……」


 人がやってきて鉱脈を見つけて、採掘を始めたのだ。


「勝手に採掘されて、腹が立ったりしないのか?」


 レックスが尋ねると、モグモグは首を振る。


「無駄に環境を破壊しなければ、特に腹立ちません。むしろ賑やかになって嬉しいです」


 モグモグにとっては、人族も山の住民という感覚らしい。

 鹿の群れがやってきて木の皮を食べるのと、人族が鉱石を掘るのは大した違いは無いようだ。


 それでモグモグは魔物や呪者が近づかないようにして、人族を見守ってくれていたのだ。


「見守るってどうやって? 見つからなかったの?」

「そうですね、いつも私はこうやって……」


 モグモグは、すぅっと溶けるように坑道の壁に入っていく。


「す、すごい!」「わっふわう!」

「大精霊は物質の体が本質ではないとは言え……そのようなことができるとは……」


 マルセルが感動している。


「このように壁の中から見守ってきたので、見つかりません」


 モグモグは壁の中から戻ってきた。


「おおー! すごい!」「わふぅ!」


 ミナトがモグモグの頭を撫でて、タロはモグモグの顔をベロベロ舐めた。


「人族としてモグモグ様のことを知らず、お礼も申し上げず……、誠に申し訳ありません」


 話を聞いたアニエスが、丁寧に詫びた。

 アニエスは鉱山に権利を持つ神殿の人間として、責任を感じたのだろう。


「いえいえ、私が勝手にやっていたことですから」

「たとえそうだとしても、我々はお礼をするべきです。ヘクトル。祠を作ってもらいましょう」

「そうですね。捧げるのはレトル薬でよろしいですか? コボルト作になりますが」

「これです! 試しに飲んでみて欲しいです」


 モグモグに、コリンが素早くレトル薬を差し出した。


「かたじけない……。これもおいしいですね。力がわいてきます」

「よかったです!」

「竜焼きとかあんパンも捧げようよ! コボルトさんたちが作ったのはおいしいんだよ!」

「ミナト、それはいい考えだ!」


 ジルベルトが褒め、モグモグは、

「ありがとうございます。とても嬉しいです」

 と本当に嬉しそうに感謝した。


 それから、アニエスとヘクトルは、モグモグに質問を始めた。


 どこに祠を設置するか、他に何を捧げたら嬉しいかなどを聞きとりしていく。

 祠を建てる場所と、捧げる物が決まった頃、坑道が塞がっている場所にたどり着いた。


 向こう側から、岩を叩く音が聞こえてくる。


「あ、心配して助けに来てくれたのかな?」「わふわふ」

「すぐに脱出して安心させてやらないとな!」


 そういうと、レックスは、竜ならではの怪力で岩をどかし始める。


「僕も手伝う!」「ばうばう!」


 そしてミナトとタロも協力し、岩をどかしていった。


「そうだ、モグモグ。聖獣のみんなも遊びに来るよね」

「そうですね。我ら精霊は呪者と戦うには不向きですから」


 精霊の主な役割は瘴気を祓い、解呪をすることだ。そして呪者と戦うのは聖獣の役割なのだ。


「なら聖獣のことも神殿の人たちに教えておいた方がいいかも。アニエス。お願い

「そうですね。虎3号たちとも話し合って、その辺りも決めないとですね」


 ミナトとタロ、レックスはどんどん岩をどかしていく。


 作業をはじめて、三十分ほどで無事瓦礫をどかしおえたのだった。



「聖女様! よくぞご無事で!」


 崩落の音を聞いて心配して集まっていた鉱夫達が、アニエスをみて感動して涙を流した。

 全員、魔物が駆除され、安全が確保されたと知らないのに、命がけで駆けつけたのだ。


 アニエスは、鉱夫達にモグモグを紹介し、モグモグのおかげで助かったと教える。


「モグモグ様は、鉱山を守護せし偉大なる地の大精霊です。どうか敬意を持って接してください」

「なんと」「……俺達は大精霊様に守られていたのか」

「ありがてぇ、ありがてぇ」


 アニエスの言葉に、鉱夫達は皆感動し、モグモグにも日々の感謝の言葉を述べる。


「……」


 地の大精霊モグモグは無言で照れていた。

 基本的に大精霊は、人前に姿を現さないものなのだ。


 そして、人前で、口を開くこともめったにない。

 ミナト達と沢山会話していたのは、使徒ご一行なので、特別なのだ。


「大精霊様は偉大な存在なので、普段はお姿を人の前に見せることはありません」


 普段は見えなくても、大精霊様はいつも見守っていること。

 大精霊の仲間である聖獣が訪れることもあるから、聖獣にも無礼な振る舞いをしないこと。


 そんなことをアニエスは丁寧に説明していった。

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