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【2025年1月16日4巻発売】ちっちゃい使徒とでっかい犬はのんびり異世界を旅します  作者: えぞぎんぎつね
三章

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132 地の大精霊

「がうがーうがうがう」


 タロにかかれば吸血バットも洞窟火トカゲも敵ではない。

 あっという間に倒される。


「たすかったよ、タロ様」

「ええ、今回は、きつかったですね。ありがとう」


 ジルベルトとアニエスがお礼をいいながら、タロを撫でる。

 残りの者もお礼を言った後、タロと一緒に解呪を続けているミナトの元へを駆け寄った。


 その頃には、ミナトは精霊と大精霊の解呪を終わらせていた。


「う……ぅぅ」


 苦しそうにうめく大精霊にミナトは手を触れて、魔力を分け与える。

 その大精霊は体長一メートルほどの大きなモグラだった。


「大精霊さん、すぐに助けるね」


 ミナトの手がぼんやりと光り、ゆっくりとミナトから大精霊へと魔力が流れていく。


 湖の大精霊メルデのときもそうだったが、解呪されたばかりの大精霊は非常に衰弱しているのだ。


 そして、精霊は物質的な体が本質ではないので、回復には魔力を必要とする。


「その方が、大精霊様なのです?」

 コリンが大精霊を見て尋ねてきた。


「そだよ。この子はモグラの姿の大精霊さん」

「モナカ様と全然違うですね」

 氷の大精霊モナカは美しい少女の姿だった。


「うん。湖の大精霊のメルデは亀だったし、いろんな大精霊がいるんだよ」

 そういいながら、ミナトは魔力を注ぎ続ける。


「……ありがとうございます。サラキア神の使徒様、至高神の神獣様」

 一分後、ゆっくりと目を開いた大精霊がミナトとタロにお礼を言う。


「そして、皆様、本当にありがとうございます」

 大精霊はアニエス達にもお礼を言う。


「ゆっくり寝てて。疲れているでしょう? あ、これ飲んで!」

 ミナトはサラキアの鞄から、自作のレトル薬取り出して、大精霊に飲ませた。


「お、おお! 力がわいてきます! すさまじい薬ですな。こんな貴重なものを……」

「大丈夫、僕が作ったものだから、ただなんだよ!」


 ミナトの作ったレトル薬は【神級】なので、とても効果が高いのだ。


「なんと、自作……さすがはサラキア神の使徒様ですな。ありがとうございます」

「よかったよかった」「ばうばう」

「なんとお礼をいえばいいか。サラキア神の使徒様」

「えっとね、僕はミナト、ミナトってよんでね? そしてこの子はタロで、ピッピとフルフル」

「ありがとうございます。ミナト様。タロ様。ピッピ殿、フルフル殿。私は地の大精霊です」


 ミナトは順番に皆を大精霊に紹介していった。


「この子がコリンとコトラで……」

 ミナトは紹介するついでに、コリン達に治癒魔法をかけて治療していく。

 コリン達もアニエス達も、重傷者はいなかったが、傷は沢山負っていたのだ。


「ミナト、治療ありがとです。そして大精霊様、コボルトのコリンです」「んにゃ~」


 皆、治癒されたお礼を述べてから丁寧に自己紹介していく。

 互いの自己紹介が終わると、ジルベルトが不思議そうに尋ねた。


「大精霊様。精霊達はどうしたんですか? 見えなくなりましたが……」

 壁に擬態させられていた呪われた精霊達は、いつの間にか見えなくなっていた。


「本来、精霊は見えないものですからな」

「そうそう。なんか、解呪すると精霊さんはみえなくなるみたい」

「わふ~?」


 タロは「不思議だね?」と言っている。


 大精霊以外の精霊の姿は基本的に見えない。だから精霊が見えないこと自体は不思議ではない。


 呪われているときに姿が見えることが異常なのだ。


「物質の体が本質ではない精霊を呪うためには固定化が必要なのでしょう」

「なるほど?」「わふ?」


 ミナトとタロは、マルセルの説明がよくわからなかった。


「つまり物質的に精霊は曖昧な存在なんですよ。そんな、曖昧な存在である精霊を強固に、かつ強制的に支配することは、呪神の使徒であっても難しいのかもしれませんね」


 マルセルは少し興奮気味で早口だった。


「ほう?」「がう?」

「大精霊様は仮初めとはいえ、物質的な肉体を持っています。ですが精霊達は物質的な肉体を持っていません。おそらく呪神の使徒であっても、精霊をそのまま呪うことは難しいのでしょう。つまり、呪いというのは精神的な、言い換えれば魔力的な要素が大きいと考えられるわけですが――」

 マルセルの早口は加速している。


 きっと精霊と呪いに関する新事実に気づいて、灰色の賢者として興奮しているのだろう。


「どういうことです?」「んにゃ?」

 ミナトとタロだけでなく、コリンとコトラもわからなかった。


「つまり、どういうことだ?」

 ジルベルトも尋ねる。


 ミナトとタロ、コリンとコトラ以外の者も、実はよくわかっていなかったのだ。


「存在が……いや、呪われていない精霊は普通は見えないってことです」


 マルセルは詳しい説明を諦めた。代わりに鞄からノートを取り出して凄い勢いで書き留め始めた。


「なるほど~」「わふ~」

 ミナトとタロはうんうんと頷いた。


「見えないのが普通だってわかったけど……大精霊さん、精霊さん達は大丈夫なの?」

「ありがとうございます。ミナト様」


 大精霊はお礼を言ってから周囲を見回す。


「ミナト様もお感じになるでしょう? 精霊達は元気にとびまわっておりますぞ」

「ほんとだ。でも魔力が少ないかも」

「ゆっくりと回復しますから、ご安心ください」

「そっか。ならよかった。あ! 大精霊さん、あんパン食べる?」「ばうばう」

「おお、これは? あんパンとは一体?」

「あんパンっていうのは、とてもおいしいパンなんだよ!」「わふわふ」


 ミナト達はみんなでゆっくりとあんパンを食べた。


「あんパンを食べたら、坑道を塞いだ岩をどかさないといけませんね」

「聖女様。それは俺とタロ様に任せろ」

「わふ~」


 レックスとタロは張り切っていた。


「あんパンというものは、おいしいですな! これはとても良い」

「よかったー」「わふ」

 地の大精霊もあんパンが気に入ったみたいで、ミナトとタロは嬉しかった。


 皆であんパンを食べて、小腹を満たした後、岩をどかすために移動を始めると、

「う……ぅぅぅ……」

「大精霊さん大丈夫?」「わふ?」

 突如、大精霊が苦しみ始めた。


「無理ないで。魔力あげるね」

「いえ、大丈夫で……、うううぅうぐう……」

 地の大精霊はうずくまり動けなくなった。

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