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「魔女は今日も独り」





 魔女や魔法使いの存在は、人間には知られてはいけない。


 彼らは力を求めてしまうから。




 私たちは罰を受けるべき背信者ではない。

 私たちは、あの悲劇が二度と起こさないために策動する者である。



 隠された真実は受け継がなければならない。

 …無識の者を守るために。








  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――




 その昔、“魔法”という、事象すらも歪めてしまう恐ろしい力を畏れた人間たちは、その力を持つ私たちを遠ざけ、居ない者として扱うようになった。

 そして何百年か前から、人間たちは“魔法使い”という存在を、物語の中の、空想上のものとして考えるようになった。


 だが、そんなことはどうでもいい、と。

 享楽的な者の多い魔法使いたちは人間たちに混ざり、感情の赴くまま、好き勝手に生活している。世間には忘れられていった彼らだったが、いないように見えるだけで、実はどこにでもいるのだ。




 それから少しして、好き勝手している魔法使いの横で、ある人間が魔法の残骸を見つけた。


 人間は魔法の残骸を調べ、魔法使いたちの魔法には及ばないものの、“魔術”というものを編み出した。所詮は魔法の劣化版なのだが、魔術は、人間たちの生活をどんどん変えていく。








 そうやって日々の営みに追われる人間たちを横目に、魔女のシルフィーは今日も独りでお茶を飲む。


 もし彼女に、今日も独りなのね、などと言ったのなら、シルフィーは得意げな笑みで足元にいるドラゴンを指さして今日はお客がいる、とでも言うか、笑顔で殴り掛かってくるのだろう。





 シルフィーは生傷だらけで赤黒い血を流した、彼女の何倍、いや何十倍もあるドラゴンからふわりと浮いて地面に降りた。



 そのドラゴンの鱗の色は、初夏の晴れた空のようだった。




 「師匠(せんせい)、」


 何を思いだしたのか、シルフィーは少しだけ苦しそうな表情で、長いまつげを伏せる。






 それから振り返ってドラゴンを見て、



 「もう来んなよ」


 とだけ言い、森の中にぽつんと建っている自分の家にひっこんだ。



 彼女の背中を、真っ黒なうさぎがじっと見ている。

 そのウサギの口には美しい装飾のついた手紙がくわえられていた。







 …いつの間にか家にいたそのウサギに、シルフィーはまだ気が付いていない様子である。










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