10. ハルテッド十四回の花~最後の一輪
※この回で完結します。少々長いので、お時間のあります時にどうぞ。
馬車の中から、ハルテッドは今から向かう南の町を眺める。
ハルテッド13才。あれから一年後の再訪――
「シェリスタ」
思い出す名前を呟く、形良い唇に、細い指がすっと差し出されて被さる。ハルテッドのオレンジ色の瞳が指の持ち主に視線を向けると、40過ぎの麗しい男が微笑んで見ている。
「何だよ」
「お前が声変わりしたから。声変えとけってこと」
うるせぇなぁと、唇に当てられた指を払うハルテッドの顔は、本当に嫌そう。
短い髪を後ろに結んだ美しい男は、フフンと笑って、気にもせずにハルテッドの顎を撫でる。鬱陶しい目つきで睨むハルテッドに『そんな目するな』と中性的な声が囁く。
「あっち行けよ。独り言まで、茶々入れられるの、嫌なんだ」
「知ってる。でも馬車は一家族に一個」
舌打ちして、ハルテッドは窓に顔を向ける。言っても無駄。俺の母親は、面倒臭い。
美男なお母さんは、反抗期真っ盛りの息子に笑って、嫌がる息子の頭を抱えると『会いに行くの、女で行けよ』と助言した。
ギロッと睨んだつもりの息子に、優しく笑顔を向け『いいな。鈴はたんまり付いてる。普通に。お前らしくだ』そこまで言うと、カッチョエエお母さんは後ろ手を伸ばし、美人なお父さんに渡してもらった服を、息子に押し付けた。
「縫っといてやったんだ。これで踊れ。お前の歌を歌え。会えなくても、誰かはお前の話をするだろう」
「もーいい。ありがとう」
押し付けられた服を片腕に抱え、もう片手で母を押しやるハルテッド。会えないことを前提にされているみたいで気分が悪い。
『放っとけよ』悔しそうに漏らす声に、母は何も言わずに、ちょっと微笑んだ顔を見せて下がった(※男らしいお母さん)。
窓の外の流れる風景。
近づく町並み。あの日。あの時。あの子。思い出す全てに――
「忘れた方が良かったのか」
この一年。何十回も思った。何百回も。きっと。思ったこと。
ハルテッドの小さな呟き。全部聞こえている、父母は何も反応しなかった(※怒るから)。
御者をしているベルは、この時。近づく町を見ながら、弟の恋が思い出にならないように願っていた。
*****
時を戻して、一年前のこの時期。
ハルテッドは、仲良くなったシェリスタと、僅かな時間を楽しんだ。思い出に残るそれは、馬車が出発しても消えることなく、いつまでも胸に付いた染みの様に。
○3日目の午後。シェリスタは来た。ハルテッドは、用意しておいた香袋を見せて『これ。母さんが縫ったの』そう言って、満面の笑みを向けた女の子に渡す。
シェリスタは小さな包みを渡して『ハル。お兄さんと食べて』とお菓子をくれた。専ら、お菓子の話で会話は終わる。この日も、ベルが持って来た花を渡した。
○4日目の午後。もう普通のように二人は笑顔で挨拶し、ハルテッドは『昨日のお菓子。美味しかったよ』と報告。シェリスタは『香袋。とっても素敵な香り!お母さんが取ろうとするのよ』と笑う。
嬉しいハルテッドは、今日は自分で摘んできた花を渡し『これと似てる匂い』と教えた。
○5日目の午後。雨が降っていたので、ハルテッドは池の近くの店の軒で雨宿りしながら、少し待つ。でもシェリスタは来なかった。
来たのはベルで、ハルテッドが出て1時間後に迎えに来た。ハルテッドはベルに八つ当たりしながら、そぼ降る雨に濡れて帰った。
○6日目の午後。曇り空だったが、ハルテッドが行かなかった。
熱が出たハルテッドは、父親に『若いとありがちな無茶な恋』そう言われながら世話される。
代わりに出かけた兄が戻った報告に『俺が行った時には、丁度あの子が帰る後ろ姿』と聞き、意地でも今日中に熱を下げると決意。
○7日目の午後。ハルテッドは頑張って(?)熱が下がる。
だが母親に最後まで『お前の具合の悪いの、移したらどうするんだ』と止められた。が、『でもでも』言い訳がましく何とか粘って、ちょっとでも会いたくて出かける。
仕方なし、ベルが補助で付き『お前、いらねえ』言いながら、保護者同伴で会う。広場にいたシェリスタは、ベルもいるので、ちょっと緊張していた。
「一昨日。雨だったでしょ。その時に来て、それで風邪引いて」
それで昨日、来れなかったと微笑むハルテッド。シェリスタは事情を知って目を丸くし、ベルとハルテッドを交互に見て『今日は帰って休んで』と急いで伝える。それでお兄さんがいるのかと、理解した。
ハルテッドは『大丈夫』もう平気と慌てて首を振ったが、ベルはあっさり『有難うね』の了解をし、嫌がる妹的弟を引っ張って帰った。話した時間は、5分。シェリスタも彼らを見送ってから、家に戻った。
○8日目の午後。回復したハルテッドは早めに広場へ。シェリスタも早く来てくれて、彼女に少し心配してもらいながら、久しぶりに(※3日)二人で会話を楽しむ。
「雨の日。雨だったからじゃないの。日曜日だったから、家から出られなかったの」
「そうなんだ。お・・・(俺って言いそうになる)女の子だから、雨に濡れないようにかって」
「ううん。日曜日はね、教会に行くの。家族と一緒に過ごすから」
そうか、と違いに頷き、曜日もあまり考えていなかったハルテッドは、普通の生活を少し教わって学ぶ。
その話の合間、シェリスタは言いかけて黙ったことがあったが、訊ねると顔を赤くして『何でもない』と言われた。
この日は仕事をするつもりだったので、ベルに頼んでおいた花4本―― 4日分を、ベルが戻った時に受け取って、シェリスタにまとめて渡した。
○9日目の午後。ハルテッドが広場へ行くと、少し遅れて走るシェリスタが来た。
急いでいるので、何かと思ったら『ハル!一緒に来て』と言う。動けないんだけど、と驚いて答えると『すぐよ、そこ』と腕を引っ張られた。
どこ行く気なのかと、訝しむハルテッドをよそに、シェリスタは友達の細い腕をむんずと掴んで、反対側の店の並びへ走る。
『ハル、見える?あそこにいる子』急に立ち止まり、肉屋の影に隠れた二人。示された並びの店の前に、男の子がいた。
「お菓子、買ってる子?あの、金髪の」
ハルテッドは事情が掴めないものの、確認。シェリスタは顔を赤くして、困ったように複雑な笑顔で頷く。『私の好きな子』その一言に、ハルテッドの目つきが変わる。
さっともう一度、坊主(※敵)を見て、ざーっと観察。俺の方が絶対に顔が良い。ベルの方がまだマシ。
あんなのが良いの?あんな、細くて目の小さい、ちょっと生意気そうな(※自分は置いとく)ガキんちょかよ。
睨むように見ているハルテッドに、『教会で、時々話すの。でも』シェリスタは小声でそう言うと、ハルテッドを引っ張って、名残惜しそうに、金髪の子をちらちら見ながら遠ざかり、広場へ戻った。
「私はほら。こんなでしょ。だからね・・・他の女の子と長く話すけど、私とは挨拶と天気(※老人の話題)で終わるの。痩せないと、駄目だよね」
ハルテッドは何も答えなかった。実の所、打ち明けたシェリスタも、一生懸命打ち明けているので、ハルテッドの返事を聞いても聞かなくても同じだった。
そして、ベルが来て花を一輪、受け取った後、最近の動作の一環として渡した日。
○10日目。ハルテッドは機嫌が悪かった。昨日の夕方からずーっと機嫌が悪いが、兄は何も訊かなかった(※とばっちり避ける)。
でも、ハルテッドは広場へ出かけた。『残り僅か』だと分かっていたから。
やってきたシェリスタに挨拶すると『昨日の子』と開口一番、男の子の話を出した。シェリスタは、笑顔を引っ込めて頷き、先にハルテッドの意見を聞く。
「どこが好きなの?他の女の子と喋るの長くて、シェリスタとの話が短いのに」
「うーん。雰囲気とか。笑顔とか。優しそうなところ。でも。いいの、家に帰ってよく考えたの」
少しキツイ訊き方をしたハルテッドの言葉には、微笑んだだけで、シェリスタには自分の心の声の方が重そうだった。その様子に気が付いたハルテッドが『何を考えたのか』を訊くと、彼女は教えてくれた。
「昨日も言ったけど。私、太ってるから。でもね、もし痩せても。可愛い顔の子じゃないと駄目かもしれないでしょ?
私、女の子と友達にもなれなかったのに。それを思い出したの。男の子に、好きになってもらえるわけないなって」
「何てこと言うの」
びっくりしたハルテッドは、並んで座るシェリスタの腕を掴んで、驚く顔を向けた彼女に『そんなことで、好きになるとか、判断するのおかしい』と強く教えた。
ハルテッドの顔が真剣で、シェリスタは驚きつつも、優しい彼女に心が温かくなる。少し涙ぐんで『有難う』とお礼を言った。
涙ぐんだ目は、そのまま涙を一つ、二つ落とす。ハルテッドは涙を拭いてあげながら、俯いたシェリスタの顔を覗きこんで『あなたは充分、可愛い。あなたは充分、素敵』馬車の大人が励ます時と同じように、ちゃんと伝えた。
それは、ハルテッド自身の嘘のない気持ちでもあった。
二人の真剣そうな様子を遠めに見ていたベルが来て、いつものように花を一輪。ハルテッドは兄を見ずに、その花をシェリスタの髪に挿した。
○11日目。ハルテッドは、少し前日に相談したのもあって、母親から持たせてもらったものを持って行った。
シェリスタが来たので、二人はいつものように笑顔で挨拶を交わす。そして早速、シェリスタに渡す。
『これ何?』包みを嬉しそうに受け取ったシェリスタは、そっと開く。開けて驚く。
「こんなに素敵なもの。受け取れないわ」
ハルテッドは戻されたそれを笑って押し付ける。『嫌じゃないなら使って』馬車の女が使う、大きなストール。派手で不思議な模様が並ぶ、薄く輝く飾り布。
ハルテッドの贈り物は、シェリスタが女の子として、自信を持って欲しかったからだった。この日も、ベルが持って来た花を渡して、『明日は休み』と確認。12日目は日曜日だと覚えていた。
○12日目。ハルテッドは馬車で一日過ごした。
仕事が続いているから休め、と親に言われたのもあって、この日はシャツとズボン。長い髪は、親父に一本に編まれた。
男の格好をすると、途端に自分の特性が薄れる気がして、退屈を味わう。そして『同じ男なら』と、あの金髪の坊主を思い出し、不愉快な思いにも囚われた。
この夜。馬車長のデラキソスが夕食の際に、皆の集まりで出発日時を伝えた。
「明後日の朝だ。夜明けと共に朝食。片付けたら出発だ」
ハルテッドの頭の中、ざわつく思いがひしめいた。目を丸くして、馬車長の言葉を反芻する。
横にいたベルは、弟の肩に手を置き『明日。少し長く話せよ』と呟き、困惑する弟の顔に『明日が最後。仕事、しなくて良い』それだけ言って、すっといなくなった。
○13日目。一晩考えたハルテッドは、明日出発する準備で忙しい親父を捉まえ、さっくり相談。親父はすぐに微笑むと、タンスを開けて息子の要望を叶えてやった。そしてハルテッドは一人で出かけた。
シェリスタは、午後のいつもの時間に待っていた。
「来ないな。明日でお別れだから、今日は何か忙しいのかな」
今日と明日。この二日間が終わったら、ハルはもういなくなる。シェリスタはとても寂しく思った。
明日は最後の日だから、贈り物をしようと思って、今日の夕方にお母さんと買い物に行く予定。お母さんも、娘の友達の優しさを好きでいてくれた。
「あーあ。会わせたかったな。お母さんはハルを良い子と言っていたのに」
シェリスタは大きな溜め息をつく。手紙も出せない馬車の移動。来年も会えるように約束しないと、とそればっかりが頭をぐるぐるしていた。
そんなことを考えていると、すぐ近くに誰かが立った。『あ、ハル』さっと顔を向けて固まる。『違った』慌てて口を押さえて、でも目の前の人を凝視するシェリスタ。
池の縁に座ったシェリスタを、優しい目で見下ろす茶色い髪を結んだ男の子。
あまりに綺麗な顔で、白いざっくりしたシャツと、焦げ茶色の細いズボンが、似合うような似合わないような。
脛まで丈のある革の靴を、きちっと紐で結わえた細い足。膨らんだ白いシャツの袖に透ける、細身の腕。オレンジ色の瞳は、本当にきれいで・・・・・
「ハル?」
固まったまま、シェリスタは呟いた。友達の名前。
男の子はニッコリ笑うと、座ったシェリスタの両手を取って、丁寧に立たせた。
「ハル。男の子、みたい」
「うん。そう見えるよね」
シェリスタの頭の中で、混乱と予感が入り混じる。
目の前の、すごく綺麗な顔の男の子は、本物の男の子のように見える・・・だけど、ハルは女の子・・・もしかして。どっちが?どっち本当?
「あのね。明日の朝、町を出るんだ。だから、今日で最後だ」
今日で最後―― その言葉に、胸がずんと痛んだ。ハルの口調が変わったことは気が付かない、シェリスタ。明日ではなかったの、と思う焦りが口に出る。
『明日?朝なの』どうしよう、と慌てたシェリスタ。贈り物が。
同じくらいの背の、『男の子・ハル』は手を伸ばし、シェリスタの顔に添えた。びっくりして、ドキドキドキドキドキドキするシェリスタは、目がまん丸、動けなくなる。
ハルも寂しそうに笑って『ね。今日がお別れだった』小さな声でそう言うと、少し顔を近寄せて、シェリスタの目を見つめる。シェリスタは分かっていなかったが、そのぷっくらした頬は真っ赤っ赤だった。
「俺も。昨日の夜に知った。だからね。今日は、ちゃんと俺として挨拶したかった」
「ハル。ハルは、男の」
シェリスタの心臓が揺れ過ぎて、体が前後に揺れる。声も上擦り、言いたいことも言葉にならない。
そんな彼女に、いつもの笑顔でハハッと笑った『ハル』は、ちょっと背伸びして、シェリスタの額に口付けした。ほんの、2秒程度の小さな口付け。
倒れるかと思った、シェリスタ。これが精一杯の表現の、ハルテッド。
「シェリスタは友達だ。でも。俺はシェリスタが、女の子として好きだよ」
ハルテッドの挨拶はここまで。添えた片手を戻すと、ニッコリ笑って『またね』と最後の声をかけ、ハルテッドは背中を向けた。
止めるに止められないシェリスタ。その場でへたり込み、遠ざかる男の子の背中を見つめた。
一本に編んだ、長い艶のある髪が、左右に揺れる白いシャツの背中。細身の美しい男の子は、一度も振り返らずに、町の建物の影に消える。
『お別れ。言えなかった』太った女の子は、非現実のような午後の一時、白昼夢から覚めた呟きを落とす。
この日。花は2本、彼女の座っていた場所に置かれていた。会えなかった昨日と、今日の分だった。
歩きながら、何度も目を閉じるハルテッドも、絶対に振り返らなかった。
振り返ったら、戻ってしまいそうだった。握手して抱き締めて、じゃあねと言えたら良かったけれど。
「俺が口付けしちゃダメなんだよな」
頑張ってどうにか額に終わらせた、そんな自分の男らしさを誉めつつ。歯を噛みしめていないと、落ちそうな涙を必死に堪える、13日目の午後の道。
*****
馬車は、今年も到着した南の町。皆は停留の支度に忙しい日だった。
一年前と同じ時間。同じ場所で、夕方頃、歌い始めるハルテッド。鈴の付いた綺麗な服で踊る。
兄も後ろで演奏し、ずっと歌うハルテッドに、町の人が足を止めて聴き入り、逆さに置かれたベルの帽子に硬貨を入れる。
行き交う人。足を止める人。離れたところで、こっちを見る人。ハルテッドは踊りながら、歌いながら、お客を見続けた。でも。
「帰ろう。ベル」
いない、と分かって、ハルテッドは次の足を戻し、小さな声で兄に言う。兄も楽器を弾く手を止めて『そうか』とすぐに答えた。
道にいた人々は、まばら。道向かいの店屋の路地にも、ちらほらの人影、その寂しげな夕方。
帽子に入った、初日にしては良い稼ぎの硬貨を、腰袋に何度か突っ込むと、つまらなさそうに沈む弟に、ベルは静かに伝える。
「お前。もうちょっと、ここにいろ。俺は先に帰るけど」
「ああ?いいよ。俺も」
「お前はいろ」
ベルは弟の顔を見ないで、その細い肩を掴むと、珍しく力づくでぐるりと向きを変えた。ハルテッドが眉を寄せた瞬間。
「シェリスタ」
目の前に歩み寄った女の子に、名前が思わず口から漏れた。
「俺、先戻るから」
横で挨拶したベルの声は聞こえない。兄はそのまま、何も見ないで町をすり抜けて帰った。
「ハル」
ぷっくらしていた頬が、少し細くなった女の子は、躊躇いがちに笑顔を向ける。ハルテッドは一度下を向いて、わーっと笑顔になってから、ぐっと意識を引き締めて真顔に戻り、ばっと顔を上げる。
「今年も俺」
「うん。そろそろだなって。毎日見に来た」
二人同時に口を開き、言葉が被る。
ハルテッド、感無量。たまらなくて勢いで両腕を広げるが、やっぱり相手を見る緊張に耐えられない。腕はそのまま、さっと顔を伏せた。でも。
次の瞬間。自分の細い体を、しっかり両腕を回して抱き寄せてくれた女の子に、ハッとして目を開けると、彼女は見上げもせず、ハルテッドの胸に顔を寄せて微笑んでいた。
「また会えた!ハル。来てくれてありがとう」
「俺も。会えた。会えた・・・! 有難う」
ハルテッドは、ぎゅーっと彼女を抱き締める。傍から見れば。馬車の女の子と、町の女の子の再会。ハルテッドの中で、恋心だったはずの気持ちが、もっと大切な大きさに満ちる。
「ハル、毎年。来る?」
「多分ね」
二人は顔を見合わせて、少し固まった後。笑い合った。ハルテッドは髪に挿していた一輪の花を渡す。
「覚えてる?」
ハルテッドの目に、シェリスタは頷く。笑顔で受け取る花に『これで14本目』と囁いた。
「14日目に、シェリスタに渡せなかった。14日目のお別れの花」
「うん、飛び越えて・・・14本目は、また会えた今日の花」
ハルテッドの言葉に返したシェリスタの、新しい表現。ハルテッドは嬉しそうに笑う。
シェリスタも笑って、カバンに入れていた、大きな布を広げ、自分と友達を包むようにフワッとかけた。
「これ」
ハルテッドの笑顔が溢れる。一年前にあげた、馬車の女の飾り布。シェリスタは頷いて『毎日使った』と答えた。二人は大きな声で笑って、もう一度抱き締め合った。
この笑顔は、一年に2週間、日曜日を抜いた午後だけ。
毎年、同じ時期になると繰り返し、それは、お互いの生活が変わる時まで続いた。
お読み頂きまして有難うございます。
ハルテッドのお話は今回で完結です。
日にちが話数で少しずれるので、分かり難い部分もありますが、ハルテッドとシェリスタが知り合ってから13日間の出来事でした。
次回は未定ですが、またお会い出来ますようにお祈りしています。
お暇な時がありましたら、どうぞ覗いてやって下さい。




