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ともだちのいないトラ  作者: 美森つばさ
9/15


細く悲しげな三日月 星の瞬きが聞こえそうな静かな夜でした。

トラは芝草の上に寝転がり星を眺めながら 空想していました。星の光をピアノの音にしたらどんなだろう とか。トラの心はとても穏やかです。柔らかな風も心地いい。

すると 遠くの方で赤ちゃんが泣いている声が かすかに聞こえました。赤ちゃんは火がついたように泣いていて トラは起き上がって赤ちゃんの泣き声を確かめました。

「赤ちゃん泣いている。どうしたのかな。眠れないのかな」

赤ちゃんの泣き声にトラもちょっと悲しくなってしまいました。


町ではヤギのお母さんが赤ちゃんを抱っこしておろおろしています。赤ちゃんがどうして泣いているのかわかりません。おむつも替えました。ミルクもあげました。でも赤ちゃんは泣いたままで その声はだんだんと大きくなるばかり。外の空気を吸わせようと家から出たら近所の人に「うるさい」と怒鳴られてしまいました。そのせいで余計泣きやまない赤ちゃん  困り果てるお母さんヤギ。周りの家の人たちは 目を覚ましてしまい 迷惑そうに窓からお母さんヤギを見ます。泣き続ける赤ちゃん 周りの人たちの冷ややかな態度 お母さんヤギは どうしたら良いかわからず町はずれまで歩いて行きました。それでも泣きやまない赤ちゃん。

お母さんヤギも泣きたくなりました。

そしてとても疲れてしまいました。

何もかもに とても疲れてしまいました。

お母さんヤギの目から涙がぽろっと落ちました。

すると どこからともなくピアノの音が聴こえました。顔をあげ聴き入るお母さんヤギ。

優しい優しい音色。すべてを包み込むような穏やかな曲。

お母さんヤギの心がすっと落ちつきました。それを感じた赤ちゃんが泣き止んでお母さんを見つめます。柔らかな表情のお母さんを見て赤ちゃんは安心したのか ピアノを聴き始めました。町の人たちにも聴こえました。赤ちゃんの泣き声に目を覚まし ギスギスしていた気持ちが一気に変わります。ピアノは子守歌になり 赤ちゃんが眠りました。町の人たちも眠りにつきました。お母さんヤギも家に帰ります。ピアノはしばらく続き お母さんヤギも優しい音に包まれて眠りました。

それは 夜想曲のようなゆったりとした曲 星の輝きのように澄んだ音。




泣いている赤ちゃんのために 何か出来ないかと考えたトラは 少しでも安らげるようにと願いを込めてピアノを弾きました。聴こえるかどうかなどわかりません。でもトラは自分に出来ることをやりたかったのです。やらずにはいられなかったのです。

精霊たちは トラの優しい心に胸をうたれて 自分たちもトラのために何かしたいと思うのでした。

風の精霊が動きます。トラの心のこもった音色を 風で町に届けます。みんなに聴こえるようにと 風を駆使てピアノの音を運びました。上手くみんなに届けられたのを確かめて 風の精霊は他の精霊たちのもとへ戻りました。精霊たちは風の精霊を称賛するように抱きしめました。

そして『時』が近づいているのを確信するのでした。


お読みいただきありがとうございます。

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