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ともだちのいないトラ  作者: 美森つばさ
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トラのピアノは日を追うごとに上達し どんな曲でも弾けるようになりました。それだけでなく 音はとても優しいのに 曲に合わせて感情があるかのように音色が変化していきます。トラは まるでピアニストのようです。トラはピアノを弾くことが大好きで 毎日が充実していました。目に映るすべてのものは輝いて見えて それらは愛しいと思えました。トラの心に起きた変化は 周りからは見えないものでも とても大きな変化だったのです。

“世界はこんなにも輝いている。空も木も花も水も とても美しい。その中で過ごす僕は なんて幸せなんだろう”

トラの優しさに満ちた心は果てしなく広がっていきます。



少し曇ったお天気のある日 ガコン とピアノのついた古びた木から大きな音がしました。

お花畑にいたトラは大きな音に驚いて すぐに芝草の広場に向かいました。

ピアノのついた大きな木を見て トラは驚きました。木の高さが少し低くなり 木の中が崩れて空洞になってしまいました。

トラは木が枯れきってしまうのが悲しくて 思わず木に抱きつきました。確信はなくても なんとなくはわかっていました。この木がピアノを教えてくれていることを。

「逝かないでください」

トラは泣きながら言いました。

風の精霊・水の精霊・火の精霊は地の精霊に寄り添っています。地の精霊は歳をとり過ぎて空の向こうへ帰る日がそう遠くありません。トラの泣きながらはなった言葉は 地の精霊を奮い立たせます。

「大丈夫。皆さんもう少しだけお手伝いおねがいします」地の精霊は言います。

「どうしても成し遂げたいことがあるのです」

「もちろんです」精霊たちは大きくうなずいて 地の精霊を抱きしめました。

火の精霊は崩れた木の余分なところだけを焼き 水の精霊はそれを鎮火 風の精霊は燃えかすを風で取り除きました。地の精霊はピアノの鍵盤を光らせて トラを呼びました。

鍵盤が光るのを見て トラは少しホッとしました。ですが小さな不安は心に留まるのでした。トラは木を見上げます。古びた木をそっと撫でて トラはピアノに向かい椅子にすわりました。鍵盤は光ってトラを誘いますが なんだか弾く気になれません。でも 誘いを断ってはいけないと思い トラは弾くことにしました。

弾いてみると驚きました。古びた木の崩れたところが ちょうどパイプの役割を果たし ピアノの音が空の果てまで届いていくのではないかと思うほど響くのです。

地の精霊が選んだのは 悲しげだけど温かみのある優しい曲。それがトラの心と一体になり 奏でる音はお日さまの光のように柔らかな音。

精霊たちは 音の美しさに魅了されながら聴いています。心にも響くその音は 地の精霊とトラの心そのもののように思えるのでした。


お読みいただきありがとうございます。

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