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ともだちのいないトラ  作者: 美森つばさ
13/15

13.


早朝 まだ夜が明けるか明けないかの時間 子供たちと先生は「校外学習」と銘打って トラの所へと出発しました。

先生の胸の奥には不安はありましたが 嬉しそうな子供たちを見ているとそれも少し小さくなりました。

険しい山道を脇目もふらず ずんずん歩いて行く子供たち。先生は子供たちがトラに会いたくてかんばっていることに気づきます。“そんなに会いたいと思えるトラってどんな人なのかしら?”先生も興味津々です。でも 気になることがあります。実はもしもの時のため 信用できる町の人 数人に声をかけ 後をついてきてもらっています。その人たちには 子供が危険な目に合わないかぎり 出てこないで欲しい とお願いしています。信用できる大人とは言え やはり他言したのは間違いではないかと 先生は不安に思っています。

大人でも疲れてしまう長距離を 子供たちは会話もせず進みます。どれだけ遠いかも知っている子供たちですが 疲れも見せずに黙々と歩きます。

子供たちが目印にしている大きな岩が見えました。

「今日は前よりも早いぞ。もう少しだ!」

子供たちは互いに励まし合いながら進みました。先生は息が上がってしまいゼーゼーしてます。そんな先生をお構いなしに進む子供たち。先生は必死について行きました。

そんな状態になり かなり時が過ぎた頃 子供たちが急に走り出しました。先生も慌てますが足がもつれて限界です。

芝草の広場に降り立つ子供たち。

「いない。トラさんいないわ」

「そういえば今日はピアノ聴こえてこなかった」

「会えないのかな?」

子供たちは不安に押しつぶされそうになりました。


子供たちは辺りを見渡し トラの姿を探します。せっかくここまで来たのに 会えないのは残念すぎます。泣きそうになる子もいました。先生がやっと追いついて子供たちの傍に立った時 子供たちとは向かい側の木々の間からトラがゆっくりピアノに向かって歩いてきました。

最近のトラのお気に入りは お花畑でひろった花びらを集めて ピアノの周りに広げること。そうすると 花の香りがしてとっても気分良くピアノが弾けるのです。この日も トラは散った花びらを丁寧に集めて たくさん抱えていました。

「トラさん!」

子供たちがトラに向かって一直線に駆け出しました。

後から来た大人たちが慌てて飛び出そうとしますが 先生が止めました。

「大丈夫です。少し様子を見ましょう」



それは精霊たちの ちょっとした悪戯。

トラに駆け寄る子供たち。その勢いで 抱えていた花びらが宙に舞い トラと子供たちを包む。花びらにとまった小さな水の玉は 太陽の光を浴びてプリズムのような七色の輝き。トラの美しい毛は眩しいくらいに金色を放つ。優しく子供たちを迎える穏やかな表情のトラ。群がる子供たちはトラから夢のカケラを受け取るかのように目を輝かせている。微笑むトラは まるで天使のよう。舞い降りる花びら。

それは美しい絵画を見ているかのような場面。


精霊たちがくすくす笑います。


あまりにも美しい光景に 大人たちは見とれていました。

先生の目からは涙があふれていました。あまりも美しいものを見たせいで心が揺さぶられ 涙が止まらなくなっていました。

その様子を見て 精霊たちはまたくすくす笑うのでした。





お読みいただきありがとうございます。


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