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ともだちのいないトラ  作者: 美森つばさ
10/15

10.


翌日 町ではみんな爽やかな朝を迎えました。

「昨夜 聴いた?」

「聴こえたわ。赤ちゃんの泣き声でどうなるかと思ったけど ぐっすり眠れたわ」

「いい曲だったよ」

「ホントたすかった。おかげで今朝は清々しいね」

「でも どこから聴こえてくるのかしら?」

「それに 誰が弾いているのだろう?」


学校でも子供たちが昨夜流れてきたピアノの話でもちきりです。

「赤ちゃんの声が大きすぎて起きちゃったんだけど とってもきれいなピアノの音が聴こえて眠くなって寝ちゃったの」

「僕は赤ちゃんの声にも気づかなかった。僕はずっと寝てたから」

「俺も一回寝たら起きない。でも俺も聴きたかったなピアノ」

「風に乗って聴こえて来たって お母さん言ってたわ」

「私もまた聴きたいな。どんな人が弾いているのかしら?」

「それ気になるよね」

「どこから聴こえてくるのか探しに行きたい」

「それいいね。みんなで行こうか?」

「でもどこから聴こえてくるのか 全くわからないよ」

「じゃあ 次にピアノが聴こえたら どっちから聴こえるか良く聴こう。それからやってみよう」

「そうしよう!」


子供たちは何日もかけてピアノの音の方向をさぐりました。大まかな方向を掴みましたが距離がわかりません。ただ うんと遠い事だけはわかっています。

計画を練り始めました。とりあえず早朝に出発して行けるところまで行ってみる。日が傾く前には町に引き返す。大人たちに知られないようにコッソリやる。

1回目 森にピクニックに行くと言って子供たちは町を出ました。しかし その日は曇り空でお天気があまり良くなかったせいかピアノの音が上手く聴こえず 方向を見失い早々に断念。

2回目 ピアノがとても良く聴こえる日で 行けるところまで進みました。ですが 遠すぎてたどり着けず。

3回目 2回目のおさらいをしつつ更に進むも たどり着けず。

4回目 3回目の行き方を最短で進み 午後になってしまったけど目的地を発見。



ピアノの音が子供たちを導きます。

広い芝草の広場。奥にそびえる古びた木。その根本にあるピアノ。

奏でるトラの毛は太陽の光を受け金色に輝く。

指先から現れる音は驚くほど優しさにあふれ 心に響く。

子供たちは瞳を開いて立ちつくし 見つめます。トラのその姿は神さまの使いのように立派で 子供たちには遠い存在のようにも思えました。演奏するトラの顔は斜め後ろからしか見えませんが とても穏やかな優しい表情。

子供たちは言葉も交わさずただただじっとしてトラを見つめていました。


お読みいただきありがとうございます。

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