ここに来て最大の失態です
体調悪めなので2日に1回投稿になってます。許して
道中バッタリ遭遇した罪なきなワイルドバニーは何もドロップしなかったが、こいつの肉は30個ほどあるのでもういらない。
さらに動きづらくなるのに眉をひそめつつ声のした方向へと静かに歩いていく。
「たしか、こっちの方だった気が...あ、いた。」
丁度背の高い草叢で隠れる形になってしまったが、確かに獣道を進む男女、男一人に女二人という羨ましい編成の……頭の上に名前が表示されていることからプレイヤーである三人組がいた。羨ましさから男に火の玉でもぶち込んでやろうかと思ったが、その気持ちを抑える。
「えっと、片手剣持ちの男に杖持ちの魔法使い?それに最後は...ありゃダガーか?」
3人組はしっかりと男が前衛、他は後方支援と遊撃をこなしているいいパーティーで、初日から戦闘を楽しんでいるようだった。
上手く行けば調理方法を知れるかもしれないと思って近づいたのだが、さてどう話しかけたものかと悩んでいると、どうやら三人組がモンスターと遭遇したらしい。
「このモンスター可愛いね!」
この時点でゴブリンやオーク、あとはボアやコボルトも除外できる。
「これもモンスターなのかな?・・・猫みたいだけど。」
猫か、俺の知ってる猫はヴォーパルキャットだけだけど他にもモンスターいたのかな? でも、割とレアっぽいモンスターだったしそんなピンポイントでくるわけ...。
「この子二足歩行なんだね〜」
ヴォーパルキャットじゃねぇか!!ってか男喋れや!
草むらから顔を出せば、よりにもよって魔術師の少女が無警戒にヴォーパルキャットへ近づいており、数体を倒した経験から、あの首刈り猫が攻撃のそぶりを見せている事がありありと理解できる。男なら見捨てるところだが、
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「は?」
「へ?」
「ほ?」
草むらからただの初期装備の雑魚と思わしき人物が飛び出し、ヴォーパルキャットを多弾のフロストバレットで穴を開ける。猫側もまさか横から来るなんて予想もしていなかっただろうから体制を立て直せず全弾命中。1発がクリティカルに当たったらしく、HPは一撃で削りきり、ポリゴンとなって爆散。アイテムはなしかー。
さて、ここで状況を整理したい。みんなも今何が起こったかを考えよう!
一、和気あいあいとパーティープレイを楽しむ。
二、可愛い二足歩行の猫を発見する。
三、横からでてきた初心者に可愛い猫を狩られる。
四、キレる
わーい整理成功だ! 相手はなんて言ってくるかな?
「横から奪うなんてマナー違反じゃないですか?」
デスヨネーメンドクサクナルヨネ
おお、男は助ける気無かったから死んでくれて構わんかったぞ?最初に口挟むのお前なの許さんからな?
「いやいや、助けてくれたかもしれないじゃん。何でしたのかぐらい聞いてみようよ!」
お?桜色の髪の少女Aは優しい。ここで弁明するか。
「あ、あの...」
「いや、明らかにそっちが悪いでしょ。」
あ?だからてめぇは口出すなよ。話聞こうと促してくれてるんだからそのまま従っとけ。
そして最後に茶髪の少女Bがやっと口を開ける。
「いきなり割り込んでくるくらいだしなんかあるんじゃないの?何も無いのにパーティーには突っ込んでこないでしょ。」
よく言った。その通りだし、多数決で勝ちだ。男は引っ込んどけ、ゲームからもな。
「さっきはいきなりですまなかった。悪気はないんだが、ちょっと聞きたいことがあるのにあいつが襲おうとしてるもんだから。」
「え?あのモンスター強いんですか?あんな可愛いのに...」
「あぁ、ここら辺にいる中では1番強いと思うよ。まぁ、首ばっかり狙ってくるからフェイントに気をつければ楽ではあるけど。」
「あの、その……危険なモンスターから助けてもらったのに、すいません……」
「いやいや、2度目になるけどこっちもすまんかった。」
何とか「可愛いモンスターを虐殺した極悪プレイヤー」から「極悪なモンスターから助けてくれた可愛いプレイヤー」に評価を変える事ができた俺は、って可愛いわけないわ。「ただの初心者プレイヤー」に評価が変わったので三人に頭を下げる。
片手剣のの男がショウ、ダガーの少女がカエデ、魔術師の少女がリナという名前らしい。
よく聞いてなかったからわからなかったが、このゲーム見た目は好きにカスタムできるが声だけは変えられないようだ。
そのため見た目幼女でも声を発するとおっさんバレ、ということはザラにあるらしいのだが、この三人は声的に中学生といったところか。男は生意気だったな。
「ええと?ケープロさんはここでずっとレベリングを?」
「まぁ、そんな感じだな。こういうゲームは初めてだから動きになれるついでにモンスターの動きを全部覚えちゃいたいって言うのもあるね。」
「凄いですね!私たちなんて始めたばっかりでまだまだなのに。」
「ここらのモンスターは割と動きが単純だから慣れれば結構いけるよ。あの猫はフェイント注意しながら狙ってくる首に注意。攻撃は首だけっぽいから首をガードしとけばどうにかなると思うよ。」
「それって簡単な事じゃないと思うんですけど...」
「同感。」
「あ、それより聞きたいことがございまして。肉の消費ってどうやるか分かります? ファイアボールで調理しようとしたんだが、黒焦げになっちゃって。」
この言葉を発すると空気が冷たくなったかのような風が流れ、3人は目を見開きこっちを見た。そして、
「え?」
「え?」
「は?」
いや、最後のやつ合わせろよズレちゃってるじゃん。そんなことよりなんで当たり前に知ってるみたいな顔してんだ。俺が変な人みたいじゃん。
「もしかして、最初のジョブ選択のところ受けてないんですか?」
「へ?」
ジョブ選択あるのかよ、ナビゲートつけとけって...
え?出てた? ソンナノシラナイヨー
主人公はゲームだとテンションがハイになるタイプの人間です。リアルは微妙に大人しめ、だけどやりたくないことには理由つけてしっかり反論するタイプですね。
まぁ、最終的にはやるようなやつ。みたいな感じです。