初戦闘はいつものアイツでした
そこまで見たくない通知が来た気がするが、初日からPKするやつなんていないと信じてゲートをくぐりぬけた。すると、左上にうっすら見えていた自分のHP等のバーの上にあった盾のようなマークが消えた。これが圏外へ出たというメッセージなのだろう。
とりあえず、周りに色々パーティーやソロプレイの人が多いので少し移動することにしたのだが、300メートルくらい移動しても敵は出ず、プレイヤーばかりだった...。
「こんな人いんのかよ...初日からやる気満々かよ...」
さっき優劣がでていたのもよくわかった気がした。そりゃこんなに人が密集してたらリポップするにしても足りなくなるのは納得出来る。
そして、プレイヤーが見えなくなってくる程度まで少し小走りで移動することにした。
かれこれ10~15分走っただろうか、距離としては3キロくらいか? プレイヤーが見えなくなり森に静けさがでてきた。ここで驚くのは、疲れているけどそこまで疲れていない。いつもは10分も走れば息切れして手のひらを膝に当てて下を向くが、少し疲れたなー程度で済んでいる。
「ギギャッ!!」
「ん?」
栄えあるアビスクロニクル。いや、フルダイブの初戦闘の相手はファンタジーというジャンルにおいてドラゴンに匹敵するメジャーモンスター。
オトナしか見れないファンタジーだとやたら強くなる緑肌の醜悪な人形モンスター……
「ゴブリンか。」
「ギ、ギギャー」
相手の頭の上に名前が表示される。確認したが結局ゴブリンだった。プレイヤーより小さめの人型モンスターは戦闘要素のあるゲームではほぼ確実に現れるタイプの敵MOBだ。今までやってきたコントローラー型のファンタジーゲームでも、ほぼ登場してきた。
「おっと。」
「ギ、ギャッ!?」
分かりやすい挙動をしっかり見て余裕のある回避をする。
相手の武器は片手斧で、攻撃する時は少し振りかぶるので後ろに回避で余裕だった。
「さて、反撃しますか!」
2、3回相手の攻撃を後ろへのステップで避けたところで相手が少しよろけた。振りかぶりすぎたのか、前に行き過ぎている。こういう所を見て物理エンジンが働いていることに感動していた。
取り敢えず、相手がよろけたので杖を掲げる。そして、天から私のことを見ているゲームの製作者に向けて言葉を放つ。
「ファイアボール!」
杖の先端から火花が飛び散ったかと思うと、そこから火球が生み出された。そして、標的へと放たれた。
「ギィヤーーーー!」
炎に包まれた一撃で倒せたのだろうか、ゴブリンは断末魔を上げ、泡のようにポリゴン状に分解され消えた。
このゲームは剥ぎ取る系のゲームではなく、アイテムがポップするタイプのゲームだと理解する。そういえば、昔に剥ぎ取る系統のゲームがリアル過ぎて刑事裁判になったという事件を見た気がする。そういう面での配慮ということなんだろうな。
「ドロップは、おっ?」
基本的に全てポリゴンになって消滅する、つまりその場に残ったものはドロップアイテムということだ。
お世辞にも上等とは言い難い、木の棒に石を蔦紐で巻きつけただけの手斧を拾い上げると、それは分解されてインベントリへと収納される。
「ほ〜、『ゴブリンの手斧』か。」
STRに補正がのるが、もう耐久値がそこまで高くない。それに、斧は使う気はない。ということで詳細をざっくり確認して仕舞う。
フルダイブ初戦闘で分かったことは3つ、1つはスキル名を言えば反応してくれる。2つ目はモンスターは視認すると名前が出てくる。最後は敵はポリゴン状になって消え、アイテムはそこにドロップする。まぁ、このゲームだけかもしれないがよく理解した。
「さて次のやついきますか。」
次の敵を探すために移動を開始した。
————————————―――――――――――――――
初戦闘後少しの間に、ぴくぴく動く耳が特徴だった「ワイルドラビット」体は青色で四足歩行だった「ボア」と2匹戦った。(まぁ、2回目のボアは草むらからファイアボールを打って杖で5、6回叩いた感じだが。)
もうMPが無くなりそうだなとおもったら、レベルアップのファンファーレが鳴った。
そしてステータスを確認する。
――――――――――――――
PN KPro
所持金:3600リル
Lv:1→2
HP(体力):32(+4)→36
MP(魔力):14(+2)→16
STR(筋力):8(+1)→9
VIT(耐久力):12(+1)→13
INT(知力):16(+2)→18
AGI(敏捷):9(+1)→10
DEX(技量):9(+2)→11
LUK(幸運値):7(+1)→8
SP:(8)
メイン
魔法熟練度 3
パッシブ
索敵 熟練度2
スキル
ファイアボール
アイスバレット
ショックボルト(NEW)
装備
右:ノーマルロッド(INT+2 MP+2)
左:無し
頭:無し
胴:無し
腰:無し
足:無し
アクセサリー:無し
――――――――――――――
となった。魔法熟練度が知らないうちに2を飛び越え3になっていたが、これは仕様だろう。それに、ステータスポイントを振らなくても一応ステータスは上がるらしい。そして、レベルが上がるとMPは全回復することも分かった。これは有効活用していきたい。
「さて、次行きますか!」
もう辞めるなんて頭はどこかに置いてきた。このゲームを骨の髄まで楽しんでやるわ!
結局自分はゲーマーだなと思い、目の前に現れたウサギが経験値に見えているのであった。