親友とは時に厄介なものです
テストも終わり、テスト結果は結局余裕で赤点回避。全体の平均点は7割程度で及第点だった。そして、土曜の学校を終え昼過ぎに家に帰ると謎のものが届いていた。
―――――――――――――――――――――――――――
今日送られてきたものに対しての謝罪が何もないので、俺.影浦利樹はキレていた。
仕方なく電話をかけることにした。俺が10歳くらいのときから変わらない形状のスマホを手に取る。
少しイラつきながらも落ち着いて、電話帳をスクロールしておの欄を選択した。そして、いつも色々な物送ってくる腐れ縁のやつを見つけ電話をかける。
「で、これはなんだ。」
電話越しにも伝わるように威圧的に放たれた言葉は、相手にも伝わったようだ。
「いやー、てっきり夕方まで何も無かったので許されたものかと...。 」
「な訳あるか! どうしたらいきなりゲームがハードごと送られてくるなんてことが起きるんだよ! それにこれ、今日発売の手に入りにくいあれじゃねぇか!」
友人である大鳳 千里から送られてきたダンボールの中には、いかにもファンタジー感のある服に身を包み、剣や杖を持った男女が数人描かれたパッケージがあり、それにはABYSSCHRONICLEと鮮やな文字で書かれているのが目に取れる。
先週何となくで見ていたラジオのゲームが来るなんて思わないし、まさかハードまで届くとは誰が想像つくだろうか。
「で、やろうぜ! ハードが高いからやらないって言ってたもんな、ハードがあればやるよな! 」
「いや、別にやるとは言ってないけど。でもまぁ、やってみるかもな。それでそっちは」
「すまん、月曜テストあるから物理やらないといかんのよ。ほんとコイルのリアクタンスとかめんどくさいわ...」
「いや、コイルのリアクタンスなんてωL考えて、電荷の動きを妨害するものって頭に入れてたら解けるだろ...それに、導体棒の問題も無理とか言ってなかったか?」
「うるさいなぁ、何とかするから。そのためにも相棒教えてくれ!」
俺は電話越しに最高の笑顔を作って
「却下」
「酷い!あ、ちょっとまっ」
相手の言葉を最後に俺は電話を切った。
コール音がうるさく鳴っているが、無視でいいだろう。
「やるとは言ったけどどうしたもんかね...」
やることを躊躇う理由は2つ、今までフルダイブ型のゲームに潜ったことがなかったため不安が残ること。今までは、TPS、FPS系統のゲームや、対戦機能のあるRPGばかりだ。
だから、慣れるのに時間がかかるだろうというのがあった。
もうひとつは、電気代だ。
俺は今、一人暮らしの真っ最中。光熱費等を自分で払うのが条件で上京した。バイトもあるしやる時間がそこまでないというのもある。
「まぁ、すぐ飽きるだろうしやってみるか...」
わざわざハードまで送ってきてくれたんだし、やらないで返したらそれはそれで申し訳ないし。この、昔から断れない性格を早く直したい...。
封を開けたばかりの頭に装着するタイプのハードは、初期設定がめんどくさいということを聞いていたが、それはダイブしてからわかる事だしそれはいいだろう。
「さて、やりますか...」
機器を頭にセットし、電源を入れた。しかし何も起きない。
「ん?なんで?」
機器を外して見直してみるとダイブする前の初期設定が必要なようで少し恥ずかしくなる。
毎度こういう所で抜けるのが悪い癖だなと思いつつ、最初に読むこと!と書かれたマニュアルを開き初期設定を始める。いや、なんでこんなにわかりやすいフォントで目立つように書かれたやつに気付かないんだよ! ほんとに自分が恥ずかしい。
マニュアル通りしっかり初期設定が終わったところでベッドに転がり込む。横たわると両手でヘッドギアを持ち上げた。明らかに銀色の光沢が目立つヘッドギアに少し緊張する。1度下ろし、先に手に装着するタイプの機器も付ける。
「じゃあ改めて」
頭にヘッドギアを装着し、電源を少し躊躇しながらも入れる。初のダイブに緊張しているが、不安と興奮で速まる心臓のビートを押さえつける。息を整え、目を閉じゲームを始めるための一言を放つ。
「フルダイブ!」
閉じた瞼から差し込んでいた朧な光が、さっと消える。目から入ってくる情報が完璧にシャットされた。
主人公は18歳
友人は年齢伏せておきます。