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第96話 ティアネーの森の異形(前編)

 数日前までは侵食されていたティアネーの森。


 何事にも元凶があるのだ。


 つまりこの侵食と言う現象にも元凶がある。


 その元凶とはこの森の中央付近にある日突然現れた異形だった。


 その異形を表すのなら──継ぎ接ぎ。だろう。

 異形は様々な生物の部位を持ち、適当に繋ぎ合わせたキメラだった。


 キメラの身体のあちこちから生えている魔物の頭部などの体の部位はこの森に生息する魔物であり、どれもこれもが黒に侵されておりまるで焼死体の様で、その表情を苦痛に歪めていた。



 元々、人工物だった現キメラは自我を得た。


 自分はなぜここに居るのか。なぜ産まれたのか。


 自分の存在意義を探し始めたキメラは、その場に立ち止まり、無意識の内に自分の住みやすい場所を作っていった。


 やがて、目に見える範囲を心地よい黒に変えていたキメラはとうとう自分の目標を定めた。


──もっとこの心地よい場所を増やす


──自分を認め、自分の存在を許してくれるこの黒で埋め尽くす


 そう決めたキメラはその場に座り込み、侵食と自分の感覚を繋げ、目に見えない範囲をも黒で侵食していく。

 産まれて間もないキメラはこれを本能で実行していた。


 侵食から逃げる生物を執拗に侵食して呑み込み、自分の身体に付け足していく。

 こうする事で、どうしようもない孤独が満たされていた。


 やがてかなりの範囲を侵食したキメラは自分の、心地よい空間に踏み入る者に気付いた。


 キメラは不快に思ったが、それだけだった。


 キメラはこの者達も心地よいこの空間を求めてやって来たのだと思った。 ならば仕方ないと思い見逃した。

 逃げる生物ならともかく、自分と同じく安息を求める者は侵食する気にならなかったのだ。


 日がたつに連れ、その者達は数を増やしていった。そして一ヶ所に大勢が留まり移動をしなくなった。


 しかし突然その大勢の生物は移動を始めた。それ以降ここに入ってくる生物は減った。


 キメラは疑問に思った。

 なぜこの空間に来なくなった? こんなに心地よいのに。もしかしてここより心地よい空間があるのか?


 そんな事を相も変わらず座り込みながらずっと考えていた。

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