第95話 クルト 2
初めての魔物討伐に緊張しながら挑んだけれど、結構簡単に行えた。
俺は魔法を放って魔物を討伐する。クドウさんと二人きりになれる機会を探りながら。
フレイアさんと話していたクドウさんが一人になった時、俺はクドウさんに話しかける。
「教室ではごめんなさい!」
「教室?」
「はい。俺とクドウさんが初めて会った時です。俺は白いローブ達の話をちゃんと聞かずクドウさんに遠回しに死ねと言ってしまいました! ごめんなさい!」
「あぁそれか。別にいいよ正直どうでもよかったしな」
「クドウさんが怒って無くても俺が俺を許せないんです! ごめんなさい!」
「あーあーもう良いから、許す。もう俺とお前は友達なんだ。その件は忘れて仲良くしような」
「……! は、はい!」
なんとあんなに酷い事を言った俺をあっさり許してくれました。それどころか、これからも仲良くしよう。だなんて。
俺はクドウさんの優しさに甘えて、これからもずっと友達でいようと思いました。
それからも俺達は学校で授業を受け、放課後は冒険者として活動をしていました。
ある日、その習慣に綻びが生じました。
ティアネーの森から危険な魔物の気配が漂って来ていました。
ラモンさんとガレットさんはその魔物を避けるか、魔物を倒すかで言い合いを始めました。
戦うと言う意見を最初に言い出したアデルは思い詰めたような表情をしていたので俺は、昔からそうしているように慰める。
その後も二人の言い争いは激しくなっていきました。
やがて、一人で森へ向かったラモンさんを、俺は焦りながら見届けました。
この時俺が真っ先にラモンさんを追いかけなかったのは、俺にはアデルを慰めると言う役目があったから。
俺は死地へ向かった友達よりも幼馴染の側にいるのを選びました。
小雨が降り始めると、思い出したかのようにガレットさんが走り出す。それに続いてラウラさんとエリーゼさんも走り出しました。
「行かなくていいの? アデル。」
「……だって……でも……ボク達じゃ敵いそうにないよ……」
「大丈夫だよアデル。クドウさんがいる」
俺はクドウさんに頼りました。短い間だったけどクドウさんの強さは知っている。なんせ黒龍を負かして手懐ける程ですから。
ハッとアデルはクドウさんに視線を向ける。俺も一緒に視線を向ける。
どうしたんだろう?
俯いて棒立ちになっているクドウさんをフレイアさんが呼び掛けています。
俺は何の気なしににアデルの顔をチラリと一瞥しました。
アデルの顔は一見普通に見えるけど、その瞳の奥では怯えが揺らめいていました。
俺は不思議に思いましたが、当然の事だと思い直しました。だって、強力な魔物の恐怖に晒されているのですから。
俺達はクドウさんの側に寄って、フレイアさんと共に呼び掛けを始めました。