第88話 喧嘩
昼飯を食い終わった俺とフレイアは噴水広場でラモン達を待つ。
程無くしてやってきたラモン達といつもの手順を経てティアネーの森へ行く。
何だ?ティアネーの森が変だ。何か…魔物が怯えているような……混乱しているような……
「ねぇクドウさん。なんかおかしくない?」
フレイアも何か感じ取ったようだ。
「…今日も色んな魔物を狩って金を稼ぐぜ!」
「ふむ。ラモンはもう少し謙虚になった方が良いぞ?」
「そうですわ。そんな欲望だだ漏れじゃ怪しい人にいいように扱われますわよ!」
「そ、そうですよ。それに、その、みっともなく見えます……!」
「あははは。皆今日も元気だね」
「俺はこれぐらい騒がしい方が落ち着きますね」
こいつらはなにも感じ取っていないらしい。
「ねぇみんな。ちょっと待ってくれない? なんか森の様子が変よ」
「…そうか? 言われて見ればなんか。強そうな魔物気配がする……?」
言われて気付いたのか、全員顔を引き締める。
「今日は別れて行動しない方がよさそうだな。そして、気配のする方向には近付かないようにしよう」
ガレットが冷静に判断する。
「そ、そうですね……」
「賛成ですわ」
「そうだね。でも、もし強力な魔物だったら被害が出るかも知れない。どうにかボク達で対処できないかな?」
「危険だよアデル。まずは騎士団に報告するべきだよ」
ガレットに同調するラウラとエリーゼ。 魔物をなんとかしようと言うのがアデル。流石勇者。 アデルに意義を唱えるのがクルト。
俺としては、被害なんか知ったことでは無いが強い魔物と言うのは興味がある。俺が強くなるために喰うのもいい。
つまり俺はアデルに賛成だ。
「…俺もアデルに賛成だ」
ラモンがそう言う。
「どうしてだ? ラモン」
「…そんなの決まってるだろ。強力な魔物が他の魔物を殺しちまったら俺の狩る分が減っちまうからだ」
「ラモン。そう言う冗談は面白くないし、褒められたものじゃないぞ」
「…冗談じゃねぇよ。俺は本気だ」
雲行きが怪しいぞ。こんなくだらないことで喧嘩なんて止めて欲しい。
「ラモン……お前には道徳が足りないようだな」
「…はっ、俺はお前達貴族と違って金に困ってんだ。そんな状況で他人の事を考えられるわけねぇだろ?」
……ラモン……こいつ……いいな。いい感じに自己中だ。
……そうだ……自己中だ。
…………今の…………俺は………………
「どうしたの? クドウさん?」
「ん? いや、何でもない」
「そう……?」
俺の様子がおかしい事に気付いたフレイアが顔を覗き込んで尋ねるが、俺は何でもないと言って一蹴する。
「あ、あの! な、仲良くしましょう……!」
「危ないですわ。ラウラさん。今のお二人は」
この空気に耐え兼ねたラウラが二人を宥めるが、エリーゼがラウラを引き留める。
「ど、どうしよう。ボクが余計なことを言ったせいで……」
「いや、アデルは悪くないよ。二人とも正しいんだ。だからぶつかってる。危険を避けるのは当然。自分の生活面のためにお金を稼ぐのも当然。ただ、ラモンさんの言い方が悪かっただけだ」
落ち込むアデルを慰めるクルト。
俺は一連の会話を聞き流していた。
…………自己中…………今の俺はそう在るだろうか。 今の俺は──
そうして一度振り払った筈の思考に、俺は再び呑まれていった。




