表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/365

第86話 団長による力試し

 ナタリア襲来からは何事もなく時間が過ぎ去っていった。


 翌日


 今は屋敷に騎士が事情聴取に来ていた。


 客間には俺、フレイア、オリヴィア、ナタリア、レイモンド、その他騎士五人が来ていた。


 俺はありのままの事を話した。一部誤魔化してはいるが。

 拠点を見つけた経緯とか、午前中にこれらの出来事を終わらせられた訳とか……

 それらの質問には全て、勘や、偶然などと適当に答えた。


「大体の事情は聞いてた通りですね。でも、君みたいな子供があんな大人数を相手出来るとは思えません」


 真面目そうな騎士の一人が言う。


「そんな事言われても実際にした事だからなぁ」

「……そこで、です。君の実力を我々が実際に見てみようと思うのです」

「力試しって事か」

「はい。そう言う事ですね」


 なるほどな。それは手っ取り早い。いつまでも本当に君が?等と疑われるのは煩わしいし丁度いい。


 それよりナタリアが横目でチラチラみながら肘でつついてくる。敬語を使えと言う事なんだろう。

 俺は気付かないフリをして話を続ける。


「で? 何をするんだ?」

「こちらにいらっしゃるレイモンド団長とお手合わせを…いいですか?」

「いいぞ」

「分かりました。では、騎士団の訓練所で行いますので皆さん付いてきて下さい」



 

 と言うかわけで騎士団の訓練所へ来た俺はレイモンドと向かい合う。

 他の奴等は訓練所の端で観戦をするようだ。


 この訓練所は結界が張られていて、致命傷受けても死なない限りすぐに回復するらしい。


「ほう、片手剣か。シンプルでいいな!」


 レイモンドは大剣を構えながらガハハと笑う。


 本当は武器なんか使わないんだけど、それも不自然だろう。という事で仕方なく片手剣を持っている。


「ルールはどちらかが降参するか、行動不能になるまでです。くれぐれも相手を殺さないように」


 ここで言う行動不能とは四肢の欠損だ。


「では、始め!」


 その合図と共にレイモンドが走ってくる。 ………と思いきや、レイモンドは棒立ちだ。


「何を突っ立っているんだ? とっととかかってこい」

「ガハハ! これは力試しだぞ! お前の力量を測る前に終わらせてどうする!」

「……それもそうか。 ……ん……なら俺も一瞬で終わらせたらいけないのか」

「ほお! 言うではないか! さぁ来い!」


 俺はレイモンドに向かって走っていく。これは俺の力量を測る為の力試しなので、人間が視認できる程度の速さだ。


「ぬぅっ!?」


 速さに驚いたレイモンドが大剣を構え直す。どうやら真面目にやってくれるようだ。


 レイモンドの前まで辿り着いた俺は勢いに任せて剣を振りかぶる。


「お、重いっ!」


 片手剣を受けたレイモンドは俺の片手剣を受け流し、距離をとる為に俺に蹴りを放つ。

 当然だが、勢いに任せた攻撃をしていた俺は避けられなかった。

 レイモンドの狙い通り距離をとられてしまった。


「ふむ。子供だからと侮っていたが、どうやら間違いだったようだな。ならば本気で行かないと力量を測れなさそうだ。今度はこちらから行くぞ!」


 レイモンドはその巨体に見合わないほど俊敏な動きで距離を詰める。


 普通の人間の癖にどうやったらあんな重そうな鎧を纏いながら俊敏に動けるのだろうか。


 そしてレイモンドは大剣を軽々と振り回し、俺を攻め立てる。砂埃を立てながら次々と繰り返される剣戟。

 こんなのを片手剣で受けるのは得策ではないので俺は回避に徹する。


 ……だが、逃げ回っていても埒が明かないので俺はレイモンドの動きを良く観察して隙を探すが、右へ左へ、上へ下へ、大剣の重量を感じさせないその剣捌きには隙など無かった。


 だから俺は魔法を放つ事にした。

 大丈夫。白ローブ達の魔法を見て一般的な力加減は把握した。


 俺が選んだのは攻撃魔法の中で一番無難な感じがする火魔法。


 俺は回避しながらレイモンドに火の玉を放つ。


「……! ……ふっ!」


 剣を振りかぶっていたレイモンドは身を捩って躱す。

 俺は一気にレイモンドに接近して片手剣を振るう。


 盗賊から奪った【片手剣術】があるので扱い方はなんとなく分かる。


「う、うぐぐぅぅ!」


 不利な体勢をしていたレイモンドは踏ん張りがきかないようで、どんどん体勢が悪くなっていく。


 そして、すぐにレイモンドは尻餅を付いてしまった。俺はレイモンドの首筋に剣を突き付ける。


「……参った」


 レイモンドの降参宣言を聞いた真面目そうな騎士は言う。


「勝負あり! 勝者、アキ・クドウ!」


 これで俺の力量が把握出来ただろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ