第8話 必死の時間稼ぎ
思い切り振り下ろされた棍棒を腕でガードなんかしたらどうなるか。
これがアニメや漫画の主人公なら大した怪我もなく、ガードして、反撃できるだろうけど。これは現実だ。 打撃のために作られた武器で殴られたら骨が折れる……とまではいかないだろうけど、この戦いにとっての障害になるだろう。
実際にLv2程度の紙装甲でまともに受けられるはずなく、痺れて痛みで腕が動かせない。
これは僕がヘタレなんじゃなく暴力とは無縁の環境で育ってきた、一般人だからだと思いたい。
ともかく後一体とは言え、腕が使えない状態で武器を使うコボルトとの戦闘はきつい。
じゃあどうするか?
逃げれないんだから突っ込むしかない!
そう言って走り出して足で蹴りつける。 が、余裕で受け止められる。
……避けないのは手を抜いているからじゃなくて、避けられないからだと思いたい。
そんな希望を抱いて俺はコボルトを攻撃し続ける。
手が動かせるようになるまでの時間稼ぎ。
そんな事をずっと続けていたら直ぐに勘づかれるのは当たり前で……
コボルトは防御を止め、後ろに跳んで距離を取る。
一分は稼げただろうか。
どれだけ稼げたとしても肝心の腕がまだ使えそうにない。
やばいやばいやばいやばいやばい
防御をとる手段がない今、闇雲に攻めれない。 かと言って攻めなければ、僕は一方的にコボルトの攻撃を食らうだろう。
そんな風に僕が焦燥感に苛まれていると、コボルトは部屋のすみに転がっている死体に近づいていく。 僕はその不可解な行動に困惑する反面、安心していた。
時間稼ぎができる。落ち着いて体力の回復もできる。
どんな意図があろうとそれは僕にメリットしかない。
僕はコボルトを観察する。
するとおもむろに死体を掴み
─────囓りついた。