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第79話 スキルによるゴリ押し

 どうやって捕縛されたテイネブリス教徒を探すか。


 あ、結局勝手に出て来てしまった。ナタリアに顔を合わせづらいからサボって捜索しよう。


 俺はそんな事を考えながらフレイアのいる教室へ向かう。



 二年四組の前に着いた俺はドアの側で会話をしている生徒へ話し掛ける。


「フレイア居るか?」

「え……? あ、フレイアさんですか?」


 俺は頷く。すると、その生徒はフレイアを呼びに行った。

 フレイアは生徒から話を聞き、こちらまで歩いてきた。


「どうしたの? クドウさん」

「今日は用事が出来たから学校をサボる事にした。放課後になる頃には帰ってきてると思うから、皆と噴水広場で待っててくれ」

「あぇ……? ちょ、ちょっと待って! よ、用事ってなに?」

「テイネブリス教団を潰す事」

「……は?」

「じゃあそう言う事で」


 そう言い、俺は踵を返す。


「ちょ、ちょっと待ってよ! ……あの、えっと……私の護衛はどうするのよ?」

「…………出来ないな……」

「そうよね……? ……だ、だから、私も付いていくわよ! あんたが私から離れるなら私が付いて行ってあげるわ!」


 そうか。じゃあ心置きなく行動出来るな。それに、フレイアが居て不都合になる事は無いだろうし別にいいだろう。


 フレイアには他のみんなにもこの事を伝えて欲しかったが、放課後になる前に片付けてしまえば良いか。


「……分かった。じゃあ一緒に行こうか」

「えぇ!」


 俺達は人がいないところまで行き、【認識阻害】を使い移動する。


 学校に攻めて来たテイネブリス教団の司祭と思われる者の匂いはまだ思い出せる。


 こんな事が出来るのは俺が喰った魔物のお陰だ。おそらく[追跡狼]のスキルだろう。

 こいつは追い掛ける事だけに特化しているので遺跡では全く脅威じゃなかった。


 記憶力に関しては……まぁあいつだろうな。


 俺が誰から手に入れたスキルか把握出来ていないのは、単純に多過ぎていちいち覚えてられないからだ。

 記憶力が良くなったのに忘れるのはそのスキル覚える前に手に入れたスキルだからだろう。


 ……走っていたら無駄に時間が掛かってしまうな。


「フレイア、飛ぶぞ」

「えぇ。分かったわ!」


 フレイアを抱えて飛ぶ度に、言われていた事を意識してちゃんと前もって報告する。


 俺達は地形の影響を受けない空にでて、グングン進む。




 やがて見えて来たのは王都にある留置場だ。あそこから司祭の匂いがする。


 俺達は地上に降り立ち、認識阻害を発動したまま留置場に忍び込む。


 フレイアは緊張なのか怯えなのか分からないが震えながら絶対に離れないようにしがみついてくる


 地下から司祭の匂いがしている。


 沢山の兵士が巡回しているがそれらを全て素通りして、地下に向かう。


 地下への入り口は施錠された鉄扉で塞がれていたが、何も問題はなかった。


 俺は指をスライム状にして鍵穴に指を入れる。すぐに俺の指は鍵穴の中を満たした。そして俺は鉄人形の能力【鋼鉄化】を使い、指を固まらせ、そのまま鍵穴を捻る。鍵はあっさり解錠された。

 俺は指をスライム状にしてから引き抜き、人間の指に戻す。


「凄い便利ね……」

「本当にな」


 鉄扉の先には沢山の檻があった。俺は匂いのする檻の前に行き、認識阻害を解除する。


「こんにちは。テイネブリスの司祭さん」

「!? だ、誰だ貴様!」


 俺達の姿が分からないのも無理ないだろう。今司祭は、見知らぬ誰かの聞き覚えのない声色で話し掛けられているのだから。


 そう、俺達は姿を変えていた。


 [幻影のイリジア]と言う、『名前持ち』とは違う種類の魔物の【幻術】と言う能力だ。俺はこの種類の魔物の呼称を『二つ名持ち』としている。

 強さ的にはどちらも同じぐらいだが、若干二つ名持ちの方が強く感じる。


 フレイアには何も伝えていないが取り敢えず喋るなとだけ言っておいた。


「テイネブリス教団の本拠地はどこにありますか?」

「ハッ! お前のような不審者に教える訳無いだろう!?」

「そんな事を言わないで下さい。司祭様。自分はテイネブリス教に入信したいのです!」

「……なんだと……? ふむ。そうだったのか。すまないな。乱暴な事を言ってしまい。なんせこの状況だからな」

「自分は司祭様のお気持ちが痛い程分かります……仕方のない事ですよ」


 俺はそう言って困ったような笑みを浮かべた。


 司祭がこんなに騙され易いのには理由がある。


 [脳味噌の大樹]が持っていたスキルだ。名付けは俺。

 この魔物は文字通り、脳味噌の巨大な木だ。それも人間のものだと思われる。

 樹冠が無数の大小様々な脳味噌でできており、幹が脊髄で出来ているグロテスクな化け物だ。おまけに、こいつを喰ったせいで記憶力が強化されているから未だにその悍ましい姿を鮮明に思い出せると言う、精神的にキツいデメリットもついている。


 ちなみにこの魔物は【思考読み】も持っていた。そして、今使っているのが【思考力低下】だ。この魔物は他にもその見た目通り、脳や記憶に関するスキルを多く持っているようだ。


 思考力が低下した司祭は簡単に本拠地の場所を教えてくれた。普通に考えればこんなところに入信希望者が来るはず無いのにな。思考力低下恐るべし。


 兵士に俺達の事を報告されても面倒なので【記憶消去】で記憶を消しておく。

 思考力低下や、記憶消去は危険過ぎるし面白くないスキルなので、使用は控えようと思う。


 戦闘などに使うと圧倒的に面白味が無くなってしまう。




 じゃあ早く本拠地に行くか。

見ろ。これがご都合主義だ。

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