第75話 調教?
「ぬぅ……」
気絶していた黒龍が目を覚ました。
「やっと起きたか」
「!?」
俺の声を聞くと、怯えたようにビクッと身を竦めた。
「怯えるなよ。お前にして貰いたい事があるんだ」
「……フン。誰がにんげ……貴様の言うことなど聞くものか」
「まだどっちが上でどっちが下か理解出来ないようだな?」
「……上下なら理解している。我が上で貴様が下だ」
こいつは本当のアホなのかも知れない。あれほど手酷くやられておいてこの態度か。
目が覚めた時に怯えていた事から記憶喪失ではないだろうが……
「じゃあしっかり分からせないとな」
「グガァァッ!」
俺はそう言い黒龍の頭の上に転移して、頭を踏みつけた。衝撃で地面がへこむが今更だろう。
「いいか? 俺が上で、お前が下だ」
「違う……! 逆だ……! 我が上だ……!」
「この状況でまだ言うか」
俺は更に頭を踏みつける。
「グァァッ!」
俺は【威圧】スキルと、【傲慢】スキルを発動させる。
「服従しろ」
「~~~ッ!」
恐怖のドン底に叩き落とされた黒龍は地面に水溜まりを作った。
……うわぁ汚い。 ……まぁいいか。こんな醜態晒したのなら流石に心も折れてくれただろう。
それを証明するかのように黒龍の瞳からは覇気が消えていた。
「おい」
「……っ!」
「理解したか?」
「…………」
黒龍はゆっくりと無言で頷いた。
「お前には今からこの森を浄化して貰う。お前が自分の寝床を浄化したみたいにな」
「……分かった」
「じゃあ早く行け。 ……あぁ……俺も乗せてな」
「……なぜ貴様を乗せなければならぬ?」
「お前が逃げるかも知れないからだ」
俺がそう言うと黒龍は力無く身体を起こし、身を屈め、頭を俺に向ける。
俺は黒龍の頭に乗って胡座をかく。
黒龍は俺を乗せ、森を浄化するために飛び立った。
数十分後
俺と黒龍は黒龍の寝床に戻ってきていた。
「……これで良いか? 我はもう行くぞ……」
「は? 何言ってんだ? お前みたいな面白いモノを俺がみすみす手放す訳ないだろ?」
「…………なに?」
「……要はこれからも俺に従えと言っているんだ」
「…………」
「うーんでもなぁ。その大きさだとなぁ……」
「! そうだぞ! 我は巨大過ぎる故、人間の街には居れぬ! だから諦めて…!」
……必死過ぎる。傷付きそうだ。
「……お前が【人化】すればいいだろう?」
「んなぁ!? なぜ貴様がその事を!?」
「ステータスを見ただけだ。あと、さっきのは演技だぞ。俺と一緒はそんなに嫌か……?」
「……な!? い、いや! そんな事は無いぞ!? ま、まま、全く嫌じゃ無い!」
俺の機嫌を損ねないように必死に弁明している。……やり過ぎたか?
「あっそ。じゃあどうでもいいから早く人化しろよ。帰れないだろ」
「……分かったのだ。 ……あぁ……これからずっとこの鬼畜に従い続けなければならんのか……」
「なんか言ったか?」
「な、なんでもないぞ!」
黒龍は慌てて人化する。
黒龍の身体が発光した。その光は段々と小さくなっていき、やがて俺の肩より少し下ぐらいの大きさになった。
光が収まるとそこには、頭に黒い角が二本生えていて、健康的な褐色の肌に、地面まで届く黒い髪、赤い目の全裸の美少女がいた。
「なんだその姿は? お前、雄だろ?」
「ふん。龍種の中でも我はまだ子供なのだ。あと、我は歴とした雌だ! 貴様はどこまで無礼なのだ!?」
「へぇそうだったのか。で? なんで裸なんだ?」
「適当に流すでない! ……龍種が人族のように布を纏っておるわけないだろう!」
「鱗が服になるとかじゃないのか」
「貴様は何を言っておるのだ……?」