第74話 戦闘!黒龍!
右から迫る黒龍の身体を左後方に跳んで躱す。
「ほう。ただの人間の癖に我の攻撃を避けるか」
黒龍はそう言って、地面を突進の衝撃で砕きながら荒々しい攻撃を放つ。その攻撃を俺はひたすら躱し続ける。
あっという間に黒龍の寝床は荒れ地になった。
これはよくて俺が入るのはダメなのか。
「避けてばかりか? 大口を叩いたからには勝算はあるのだろう?」
避けてばかりの俺を不快に思ったのか、話し掛けてくる。
「いいのか? 反撃しても。もう優越感に浸らなくていいのか?」
「おのれ……まだ侮辱するか。良かろう後悔する間も与えず、無に還してやろう」
黒龍はこちらを見つめながら上空に飛び上がる。黒龍は口を大きく開き、上を向く。その口内にはとてつもない魔力が集束していくのが分かる。
ブレスか。
もう飽きる程見た。
そう。俺は遺跡の中で何度か、龍ではないが巨大で翼が生えた蜥蜴──ドラゴンとは戦った事がある。その時に同じような物をうんざりする程見た。
遺跡にいた頃の俺なら脅威に感じられたが、今の俺なら動じる事なく防げるだろう。
「滅びよ! 愚か者め!」
黒龍は口を動かす事なく、俺に思念を送ってくる。
黒龍が勢い良く俺に向かって顔を向け、膨大な魔力が集束されたブレスを放つ。
俺は黒龍に向かって変形した俺の手を翳しブレスを放つ。
俺の手は、ドラゴンの頭部に変形していた。勿論遺跡の中で倒したドラゴンの頭部だ。
俺の手が放ったブレスと黒龍の放ったブレスは拮抗していた。
なぜ最強クラスの龍──黒龍のブレスと拮抗しているのかと尋ねられればそれは、俺も黒龍と同等であるブラックドラゴンのブレスを放ったからとしか言いようがないだろう。
「な、なんだと!? なぜ対抗できる!? いや、何なのだその手は!!」
「驚いたか? まぁ安心して負けていいぞ。だって俺に負けても、ただの人間に負けた事にはならないからな」
俺はそう言う。
「クッ……! ど、どう言うことなのだ!」
「俺がただの人間じゃないってだけだ」
「なにをふざけたことを抜かしておるのだ! 貴様はただの人間ではないか!」
「お前の知ってる人間は変形するのか?」
「……むっ! するわけ無いだろう……!」
「それが答えだ。 ……じゃあそろそろ終わりにしよう」
俺はもう片方の手もブラックドラゴンの頭部に変形させる。
「な!? ま、まさか!?」
俺の行動を察した黒龍は焦ったように狼狽える。俺はその一瞬、黒龍のブレスが乱れた事を見逃さなかった。
隙を突くようにブレスの威力を高める。
「な! しまった! 不味い不味い不味い!! ……グワアアアアァァァァ!!」
黒龍は喚いた後、悲鳴のように咆哮した。
黒龍が東洋で、ブラックドラゴンが西洋です。




