第72話 発生源は別の場所
パーティ登録をした俺達はいつも通りクエストを受けていた。
今は目標を達成したから、自由に狩りをしているところだ。
適当に魔物を狩った後、ボーッとしていた俺はふと気になる事があった。
それは森の奥にいた魔女の事だ。あいつはちゃんと森を浄化しているのだろうか?
気になった俺は魔物を倒しながら一人で森の奥へ入っていった。
森はなんの変化も無かった。
以前と変わらず侵食された葉が生い茂っている。……いや浄化するどころかさらに侵食されているかも知れない。
やはり一人でこれだけの範囲を浄化するのは無理があったか。
魔女の家を見つけた俺は玄関までジャンプする。
本当はジャンプだけで辿り着けるのだが、フレイアを抱えた状態でそれをすると、フレイアが怪我をするかも知れない。だからこの間は飛んだ。
……こんなしょうもない事で万が一があれば大変だからな。面白い奴は大切にしないと。
コンコンコン
一応ノックをしておく。今日はこの間ほど緊急でもないのだから。
「はいですー!」
ノックをしてから程なくして、見覚えのある幼女が家から出てきた。
「あっ……えっと……この間の人です!」
この間の人って……あぁそうか。そういえば名乗ってなかった。
「俺はアキ・クドウだ」
「クドウさんですか。私はティアネーって言いますです!」
こいつがティアネーか。てっきりこいつの親か何かがティアネーかと思っていた。
「ちゃんと来てくれたです。ありがとうです」
「あぁ。それより、やっぱり一人じゃこの森を浄化するのは無理があったか?」
「……あ……はいです。私の聖魔法が通用しなかったです」
「そうか」
参ったな。俺はこいつ以外に聖魔法のレベルが高い奴を知らない。どうしたものか。
「浄化自体は出来るのか?」
「はいです」
「じゃあ単純に力不足か」
そう呟き俺は何の気なしにに窓から外を眺める。
……
…………
………………なんだ?
俺は違和感を覚えた。
もしかして……
そう思い立った俺は魔女の家を出て、屋根にのぼる。俺は俺が来た方向──街道側と、その方向の反対側──ティアネーの森の奥を見比べる。
やっぱり。侵食の度合いが違う。
俺が来た方向は反対側に比べれば若干明るい。見た感じ葉の密度は同じように見える。 ……つまり反対側の方が侵食されているようだ。
「クドウさーん。どうしたですか?」
「すまない。この侵食はこの家が発生源じゃなさそうだ」
「え!?」
俺の言葉を聞いたティアネーは梯子を取り出して来て、屋根にのぼる。
「ほら。あっちとあっち。色の濃さが違うだろ?」
「んー? ……私には違いがよく分からないです」
「そうか。 まぁいい。それじゃあ俺はもっと奥へ行ってくる」
「え!? もっとゆっくりして行かないです!?」
「して行かない。じゃあな」
そう言い俺は対岸へとジャンプする。
「ちょっと待ってです~!」
後ろからティアネーの叫び声が聞こえるが無視する。
そもそも俺はこいつとの約束を守る為に来たのではない。森の様子が気になっただけだ。
俺は本来の目的を果たすため、森の奥へ進む。