第71話 名無しのパーティ
俺は校門まで走る。
「あ、やっときた」
「すまん。呼び出されてた」
「まぁ大体内容は分かるわ。退学にしろ! ……って言ってた人の事でしょ?」
「そうそれだ……いや、そんな事はどうでもいいから早く行こう」
「そうね。今日から私達だけじゃ無いものね」
「あぁ」
「……ちょっと残念」
「すまん。なんて?」
「え!? なんでもないわ! ひ、一人言よ!」
「そうか」
しまったな。焦ってたからか聞き逃した。まぁ一人言らしいし別にいいか。
屋敷に帰って支度してから噴水広場へ向かう。
噴水広場には全員揃っていた。
そう全員。
「親から許可はとれたのか」
「あぁ。実戦訓練だって言ったら渋々許可してくれた」
「わたくしはクドウさんも一緒と言ったらすんなりいけましたわ!」
「わ、私はテイネブリス教団から助けてくれた人も一緒って言ったら不安そうでしたけどオッケーしてくれました」
「そうか。よかったな」
俺達は冒険者ギルドの中にいた。
「そうだ。同じランク同士でパーティを組めばランクの昇格は同じらしいな……パーティ組むか?」
「…当たり前じゃねぇか」
「そうだぞ。クドウとフレイアだけ先にランクが上がったら一緒に活動出来ないじゃないか」
そう言う訳で俺達はパーティを組む事になった。
受け付けの人にパーティを結成するための書類を提出する。
「パーティ登録ですね。えっと……アキさん、フレイアさん、ラモンさん、ガレットさん、エリーゼさん、ラウラさん、アデルさん、クルトさん……の八人でよろしいですか?」
「はい」
「では、メンバーの方はギルドカードを提出して下さい…………はい。全員分確認しました。パーティ名はどうしますか?」
え? パーティ名? そんなのあるのか。しまったな。何も考えてない。
何も思い付かない俺は受け付けの人に、ちょっと考えさせて下さい、と言いみんなに聞く。
「みんな、どうする?」
「…リーダーはアキだから何かアキに関係あるのがいいな……」
「は? いつ俺がリーダーになったんだ?」
「…アキ以外誰が居るんだよ」
「フレイアとか?」
「え!? 私!? ……嫌よ?」
「…じゃあアキで決まりだな」
「…………」
「…なにかある奴いるか?」
俺の無言の圧力はスルーされた。
「はい! はい!」
「…はい。アデル」
「えっと、アキ・レジェンズ!」
「…いいな」
「いや、却下だ」
……なんだそのダサいの……恥ずかしいわ。
「…じゃあ次」
「はい」
「…はい。ガレット」
「ドラゴンスレイヤーズ。なんてのはどうだ?」
「…格好いいな」
「それは周りから自然と呼ばれる系の奴じゃないか?」
うーん。悪くないけどなんか微妙
「…じゃあ……」
「あの、すみません。パーティ名を決めるのは保留に出来ますよ」
ラモンが次の意見を聞こうと口を開くと、受け付けの人が教えてくれた。
「あ、じゃあ保留で」
迷わず保留だ。今ここで話し合っててもロクな事にならないだろうからな。
「はい。では、リーダーの方は?」
あぁ。そうだったリーダーを決めないと。
さっき俺がリーダーだとか言ってたけど俺は認めてないからな。
「みんな、どうす……」
「勿論クドウさんよ」
「…アキで」
「クドウだな」
「クドウさんにお願いしますわ!」
「え、えっと…私もクドウさんがいいと思います……」
「ボクもクドウさんにお願いするよ」
「俺もクドウさんが適任だと思います」
フレイア達は、俺の言葉を遮り俺にリーダーをやらせようとする。
「えっと……クドウさんと言うのはアキさんの事でよろしいでしょうか?」
「…おう。それで間違いないぜ」
ラモンが言う。
「では、アキさんをリーダーとして、新しいパーティを設立致します」
受付嬢はそう言って、ギルドカードを返す。
ギルドカードのパーティ欄には『名無しのパーティ1001』と書かれていた。
この『1001』とはパーティ名が決まっていないパーティの数なのだろう。
つまりこの世界にはパーティ名が決まっていないのが俺達を含め1001組もいるのだ。
うーん……もう少し早ければなぁ……




