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第66話 交流

「アデル……だよな?」

「はい! 久し振りですね。クドウさん!」


 アデルは嬉しそうにニコニコ微笑んでいる。


「何でここに? それともう敬語は止めてくれ」

「……分かったよ。それでえっと……僕……人質にされちゃって……あはは……」

「あぁ……なるほど。て言うかこの学校の生徒だったんだな」

「うん! 今年入学したんだ!」

「そうか……それで……えっとその格好は……」

「え? 僕の制服……何かおかしいですか……?」


 アデルは不安げに自分の服装を確認する。その度に服の一部はヒラヒラしていた。


 俺は意を決してアデルに訪ねる。


「………………女装……か?」

「…………え……?」


 アデルは服装の確認をやめて顔だけ動かし、俺を見つめる。


「………………クドウさん…………あの…………ボク…………女の子です」

「………………」

「………………」

「………………ごめん。俺、お前の事男だと思ってた」

「……なんで……ですか……?」


 アデルは若干潤んだ目で俺に聞く


「…………髪短いし、一人称ボクだし……それに……」

「……それに……?」


 俺は深呼吸をして、言う。


「…………胸無いから」

「…………ぅぅ」

「……ああ……泣くな。ごめん。ごめん」





 



 やがてグラウンドに人がやって来た。衛兵だったり教師だったり……


 教師によると、今日は授業が無くなったらしい。ラッキー。白ローブも役に立つんだな。

 当の白ローブは全員衛兵に連れて行かれたけど。


「なにやってるのよ……クドウさん……」


 近寄ってきたフレイアが責めるような視線で聞いてくる。


「…………グスン」

「こいつの事男だと思ってたって言ったら……」

「……はぁ? ……こんな可愛い顔した子が男の人な訳ないじゃない……」

「分かってたのか?」

「当たり前よ」


 どこにこいつを女だと見分ける情報があったのだろうか。

アデルは中性的で整った顔をしてるし、見た目と声もどっちとも取れる。

 うーん……わからん。女の勘って奴か……?


「ほら、アデル。大丈夫よ。私はクドウさんと違ってちゃんと分かってたから」

「……ぅぅ……ふ、フレイアさん? ほ、本当ですか……?」

「えぇ。勿論よ。だから……泣き止んで……?」

「…………すん…………分かりました」


 アデルはそう言って涙を拭う。


「アデル。ごめんな」

「……もういいですよ。クドウさん。ボクも大袈裟過ぎでした。あと、助けてくれたのに困らせてごめんなさい」

「いや、いいよ。……それより何でお前らとお前も居るんだ?」


 お前らとは、ラモン、ラウラ、エリーゼ、ガレットの事だ。

 お前とは、さっき教室に押し掛けて来た奴だ。


「アデルっ! 大丈夫だったか!?」

「あっクルト! ボクは大丈夫だよ!」


 押し掛け君はクルトと言うらしい。


「…いやアキすげぇな。あれだけの人数を一人で片付けちまった」

「同感だ。俺なんか騎士の家に生まれておきながら、怖くて動けなかった」

「これはまたお父様に教えてあげませんとですわ!」


 なぜリベルトに教える必要が……?


「や、やっぱりクドウさんは凄いですね! こ、この前もそうですけど!」

「…この前ってなんだよラウラ?」

「え、えっと……この前私学校休んだじゃないですか」

「そうですわね」

「ラウラとエリーゼは同じクラスなのか?」

「は、はい! ……それでその理由があのローブの人達に誘拐されちゃったからなんですけど、その時に偶々、冒険者のお仕事でティアネーの森に来てたクドウさんに助けて貰ったんですよ!」

「なんだと? じゃあつまり、父様から聞いてた被害者の中にはラウラもいたと言う事か」


 ん? どういう……あぁそうかレイモンドからガレットの父親が話を聞いていたと言う事か。

 つまりガレットの親族が二人で騎士をやっているのか。


「…おいおい怪我したりしてねぇよな……?」

「あ、はい大丈夫でした!」

「……と言うかクドウは冒険者をしていたのだな」

「あぁ。金が無いからな」


 今のランクだと稼ぎが全く無いけどな。


「…そういや俺も今月ピンチだったな。……やってみるか」

「ふむ。実践練習にもなるか……よしじゃあ俺もやってみようか」

「あら、でしたらわたくしもやってみたいですわ」

「え、え、ええぇぇ! じゃ、じゃあ私も!」


 いやいや、お前ら……


「……じゃあボクも冒険者やってみようかな……」

「…ん? アキ。そいつは?」

「えっと、友達だ……だよな。で、そっちのは?」

「!! も、勿論! ……あぁえっと、アデルです! よろしく! それとボクは女の子だからね! 誰かさんみたいに間違えないでね!」

「あ、えっと俺はクルトです。アデルの友達です。えっとよろしく?」


 まだ根に持ってるのか? ……いや、冗談か。まぁでも取り敢えず謝っておこう。


「ごめんって」

「……えへへ。冗談だよ」

「あぁ……俺はアキ・クドウ。よろしくクルト」

「私はフレイアよ。よろしくねクルトさん」

「…よろしくなアデル。クルト。俺はラモンだ」

「俺はガレット・シルヴェールだよろしく」

「え、えと……私はラウラ・ベール……です! よ、よろしくお願いします!」

「私はエリーゼ・リュハノフですわ! よろしくお願いしますですわ」


 一通り自己紹介を終わらせる。


「そういや俺はお前らが何組か知らないな。あぁ……俺は二年二組だ」


 アデル達、後輩がやりやすいように学年も言う。俺は気遣いのできる男なのだ。


「私は二年四組ね」

「…おっとそういや言って無かったな俺は二年六組だ」

「俺は二年五組だ」

「わ、私は二年三組です」

「わたくしも二年三組ですわ!」

「ボクは一年一組だよ」

「俺は一年三組です」


 それから暫くの談笑の後、俺はエリーゼに尋ねた。


「そういえば……なぁエリーゼ。さっき『お父様に教えてあげませんとですわ!』って言ってたけど何でだ?」

「あら、それはお父様が強い人物を探しているからですわ」

「何でだ?」

「最近は物騒だから強い騎士が欲しいらしいですわ」


 物騒……カルト教団とかかな?


「ふーん。 でも俺の事を報告しても意味ないぞ」

「あら、それはどうしてですの?」

「いや、騎士に何かなる気が無いからだけど」

「お給料とかいいらしいですわよ?」

「俺はもっと冒険者ぐらいの自由な仕事がしたいんだ。そこに給料なんか関係ない」

「なるほどですわ。それはお父様に伝えてもよろしくて? ですわ」

「あぁ構わない」

「分かりましたわ」


 いやぁ、騎士も悪くないんだけど冒険者の気楽さを知ったらなろうとは思わないな。

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[一言] ①騎士に何かなる気が無いからだけど  →騎士に成る気が無いから
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