第60話 校長室
学校に着くとしつこく聞いてきていた四人も諦めたのか、自分の教室に向かっていった。
「朝から大変だった」
「ははは……いい言い訳を考えとかないといけないわね」
「そうだな。じゃあ」
「えぇ。また放課後ね。あ、当然の事だけど護衛なんだから一人で帰らないでよね」
教室に入ると、俺は鞄を置いて自分の席に座る。
そろそろ面白い事が起こらないかな。
そう期待しながら俺は寝た。
俺が起きた時にはもう昼休みだった。
何故教師は寝ている俺を起こさなかったのか。お陰で昼休み終了間近じゃないか。
……まぁ良いかそんなにお腹空いてないし。
どうせなら今日は寝過ごしてやろう。
俺がそう思い再び眠ろうとしているとナタリアが教室に飛び込んできた。
「クドウ君はいますか!?」
「クドウ君なら今さっき起きましたよ」
クラスメイトが言う。
「あれだけしても起きなかったのに……」
どうやら起こそうとはしていたようだ。
「まぁいいです。クドウ君。ちょっと来て下さい。昨日の出来事でお話しがあります」
「……昨日? ……あぁあれか」
「はいもうちょっと詳しい話をと」
「今行きます」
俺は寝起きでふらつく足を動かしてナタリアについていく。
「クドウ君を連れて来ました」
「どうぞ」
「失礼します」
連れられてやってきたのは校長室。校長室に入ると、中には校長、リサンドラと重そうな鎧に身を包んだ男、それにリベルトがいた。
「座って下さい」
リサンドラはソファー指して言う。俺は黙って座っておく。
「では早速だけどクドウ君。きみは昨日ティアネーの森に行ったね?」
「行った」
「そうかい。じゃあそこでここに居るリベルトと他の民間人を助けたね?」
「助けた」
この婆さんは何が言いたいんだ?言いたい事があるならハッキリ言えば良いのに。
「そうか犯人はどうしたんだい?」
「あの場に居た白ローブなら全員始末した」
「ふむ。どのくらい居たんだい? 何故あそこに居たんだい?」
「三十人程度。冒険者ギルドのクエストで薬草を採りに行ったら偶々出くわしただけだ」
……なるほどな。俺は疑われているのか。
「冒険者をやっているのかい。ランクは?」
「Fだ」
「……ただのFランクが三十人も……ねぇ……」
「疑っているのか? 嘘だと思うならギルドとか、助けた人とかに確認を取ればいいだろう?」
「いや、すまないね。疑っている訳じゃないんだ。ただ君がどれほどの力量なのか確認したかっただけなんだ」
そんな事をしてなんの意味があるんだ。……いや……なんでもいいか。とにかく面倒臭い。特に面白くもないし。
「……で?」
「こら、クドウ君! 目上の人にそんな態度取ったらダメですよ!」
ナタリアがとうとう我慢できなくなったのか俺の態度を注意する。
「すんません」
「もうちょっとちゃんと……まぁいいです」
「さっきから気になってたんだけど、そこの鎧の人は誰なんだ?」
この部屋にこんな大層な鎧は場違いのように映る。とにかくさっきから気になってしょうがない。
「ん? あぁ申し遅れた。俺はミレナリア王国第三騎士団団長レイモンド・シルヴェールだ」
また友達の親族っぽいのだよ。
「あんたに子供は居るか?」
「……? あぁ娘がいるぞ。それがどうかしたか?」
どうやらガレットの父親では無かったらしい。 となると他の親戚だろうな。
「そうか。いや気になっただけだ」
まぁそんなポンポン友達の親と関わる機会なんかないよな。
「とにかく、騎士団が捕らえられなかったカルト教団の一部を討伐してくれて助かった。今度君の表彰式をする予定なんだけど、出てくれるかい?」
来た来た。目立つ機会が来たぞ。これで厄介事に巻き込まれる可能性が上がる。勿論断る訳がない。
「……勿論出る。これから面白い事になりそうだ。楽しみだ。ははは」
「……面白い事? ……どういう事だ?」
「目立てば目立つ程、妬みやら僻みやら……その他のなにかで色んな厄介事が舞い込んでくる。そうなれば退屈せずに、面白楽しく過ごせる……そう言う事だ」
「…………」