第52話 偽るのは止めます
翌朝
俺はフレイアとオリヴィアとで朝食を摂っていた。
昨日あんな事があったからか、俺とフレイアの間には気まずい空気が流れている。そんな俺達をオリヴィアは不思議そうに眺めている。
まぁ今回の件に関しては俺が悪いのでこの空気を取っ払うために行動しよう。
「……そう言えばフレイアって何組なんだ?」
「……え? 私は四組よ」
「へぇ。四組ってあのお婆さん教師のところだよな」
「エブリン先生ね」
「そんな名前だったのか」
「えぇ。いい人そうだったわよ」
そんな感じで和やかな会話は続いて行き、いつの間にか気まずい空気は消え去っていた。
元コミュ障、頑張りました。
朝食を終えた俺は自分の部屋に戻り、登校の準備をする。
準備を終えた俺はフレイアの部屋をノックしに行く。
「フレイア。そろそろ行くぞ」
「ちょっと待ってー」
「わかった」
どうせ通学路は同じなのだから一緒に登校したらどうですか? とオリヴィア言われたのでそうする事にしたのだ。俺がフレイアの護衛役だと言うのもあるんだろう。
それから間もなくして、フレイアが部屋から出てきた。
「お待たせ」
「ん。じゃあ行くぞ」
俺達は世間話をしながら通学路を歩いた。
教室に入ると、早速グループを作っているもの達がいた。一年生の時からの友達同士とかだったのだろうか。
なんにせよ、俺は出遅れたと言う訳だ。
俺はロッカーに鞄を入れて自分の席に座り、ボーッとする。こんな時窓際の席だったら外の風景を眺められたのだろう。
やがてチャイムが鳴り、教師のナタリアが教室に入ってきた。
その後、委員や係等の決めておかなければいけないものを決めたりなんやかんやして、放課後になった。
俺が教室を出ると、ラモンが通りかかった。
「あっ……ラモン」
「…あ? ……おぉアk、クドウか」
「アキでいいよ」
「…でも貴族に向かってそれはよぉ……」
「別に僕は貴族じゃないよ。僕の故郷では誰でも名字があるんだ」
この言い訳って万能だよな。
「…なんだ……そう言うことかよ。……じゃあ遠慮なく呼ばせて貰うぜ。アキ」
「うん」
「…それじゃあ……今度はお前の番だぜ。アキ」
「うん? どう言うこと?」
「…無理して取り繕わなくていいぜ?」
何でだよ。バレるようなこと何もしてないだろ。
「……うーん…………何でわかったんだ?」
「…話し方に違和感があったんだよ。……詐欺師みたいな感じって言えば分かるか?」
「なるほど。普通の話し方を意識したんだけどな」
「…後胡散臭い笑顔だな。紙を貼り付けただけみたいな」
「……よし。これを機に偽るのは止める事にする」
「…お、おう? 好きにしろよ?」
よくよく考えれば厄介事に首を突っ込みたい俺が、人に媚売ってどうするんだって話だよな。
「せっかくだし一緒に帰ろうか。ラモン」
「…おぉそうだな。一人でってのも寂しいしな」
俺とラモンは並んで歩き出す。
校門が見える位置までくると、フレイアが校門の前に立っているのがわかった。フレイアは俺を見つけるとこちらに向かって歩いてきた。
「待ってたのか?」
「えぇ。あら? その人は?」
「あぁこいつはラモンって言うんだ。この間友達になった」
「…どうも。ラモンだ。よろしく頼むぜ」
「私はフレイアよ。よろしくね」
ラモンは笑って自己紹介する。
ラモンは次第にその笑みをニヤニヤに変えて俺に耳打ちしてくる。
「…おいアキ。こいつは彼女か何かか?」
「違うけど」
「…じゃあなんなんだよ?」
「……言えないな」
「…はぁ? なんだそれぇ。つまんねぇの」
フレイアとの関係は人に説明しにくいから仕方ない。
「何コソコソ話してるのよ?」
「何でも無い」
「……ラモンさん。教えてくれない?」
「…いいぜ。後ラモンでいい」
「わかったわ。……それでなんの話をしてたのよ」
「…フレイアはアキの彼女なのか? って話だよ」
「……! んな、な、ななぁ!?」
「…アキは教えてくれねぇから代わりに教えてくれねぇか? フレイア」
「え!? ……えと……その……クドウさんとはそんなんじゃないわよ」
「…ふーん? ……なるほどなぁ」
「二人とも早く帰るぞ」
帰ってからは昼食を摂ってからゴブリン討伐をするつもりだ。時間があれば他のクエストも受けたいと思っている。だからこんなところで時間を潰すわけにはいかない。
俺は二人を待たずに歩き出す。
「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
「…ちぇー気になるなぁ」
教師の名前をカーラからナタリアに変更しています。