第48話 路地裏
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ネックレスの装飾の描写を修正しました
クエストの達成報告を済ませて俺はフレイアと帰路についていた。
「いい加減機嫌直せよ」
「…………ふんっ」
ずっとこの調子だ。『残念な事に……』事件がまだ尾を引いているのだろう。
このままじゃ不愉快なだけなので早くなんとかしないとな。
「……あれ」
「あ?」
「……あれ買ってくれたら許してあげる」
そう言ってフレイアはショーウィンドウに飾られたネックレスを指差す。高そう。
ペンダントトップに煌々と輝く炎があしらわれたネックレスだ。
「自分で買えばいいだろ。 俺は金欠なんだ」
「…………じゃあ許してあげない」
「……は? …………はぁ……仕方ないな」
クエストで稼いだ金が一瞬で消し飛んだ。それどころかそれ以前から貯めていた金もほとんど消し飛んだ。
俺は凄くスッキリした財布をアイテムボックスにしまう。
「……あ、ありがと」
「どういたしまして。 それで……機嫌は直ったんだろうな?」
「勿論よ! ……でも……」
「……なんだよ。 ……まだなんかあるのか?」
「く、首にかけて欲しいなって……」
「なんでだよ?」
「い、いいからやって!」
フレイアはそう言ってネックレスを差し出してくる。
「はぁ……仕方ないな」
言われた通り、フレイアに渡されたネックレスをフレイアの首に着けてやる
「……えへへ……ありがと」
よく分からないがとにかく機嫌が直ったようでなによりだ。
「……! ねぇクドウさん。あれ……」
フレイアはいきなり立ち止まり、路地裏の奥を指差す。
「どうした。 …………あー……」
そこにはガラの悪そうな男達が一点に向かってパンチやキックを放っていた。それに合わせて小さく呻き声が聞こえてくる。
「助けに行くわよ」
「嫌だ。 ……いや、やっぱり行こう」
最初はめんどくさいから行きたく無かったが、改めて考えると、面白そうな感じがしたので助けに行くことにした。
「ちょっとあんた達! 何してるのよ!」
「あぁ? 見て分かるだろ? 一緒に仲良く遊んでんだよ」
「そうだぜ。なぁ、アデル?」
「お、お願いします……助けて下さい……」
アデルと呼ばれた人物は弱々しく助けを求めている。
「てめぇ何余計な事喋ってんだ? あぁん!?」
「……うぐぅっ!」
腹を蹴られたアデルは腹を押さえて呻く。
「ちょっと! 止めなさいよ!」
「俺達がどうしようと俺達の勝手だろうが。部外者がしゃしゃり出てくんじゃねぇよ!」
「お前もこいつ見たいにボコッちまうぞ?」
「やれるもんならやってみなさいよ! 行くわよ! クドウさん!」
「わかった」
「はっ! こっちは四人だ! お前ら行くぞ!」
「「「おお!」」」
俺はゴブリンの時のように地面を伸ばしてチンピラを拘束する。
「うお! チッ! 魔法使いかよ……まぁいいさ動けなくても剣は振るえるからなぁ!」
チンピラは足を拘束されながらもフレイアとまともに打ち合えている。残りの三人は離れたところで見ている事しかできない。必死にもがいているが土の縄は外れない。
「くそ! 外れねぇ! 助けて下さいリーダー!」
「うるせえ! 俺もこの女の相手で手が塞がってんだよ!」
リーダーと呼ばれた男は気が散ったのだろう。今のやり取りを境に体勢が崩れていく。
フレイアは上に下に、右に左に、斜めに剣を振り続ける。
やがて、フレイアの攻撃を受けきれなくなった。チンピラのリーダーは剣を弾かれてしまう。
「クソがぁ! 卑怯だぞ! 魔法で動けないようにしてなんてよぉ! 正々堂々やりやがれ!」
「大人数で一人を虐めてた奴が正々堂々なんて口にすんなよ」
「んだと!? ……! そうだてめぇだ! 次はてめぇが俺と戦え!」
拘束されてたとは言え、フレイアに負けたチンピラのリーダーは俺にターゲットを変えたようだ。
「いいけど俺が勝ったら素直に負けを認めろよ?」
「あぁいいぜ。でも魔法は無しだ」
「わかった」
どこまで自分に有利な状況を作るつもりだよ。
「へへっ! じゃあ行くぜ!」
剣を拾った男はそう言うなり、武器を構えてもいない俺に斬りかかる。
俺は右に避けてチンピラのリーダーの頬を叩く。つまりビンタだ。
「おいダメだろ。武器を構えてもいない相手にいきなり斬りかかっちゃ。 ……まぁ俺武器持ってないんだけど」
俺はチンピラのリーダーを虚仮にする。自分に有利な条件を突きつけておいて軽くあしらわれるなんて悔しいんだろうな。
なんて考えながら顔を驚愕に染めたチンピラのリーダーから次々と繰り出される攻撃を躱す。
「なんで当たんねぇんだ! 魔法使いじゃねぇのかよ!? ……ちっ……こうなったらレベルアップだ!」
……ん? レベルアップ……?
チンピラのリーダーはそう言うと身を翻し仲間の元に向かう。
そして徐に仲間を斬り殺し始めた。
「くくく……あははははは!! これで俺のレベルは17だ! あああ!」
返り血に濡れたチンピラのリーダーはそう言い振り向く。
その目は多少の喜びと憎しみに満ちていた。
凄いな……普通ちょっとおちょくられたからってここまでするだろうか?
俺はこの世界にまだまだ存在するであろう面白要素に期待を抱きながら、チンピラのリーダーの顔面を殴っていた。
「ぐわばれぁあ!」
奇妙な声をあげてチンピラのリーダーは仲間の死体に埋もれてピクピクと痙攣していた。