第47話 久しぶりのクエスト
俺は今通ってる学校のじゃない、日本にいた頃の制服に着替えて玄関に向かった。
フレイアはまだいなかった。
女の子は色んな準備があるから遅いって聞いたことがある。
とか思ってたらすぐに来た。
「お、お待たせ?」
「いや待ってない」
「そ、そう? じゃあ……行くわよ」
俺達は冒険者ギルドに来ていた。
流石王都。ギルドの大きさも、冒険者の数も冒険者の街フィドルマイアと遜色ない。
俺達はいつものようにFランク唯一の討伐クエスト、ゴブリン討伐のクエストを受ける。受付嬢はどこも美男美女しかいないようだった。
俺達は王都に一番近い魔物が生息する場所、魔女の森に来ていた。魔女の森はその名の通り、魔女が住んでいると言われる森だ。『魔女の森』自体はあだ名のようなもので、本当は『ティアネーの森』と言うらしい。
「来たわよ!」
ゴブリンが五匹俺達の前に現れた。
フレイアは腰に提げた剣を鞘から抜き放ち、ゴブリンに向かって駆け出した。
「はああああぁぁ!」
フレイアは剣を右上から左下に振り下ろす。
ゴブリンはそれを棍棒で受けようとするが、棍棒は真っ二つに切り裂かれる。そしてフレイアの剣はそのままゴブリンまでも切り裂く。
フレイアはそのまま横にいたゴブリンに迫り、左下から右上に剣を振り上げる。しかし、このゴブリンは剣を持っているので防がれてしまった。やや、フレイアが押しているように見えるが、状況は変わらない。それどころか、他のゴブリンもフレイア目掛けて襲い掛かってくる。
俺は土魔法で地面を縄のようにして、ゴブリンの足を固定する。
フレイアは先ほどのゴブリンを押し切り、真横に剣を振るう。ゴブリンの腹に赤い亀裂が入り、そこから血が溢れでてくる。
フレイアは拘束されて必死にもがいているゴブリンを殺していく。
「ふぅ……いやぁ……いつもの事ながらあんた凄いわね……って言うかなんでいつもゴブリンを倒さないのよ?」
「お前を強くするのが目的だからな。俺が経験値を取っても意味ないだろ? それに今更ゴブリンを倒したところで何にもならないしな」
「ふーん。なるほどねぇ……私もあんたぐらい強くなれるかしら?」
「無理だろ。神でも殺さない限り」
「えー」
「でも、俺には届かなくともそれなりに強くはなれるんじゃないか?」
「励ましてくれてるの?」
「そうだけど」
「……あっそ」
「ほら、さっさと残りも済ませるぞ」
「……えぇ」
その後も俺は残りのゴブリンをフレイアに殺させた。
「久しぶりに魔物討伐したけど結構出来るものね」
「あぁ。フレイアのレベルがあがったからじゃないか?」
「……え? 私のレベルあがってるの?」
「初めて会った時より結構あがってるぞ」
「そうなの!? やったぁ~!」
フレイアは跳びはねながら喜ぶ。
と、そこで俺に悪戯心が芽生えた。
…………そうだ
ちょっと意地悪しよう。
「おいフレイア。あんまり跳ねるとパンツ見えるぞ」
「~~~~っ!?」
フレイアは顔を真っ赤にしてスカートを押さえながらしゃがみこむ。
「み、みみみ、見えた!?」
「残念な事に……」
そう言い俺は下を向く。
これはどっちとも取れる言い方だ。
『残念な事に見えてた』
『残念な事に見えなかった』
フレイアは今不安に押し潰されそうなはずだ。
その証拠にフレイアは涙目になりながらこちらを見る。
「……ざ、ざ、残念な事に何よ!」
「みえ………………」
「………………ぅぅぅっ! 早く言いなさいよぉっ!」
「…………見えなかった」
「…………ほんと?」
「あぁ」
「む~っ! ならなんであんな意地悪したのよ!」
「さぁ? 面白そうだったから?」
「はぁぁぁあああ!?」
俺は怒り狂うフレイアから逃げながら笑っていた。