第44話 友達作り
翌日
俺は重い目蓋を開けベッドから下りる。
そして宿屋の食堂に向かう。
「あ、おはようございます。朝御飯できてますよ」
俺は適当に空いてる席に座る。すると朝食がすぐに置かれる。
「おはようございます。毎日ありがとうございます」
「いえ、お金は頂いてるので」
そう言い、はははと笑う。俺はそれをちらっと見てから朝食を食べ始める。
俺は食器を持っていく。
「ああ、わざわざありがとうございます。本当は私が行かないといけないのに……そうそうクドウさん宛にお手紙が届いてますよ。今取ってきますからちょっと待ってて下さいね」
そう言い、食器を奥に運んで行く。
「これです」
帰って来た店員は封筒を手渡してくる。
俺はそれを受け取り、自室に戻る。
封筒を開けると、そこには合格通知があった。
筆記試験が危うかったが、なんとか合格できたようだ。
さて残りの二週間どう過ごそうかな。
俺はフェルナリス魔法学校の校内を歩いていた。しかし、誰ともすれ違わない。当たり前だろう。まだ開校していないんだから。教師は居るので、認識阻害を発動させている。
何故学校にいるのかと言ったら、学校探索だ。只でさえクソデカイ学校なんだ。絶対迷子になる。だから予め探索しておこうと思ったんだ。暇だし時間は有効活用しないとな。
そんなこんなで暇潰ししてたら、制服などの受け取り日になった。
俺以外の四人も来ていた。全員合格出来たらしい。
教師は配布物を取りに行っている。
今教室中には俺達五人だけだ。
俺は四人と仲良くなるため話し掛ける事にした。
ここにいる奴は全員、なんかありそうだから。
うまく行けばフレイアのような暇潰しの道具になるかもしれない。
話し掛けやすそうなのはラウラ、ガレット、エリーゼ、ラモン、の順だろう。じゃあまずはラウラに話し掛けようか。
「こんにちは。僕はアキ・クドウ。君は?」
「ひゃう!? え、え、え、えっと……ラウラ・ベールです」
「ラウラか。同じ入学生どうし仲良くしようね」
「え、あ、は、はい! よ、よ、よろしくお願いしますっ!」
我ながら馴れ馴れしい態度だと思う。
「うんよし。じゃあ一緒に他の人にも話し掛けようか」
「え、えぇえ! な、なんでですか!?」
「友達は多い方が良いでしょ?」
「と、友達……うぅ……そ、そうですけど」
「なに?」
「……えと……その……は、恥ずかしいです……あの……私人と話すのが苦手で……」
「……じゃあ苦手を克服するためにもやってみない?」
「ううぅ…………わ、分かりました! 私やってみます!」
「じゃあ行こうか」
チョロい。商人だか貴族だかの娘チョロい。
「あ、あの! わ、わた、私! ラウラ・ベールって言います! あ、貴方のお名前はなんですか!?」
「わ、俺はガレット・シルヴェール。話は聞こえていたぞ。友達作りだろう? そう言う事なら大歓迎だ。よろしくベール、クドウ」
そう言いガレットは握手をするために手をだす。
「うん。よろしくねガレット」
俺は素直に手を握っておく。
「あぇ!? よ、よろ、よろしくお願いしますっ!」
ラウラは驚いた後に、勢い良くガレットの手を両手で握った。アイドルと握手する時の人見たいに、嬉しそうにブンブン振っている。
「よかったね。ラウラ。自分の力で友達作れたじゃん」
「あ、はい! よかったです! えへへ。」
「それで、話の流れ的に他の二人とも友達になるのだろう?」
「そうだね。じゃあ……」
ガラガラガラ……
俺がそう言ったところで教室のドアが開いた。
「はい。じゃあ今から配りますね。…………えーーっと配りにくいから一ヶ所に集合しましょう。」
細身の男は何かを察したのか、左からラウラ、ラモン、俺、エリーゼ、ガレットの順に一列に並んだ。ガレットはコミュ力高そうだ。なので俺はガレットに『そいつを任せる』と目で伝える。それに気付いたガレットは分かったと頷いた。
じゃあラモンに話し掛けよう。
「ねぇ。僕はアキ・クドウ。君は?」
俺が似たような話し掛け方しかできないのは、俺がまともに人と関わって来なかったからだろう。情けない事に。
「…んあ……? 俺か? 俺は……ラモンってんだ」
「ラモンか。クラスは違うだろうけどこれからよろしくね」
「…お、おう。お前……変な奴だな。大抵の奴は……ビビって話し掛けすらしないのに……」
「ははは……人は見掛けで判断したらダメなんだよ?」
どの口が言うか。気弱そうなラウラから選んで話し掛けた癖に。
自分の事ながらそう思わずにはいられなかった。
「ねー! ラウラ」
俺は隅で空気と一体化しようとしているラウラに同意を求める。
「ふぇ!? ぁえ、え、えっと……そ、そうですよ!」
「あぁ、ラモン。紹介するよ。ラウラだ。さっき友達になったんだ」
「ラ、ラウラ・ベールです! よ、よろしくお願いしますっ!」
「…おう……俺はラモンだ……よろしくな」
「はい!」
こうしている間も細身の男は配布物を配っている。俺達の机には制服や教科書などが積み重なっている。
さて、ガレットの方は……
よかった上手くいったみたいだ。二人は楽しそうに談笑している。
「ガレット。どう? 上手く行った?」
「あぁバッチリだ。」
「え、っと……なんの話ですの?」
「あぁ実はな──」
ガレットが経緯を話始める。
「なるほどですわ! なら改めて名乗らせて貰いますわね! わたくしはエリーゼ・リュハノフと申します。ですわ!」
「僕はアキ・クドウ。よろしく」
「…俺はラモンだ……よろしくな」
「わ、私はラウラ・ベールです。よ、よろしくお願いしますっ!」
「俺はガレット・シルヴェールだ。よろしく頼む」
細身の男は頬を緩めながら俺達のやり取りを眺めていた。
友達作りはこんなに簡単じゃないんですよね。