第40話 王都へ 2
俺は翼を生やし、草原の空を飛んでいた。
太陽は俺の頭上で燦々と大地を照らしている。
つまり真昼だ。
今はフィドルマイアと王都─ソルスミードの中間辺りだ。
街道の周辺には昼飯を食うためだろう。馬車がチラホラ停まっている。
そんな中、馬車を囲むようにこそこそと動いている集団がいた。
俺は空中で止まり、【千里眼】のスキルで馬車を覗く。
その中には馬車を囲むもの達に気付いているのか、女性と小柄な少女が抱き合っていた。そんな二人を守るように覆い被さっている女性より年上そうな男性。多分親子だろう。
馬車の外は護衛が馬車に誰も近付けぬように囲んでいる。
俺は馬車を囲むもの達に視線を向ける。
そいつらは皆悪意に満ちた顔をしていた。
舌舐めずりをしていたり、笑いを堪えてニヤついていたり……
状況を理解した俺は体を異形に変形させる。
それは四足歩行で、緑の胴体からは真っ黒で大きく開いた口以外無い、長い頭部を幾つか持ち、四本の足からは黒い根っこがうようよと分岐している。背中には翼のように見せかけたた海月のかさがある。海月のかさは翼に見えるよう形を整えている。尻尾は肉をズタズタ引き裂けそうなほど凶悪な刃を複数つけた尻尾が数本生えている。
頭が[闇蛇]、胴体が[大蜥蜴]、足は[老人面樹]、翼が[紫電海月]、尻尾が[斬裂鼠]だ。
何故変形したか。その理由は簡単。助けたのが久遠秋だと分からないようにするため。
俺が攻撃すれば俺の存在を認識されてしまう。認識されてしまえば、認識阻害は意味を成さなくなる。
だから俺は通りすがりのキメラを演じる事にした。
まぁ一瞬で盗賊を蹴散らした魔物が王都の付近に現れたとなれば、良い感じに騒がしくなるだろう。
俺は認識阻害を解除して、馬車の前に降り立つ。
この場にいる者の大半が口を開け、それ以外の者は顔を青ざめさせ恐怖に震えていた。
俺は【威嚇】と【威圧】スキルを使い、盗賊達などその他の人に思考の隙を与えない。
頭部にある大きく開いた口で前方にいる盗賊に喰らいつく。魔物の姿をしているからか人間を喰うのに抵抗がない。
この間の盗賊もこんな感じで喰っていたのだろうか。
足から無数に伸びる根の先を、矛のように変形させ盗賊を貫いていく。
尻尾を振り回し、刃で盗賊を引き裂く。
「ぐあああああっ!」
「ぎゃあああ!!」
「うわあああ!」
思考停止した盗賊達はあっという間に、まともな言葉を発する事もできず死に絶えた。
俺は馬車に振り返り、危険な魔物だと言う印象を脳に色濃く刷り込ませるために【咆哮】のスキルを使い、飛び去る。
【獅子の咆哮】やその他の【◯◯の咆哮】系のスキルを手に入れまくった結果統合され、【咆哮】スキルになった。
馬車から俺が見えなくなったところ辺りで俺は認識阻害を発動させ、元の姿に戻る。
その後は問題なく移動できた。
やがて王都が見えて来たので地面に降り、認識阻害を解き、俺は巨大な門まで歩きだす。
章を無くしました。めんどくさくなったので。




