第4話 戦闘
門の先は薄暗い遺跡だった。
「クソが……」
何も出来ずに白の世界を去った僕が僕に対して吐いたものか、それとも何も持たず洞窟の中に放り出されたこの状況にたいしてか。
思わずついた悪態は僕以外誰の耳にも届かなかった。
数分後、気分が落ち着いた僕は辺りを見渡す。
僕が通ってきた門は無くなっていた。
あるのは目の前にある通路だけ。
進むしかない
意を決して、僕は何があるかわからない遺跡を進み始める。
荒れ果てた遺跡を進むと、小さな部屋にでた。
そこには、プルプルの何かがいた。
僕はそれを見て少しテンションが上がっていた。
「スライムだ……」
ゲームやアニメ、漫画などで良く見る序盤のザコ敵。
こんな状況で、あんな凄惨な出来事がなかったら、僕のテンションは気持ち悪いぐらい上がって狂喜していただろう。
僕は胸に少しの喜びと興奮と、ある程度の警戒心と恐怖心を抱き、恐る恐るスライムに近付く。
スライムの中心あたりに赤く光る球体がある。
ゲームとかならあれが弱点なはずだ
スライム接近してくる人間に気付き、プルプルと震えた。
僕はその震えが何を意味するのか理解出来なかった。
それが仇となったのだろう。
僕の戸惑いに目敏く気付いたスライムは僕に体当たりをしてきた。
僕は回避出来ず、左腕にかすってしまった。
ジンジンと痛む赤くなった左腕を擦りながらスライムの体当たりを避け続ける。
反撃の機会を窺いながら回避を続ける。
数分が経ち僕は反撃出来ず、無様に逃げ回っていた。
体力はまだ残っている。
スライムはこのままでは埒があかないと思ったのか立ち止まり、真っ直ぐに僕を見据えている。
僕もスライムの赤い玉を見つめる。
スライムは弾丸のように真っ直ぐ飛び掛かってくる。
速度はバットがあれば打てそうなぐらい。
僕は赤い玉を抉りとるつもりで手のひらを開き、ちょうど良いタイミングで突き出す。
腕が赤く腫れている。すごく痛い。でも僕はスライムの赤い玉を奪い取った。
体内から赤い玉を引き抜かれたスライムは液状になりドロドロに溶けていく。
やがてスライムは地面の染みになった。