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第35話 冒険者ギルドのお約束

 俺は【探知】を使い、フレイアの位置を把握し、走り出す。


「指輪あったか?」

「見当たらないわ……」

「そうか……」

「あんたの方は?」

「え? 何が?」

「残って探してたんじゃないの?」

「あぁ……無かったよ」


 そうだった俺は残って指輪を探している事になってたんだった。


「なんか怪しいわね…………また何か隠してるのかしら?」

「いや、別に何も隠してないぞ」

「嘘ね」

「…………少なくともお前らには何の害もない事だから気にするな」

「……ふーん……」


 何でこいつはこんなに鋭いんだ。

 これが王族か?

 心理戦とかで勝てる気がしないな。


「とにかく一度街に帰ろう」

「あのねぇ……私は素性がバレたら立場的に不味いの。だから鑑定妨害の指輪を必死に探しているのよ」

「それなら俺のスキルでなんとかなる」

「……どんなスキルなのよ?」

「【認識阻害】って言う、俺と俺に触れているものを他人が認識できなくなるスキル」

「凄いスキルね……」

「なんでそんな諦めたような、呆れたような顔をしているんだ?」


 俺は顔を覗き込みながら言う。


「……っ……別に」

「なんか気に障るような事言ったか?」

「な、なんでもないわよ! さっさと帰るわよ!」


 フレイア怒りながら歩いていく。


「あ、おい! 認識阻害は触れ合わないと効果無いんだぞ」


 フレイアはピタッと止まり、いきなり振り向いてこちらに歩いてくる。

 自分のミスが恥ずかしいのか、顔が真っ赤だ。

 そして俺の手を掴み引っ張る。

 わざわざ手を繋がなくても腕とかでいいのに。


「なな、何してるのよ! 早く行くわよ!」


 俺はフレイアに引かれるまま歩を進める。


 俺は暫くしてからフレイアに嘘をつく。


「フレイア。実は今認識阻害を発動させていないんだ」

「んなっ!? 何で使ってないのよ! て、て、手を繋いだ意味ないじゃない!」

「冗談だけどな」

「~~~っ!!」


 フレイアは顔を真っ赤にして俺の脛を何度も蹴ってくる。


 面白いなぁ。


 いつの間にか俺はいつもの調子を取り戻していた。






「ゴブリンの指定数の討伐を確認しました。これにてクエストクリアとなります。こちらが報酬です」


 俺達は冒険者ギルドでクエストの達成報告をしていた。


「ありがとうございます」


 俺は報酬を受け取り、冒険者ギルドをでる。


 しかし


「おいおい。ここはデートスポットじゃねぇんだぜぇ?」


 手を繋ぐ俺とフレイアを恋人同士と勘違いしたのか、不良冒険者に絡まれる。


 不良冒険者はあまり筋肉がなく、一般人同様の外見をしている。


 不良冒険者はポケットに手を入れ、猫背になりながら言葉を続ける。


「冒険者ってのは命懸けの職業なんだよなぁ。カップル同士でイチャイチャしてんじゃねーよ。分かったら赤髪の女は俺についてこいよ。へへ」


 途中まではまともな事を言っていたのに、いきなりおかしな事を言い出した。


「なにか勘違いしているようですけど僕達は恋人とかじゃないですよ」

「あぁん? そんな事知るかよ。とにかく赤髪の女はこっちへ来い。俺が可愛がってやるからよぉ」


 そうか。俺は変なやつに絡まれてしまったようだ。


 フレイアも俯いている。表情は窺い知れない。ただ、不快そうな雰囲気は出てる。


 どうしようか。無闇に暴力を振るいたくないしな。やっぱり言葉で解決したい。でもこいつはフレイアの体にしか興味がないようだ。困った。


 ……! そうだ俺はフレイアの護衛だ。だからこいつがフレイアに手を出したら俺が暴力を振るう正当な理由ができる訳だ。それまでは好きにやらせておこう。俺にしては良い案だ。


「おい。なんとか言ったらどうだお嬢ちゃん。良いか? お嬢ちゃんの選択肢は二つだ。俺についてきて優しく犯されるか、俺の誘いを断りボコボコにされた挙げ句乱暴に犯されるかだ。ほぉらどっちが良い? 早くしないと乱暴にしちゃうぜ? ……3……2……1……0。よぉし、じゃあまずお嬢ちゃんをボコボコにしまーす」


 俺は不良冒険者が拳を振りかぶった瞬間フレイアの手をつないだままフレイアの前に出る。

 って言うかギルドの関係者は何故誰も止めないんだ?


 そう思い俺は周りを見る。


 受付嬢達は顔を青くして震えている。

 冒険者達は怯える者や、遠くから見守る者や、囃し立てる者等、つまり誰も止めないし誰も積極的に関わるつもりはないみたいだ。なるほどな。


 不良冒険者が振りかぶった拳は俺の腹部に直撃した。


 不良冒険者はそれだけすると、俺を無視してフレイアに手を伸ばした。


 いやいや何をしているんだ? 俺はまだ立ってるぞ?

 俺は不良冒険者の手を掴み、軽く捻る。


「な!? なんで動いてやがる!?」

「いやいや、あの程度で動けなくなる奴はいないぞ……」

「ありえねぇ……俺の拳に付与した【パラライズ】が効いていない!? ハッ……てめぇさては【麻痺耐性】を持っているのか!?」

「多分な」


 俺が持っているのは、【全状態異常無効】だけど。


 俺に不良冒険者の攻撃が効かなかったのをみた外野達はざわめく。


「あの新人やるじゃねぇか。《麻痺のピエール》の攻撃が効かねぇなんてよぉ」

「俺、麻痺耐性を持ってる奴なんて久々に見たぜ!」

「これでピエールの勝ちは無くなっちまったな」

「そりゃおめぇ当たり前だろ。一昨日冒険者始めてレアなスキルを偶々手に入れただけの新人だぜ?」


 【麻痺】程度のスキルがレアなスキル扱いされている。

 思ったよりここの人間のレベルは低いらしい?


「くっ……クソォッ! レアなスキルを持つ俺に歯向かうんじゃねぇぞッ! 新人風情が!」

「お前も新人みたいなもんらしいな」

「うるせぇ! 黙れ!口答えすんじゃねぇ! お前は黙ってその女を寄越せば良いんだよ!」


 ピエールは腰に提げていた剣を抜く。


「殺し合いがしたいのか?」

「はははっ! この俺が剣を抜いたら最後……俺の剣術で真っ二つにしてやるぜ! 俺の片手剣術はLv3だ! どうだ? 恐ろしいだろ? 今ならまだ許してやらねぇこともないぜ?」


 Lv3が高いのかどうか判断がつかないな。確か、フレイアがLv2だった。

 まぁどのみちわからないな。


「ギルドのルール的に殺し合いは駄目だろ?」

「怖じ気づいたか? ならとっととその女置いて失せな!」

「話通じないのかお前は……? 誰も怖じ気づいたなんて言ってないだろ……それに怖がっているのはお前じゃないか。人を殺す覚悟がないから逃げて欲しいんだろ。分かるよ俺には」


 俺は【思考読み】でピエールの思考を読み、ピエールを追い詰める。


「な、なな、なにぃ! そ、そんな訳ないだろ! も、もういい! 兎に角お前は殺す!」


 ストレスが限界を超えたピエールは思考を放棄して、感情の赴くまま剣を振り回す。


 俺はフレイアを背負い、回避する。


「ちょっ……ちょっと、なにしてるのよ!」

「手を繋いだままだと動き難いんだ。仕方ないだろ」

「せ、せめて先に言いなさいよ!」

「あーはいはい。すみませんでした」

「適当に謝らないで!」


 うるさいフレイアを無視して俺は回避を続ける。

 どうしようか。両手は塞がっているし周りには人がいるから、スキルも使えない。

 そこまで考えた俺はギルドを出て広いところに行く。

 後ろからは剣を振り回すピエールが追いかけてくる。


 俺は噴水がある広場まで来た。

 広場では子連れの親子や老人が思い思いに過ごしていた。


 そこに剣を振り回す狂人が出現したものだから、辺りは阿鼻叫喚。老人は腰を抜かし、大人は逃げ惑い、子供は泣き、親は子供をあやしたり無理矢理引き摺り逃げようとする。


 俺はフレイアが怪我をしないように噴水に投げ込む。

 俺は一応護衛役なんだから怪我をさせる訳にはいかない。


「きゃぁぁぁ!」


 バシャンと音を立て、フレイアは水浸しになる。


「なにするのよ! びしょびしょじゃないの!」

「怪我せずに済んで良かったと思え」

「それは……ありがとう……け、けど! やり方ってもんがあるでしょ!」

「無事なんだからそれで良いだろ……」

「むぅー! 良くないの!」


 こいつ緊張感無さすぎだろ。


 未だに喚くフレイアを無視してピエールの後ろに転移して、後ろから地面に押し倒す。

 ピエールから剣を奪い取り、目の前に突き刺す。


「ひっ……!?」

「落ち着いたか?」

「は、はいいぃぃ!!!」

「そうか。」


 俺はそれだけ言い、ピエールの頭を地面に叩き付ける。


「……がっ……!」


 俺は気を失ったピエールを担ぎ、フレイアの手を取り冒険者ギルドへ戻る。

 俺は冒険者ギルドの中に気を失ったピエールを放り込み、フレイアを屋敷まで送った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 両手が使えなければ足がある。 なぜ噴水に投げ込んだのかまったくわからない。
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