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第325話 神会う

 カイネフール洞窟から派生したダンジョンへと向かうためにミレナリア王国へとやってきていた秋。途中までは秋の姿で街を歩いていたのだが、冒険者ギルドに入る寸前に、ロキシーに変形しておかなければ、と考えて路地裏に入り、人目に付かないように姿を変え【早着替え】のスキルで服装も女性らしいものへと着替えていた。


 つまりラヴィアが見たのは秋であり、ベールが追っているのがロキシーだと言うわけである。……どちらも同一人物なので変わりはないのだが、情報の伝達に違いがある。

 ベールは秋とロキシーのどちらも同一人物だと知っているので出会うのに問題はないが、ラヴィアはそれを知らない。


 ……もし、秋が最初からロキシーの姿でいれば、ラヴィアの話によってクルトに秋の存在が伝わる事はなかっただろう。


 そう、ラヴィアは窓から見た秋の事を、夕飯の時にクルトに話していたのだ。ラヴィアがそれを目にした時間は短時間だったが、感じる異質さは永遠とも思えるほどに長く続いた。異常で異常で異常でしかない存在……脅威を仲間に共有しておくのは当然だった。注意喚起の意味を込めて、異質な生物の風貌などから感じた事などを話すラヴィアから、それが秋ではないかとクルトは推測していたのである。


 黒い髪に、黒い瞳、白いシャツ、黒いズボン、異常なまでの強者の気配。


 それほどに限定されてしまえば、クルトがその知識の中から秋を取り上げる事ができるのは当然だった。


 ……クルトにとってはどうでも良い話だったのだが、その白いシャツの胸ポケットには、アサガオが咲いているアイビーの装飾が施されていたとラヴィアは説明していた。

 左胸のポケットに刺繍されたそれは、まるで心臓に絡み付いているかのようであり、実際に心臓のある位置は胸の中心だと分かっていても、なぜだかそう見えてしまったのである。……身の中心が複数あるような、そんな錯覚を覚えてしまうほどにその刺繍はラヴィアの印象に強く残っていた。


 ラヴィアからその話を聞いて、この王都に秋がいると知ったクルトは明日ラヴィアの目的となり得る職を探すついでに秋も探そうと、シチューを味わいながら考えていた。

 ちなみにクルトがそうしている間もラヴィアは窓から見かけた男の異質さと異常さを身振り手振りでクルトに訴えかけていた。クルトの母親はそんな中で黙々と食事を口に運んでいた。元々食事中に言葉を発する人物ではなかったので、感じ悪いとかそんなんじゃないのである。







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







 クルトがそう考える数刻前、窓から見つめるラヴィアと目を合わせた秋は特に気にした様子もなくそのまま歩き、先ほども言ったように路地裏へと入ってロキシーの姿へと変形を遂げていた。

 そしてそのまま冒険者ギルドへと足を踏み入れ、カイネフール洞窟で受けられるクエストを受けてからカイネフール洞窟へと向かう。

 マーガレット達とダンジョン攻略していたときの名残だろう。特に金に困っているわけでも、クエストを受けたかったわけでもないが、やはり癖のようなもののせいで、ついそうしてしまったのである。


 クエストを受けてからこうする必要なかったな、と気付いて苦笑いしながら冒険者ギルドを出る秋の前に立ちはだかる者がいた。


 その人物は人間離れした美貌を全身に張り付けており、その人物が放つ雰囲気もただならぬものだった。貴族が纏っている気品と言うか、人を惹き付ける魅力と言うか、そんな無視できない雰囲気の人物だった。そんな人物が目の前に立ちはだかっている理由が分からない秋は首を傾げて言葉を待つ。


「あなたが久遠秋さん……いえ、ロキシーさんで間違いありませんね?」

「……! どうして俺の名前……正体を……」

「詳しい話はもう少し人目が少ないところでいたしましょう。あなただって、あまり自分の素性について人目があるところで触れられたくないでしょう?」

「……分かった。ついていこう」


 性別すら違う自分の事をどうして知っているのか尋ねたかった秋は女の言う通りに冒険者ギルドを出て路地裏へと入る。その際に多くの視線に晒されたが、それ以降は一切誰も見向きしなくなったのはベールが使用した結界のおかげだ。範囲内にいる生物の存在を、範囲外の生物に認識されなくする特殊な結界だ。

 それを認識した秋は正体もバレているようだし、話しやすいようにロキシーから秋へと姿を戻し、服装もいつも通りの制服だ。


「取り敢えずはこれでいいでしょう」

「それで……俺とお前は面識はないはずだが、お前はどうして俺の事を知っているんだ?」

「申し遅れました、私は運命を司る女神──ベールと言います。一応、あなたの友人であるラウラさんに『勇者』や『賢者』と同列の存在である『神徒』と言う役割を与えた神になります」


 何を言っているんだこいつは……と思う秋だったが、相手が真面目な顔をして言うものだから本当にそうなのではないかと思ってしまう。ベールが本来の力を発揮できていれば疑うまでもなかったのだろうが、やはり地上に存在するためには地上専用の肉体を構築し、周囲の力関係を崩さない程度には力を与える必要があるために秋からすれば、そこそこデキる奴、と言う程度の評価しか得られていないのである。


 しかし、目の前にいる運命の女神を名乗る人物の言葉を真実とするならば、アデルとクルト……そしてそこにラウラが加わって行動していたのも納得できるわけであるが、途轍もなく突拍子も信憑性もない話である。これを鵜呑みにしてしまうわけにはいかなかった。


 ……そこで秋はアデルやマーガレットなどの親しい存在には蘇生生物の監視をつけていた事を思い出し、それから得られる視界を使ってアデルとラウラを視界に入れ、そしてそのまま【鑑定】のスキルを使ってラウラのステータスを覗く。


 ……その称号の欄には、目の前の自称女神が言った通りのものが……『神徒』の称号が存在していた。聞いた事もない称号……勇者と賢者と同列ならば知られててもいいものだが、しかしこの役割は自称女神が作ったものだと言う。

 単純に無名の称号なだけで、それをさも自分が作ったかのように見せかけているだけかも知れないが、流石にそれを言ってしまえば何も進まなくなってしまう。……【思考読み】で相手の思考を読んでもいいが、あれはあくまで相手が今考えている事を読めるスキルであって、相手が心の底から自分の事を神だと思い込んでいたりすれば無意味でしかない。


 どうしたものかと頭を掻く秋に目の前で微笑む自称女神が言葉を発した。


「まぁ、これだけで信じていただけるとは思っていません。ですので、今から私達神が住まう世界──神界(しんかい)にご案内しようと思うのですが……どうでしょうか?」

「神界?」

「えぇ。神の世界と書いて神界です。そこであれば私も本来の力を取り戻す事ができるので、雰囲気で信じていただけると思います」

「…………」

「今から私が案内しようと思っているのはこの世界──ヴァナヘイムの神界です。……ちなみにあなた、久遠秋さんが生まれた世界──アースガルズには、今から案内する神界とは別に神界があるんですよ」

「そうなのか……まぁ、取り敢えず案内してくれ。そうでもしなければ話が進まないからな」


 そう言う秋に頷いたベールは秋の肩に手を当てて何かを呟いた。

 すると、色で溢れていた景色は一転し、気が狂ってしまいそうなほどの真っ白な空間へと、瞬きを一度するまでの短い時間で移り変わった。

 派手な光など何もなくまるで、お前は最初からここにいたんだぞ、とでも言わんばかりの呆気ない移動だった。


 そんな景色の変化に気を取られる間も無く秋はその場を飛び退いた。攻撃を仕掛けられたわけではなく、自分の肩に手を置いている人物の気配が瞬く間に膨れ上がったからだ。水風船に一気に水を詰めたかのような……破裂しそうな勢いで膨れ上がったものだからそれを危険だと判断したのである。


「どうでしょうか。これで少しは……神だとは思わないまでも、それに準ずる何かだとは理解していただけたのではないでしょうか?」

「あぁ分かった、信じる。どうやらお前は本当に神らしい。これで俺の正体を知っているのも納得がいった」


 秋がそう判断するのは、過去に戦った事がある神と同程度の力をベールから感じるからだ。シュウ……には及ばないまでも、それに限りなく近い強さを感じるのである。

 秋がシュウから聞いた話によると、どうやらシュウは神でも手に負えないほどまでに強くなってしまったせいで、神に殺されず、邪神討伐を命じられ、そして邪神をその身に封印するに至ったのだとか。……ならばシュウと限りなく近いち強さを秘めている目の前の存在は、神と認めるには十分過ぎる力を有している事になる。


 そこで秋は引っ掛かりを覚えた。

 目の前の存在は、神ですら手に負えないほどの力を得たとされているシュウに限りなく近い力を持っている……それに気付いてしまった。

 もしこの運命の女神の強さが神の基準であるならば、シュウが神々の手に負えないと言う事はないはずだ。


 考えられるのは、神の中でもこの運命の女神ベールが強者の部類に入る事……シュウが何らかの手段でステータスを分散させた状態で且つ、手加減をしながら秋と戦っていたというような事だ。

 前者であれば秋にとってなんの問題もないが、後者であった場合はシュウへの殺意が高まりストレスが溜まるだけである。


 そして「……まぁ、答えは後者だろう」と考えた秋は、絶対いつか殺す、と何度目か分からない決意を胸にベールの反応を窺う。


 何やらベールは驚いたような表情をしていた。それは、あっさり神だと信じられた事を信じられない……そんな表情だった。


「お前が神なのは分かったが、俺になんの用だ? ……世界と神の対立についてなら、俺は中立に近い第三勢力として在るつもりだから協力はしてやらないぞ。それとも、勇者や賢者とかを遣わせて魔王討伐なんかをさせるぐらいだし、神様直々に俺を始末しようという事か?」

「……いえ、どれも違います。……あなたを始末したいのは山々ですが、しかし、私達ではもうあなたに敵わないと判断しました。ですが、存在するだけで周囲の人々の運命を変化させてしまうあなたは、私達にとってとても邪魔な存在でして、早く人里から消えて頂きたいのです。……なので、私達がこれ以上あなたを攻撃しない代わりに、あなたにはどこか人里離れた場所で暮らしていただこうと思いまして、こうしているのです」


 苦々しい表情で言うベールに、首を縦に振らない秋。

 今はまだ人里を離れる事はできないが、きっとその内そうするだろうとは思っている。いつまで経っても老いない者がいつまでも人里に居座って老いる存在の側で生き続ける事がいいものだとは思えないからだ。


 ……人間の欲深さを秋はよく知っている。他でもない自分が、人間を堕落させてしまえる、人間を罪へと導く欲望や感情──傲慢、強欲、暴食、憤怒、怠惰、嫉妬、色欲を象徴した大罪のスキルを持っているのだから。


 エルフでも吸血鬼でもない、ただの人間の姿をした秋が老いない存在だと知れば、研究者達はどんな手を使ってでも不老不死の研究を進めるためにサンプルを得ようとするだろう。

 そうすれば、フレイアを完全蘇生させてから再会する予定のニグレド達にも危害が及ぶ可能性があるので、いつまでも人里にとどまり続けるべきではないと理解している。

 ……後は単純に、人里で生きていく上で、マーガレット達のように親しくなった人物が、世界が滅びるまで永遠に続く時の中で無情に無慈悲に老いて、一切の情け容赦なく命の灯火が消えていくのをひたすらに見届けたくないからだ。


 だから秋はいつか人里を離れ……誰も寄り付かない滅んだ国に魔王城などを作ってフレイア達と平穏に暮らそうと考えていた。……勇者や賢者を迎え撃つため~魔王っぽいから~などはあくまで後付けの理由でしかなく、本当の事を言えば魔王城はそうして平和に暮らすためのものだった。


「周囲の人々の運命を変化させる……か。思い当たる節はたくさんあるな。運命の女神であるお前には俺みたいなのはとても迷惑だったんだろう……すまなかった。……だが、安心してくれ。お前に言われなくとも俺はそのうち人里を離れるつもりだったからな」

「そうだったんですね。それはよかった。断られてしまったら打つ手がなくなっていたところだったので、すんなり受け入れてくれて感謝していますよ、久遠秋さん」

「受け入れたって言うか、元々そのつもりだったんだ。そんな事で感謝されたくないな」


 笑みを浮かべて頭を下げるベールに困ったように返す秋。

 仮にも神と言う立派な存在であるのにそれほど丁寧に対応するのはどうなんだ、と言いたかったが、自分を無闇に刺激しないためなんだろう、と考える。

 まるで腫れ物に触れるかのような扱いだが、そんな視線や対応にはうんざりするほど付き合ってきた。……そんな事よりも、これで神界にも自由に行き来する事ができるようになった事を喜ぶ。

 神を殺すなどと宣っていても、神に会うための確実な手段はなかった。

 なかったのだが、シュウと邪神を殺した後に転生の神の代理が現れた事から、白の世界が、神が三柱も簡単に現れる高位の世界……限りなく神界に近い場所だと推測した秋は、白の世界そのものを喰らって神界に流れ着くつもりだったのだが、それはつまり世界の狭間を漂うと言う事。危険しかないその方法を取る必要なく神界に辿り着けたのは僥倖と言えた。


「さて、戦う必要なく魔王の危険は去った事ですし、邪神崇拝者(テイネブリス教団)の方々が行おうとしている事をとめませんと」

「……どうしてそこでそんな奴らの名前が出てくるんだ?」


 ベールの呟きに反応した秋が訪ねる。


「……実はですね、人々の運命を狂わす魔王であるあなたを討つために、邪神崇拝者の方々と協力して邪神を復活させ、邪神とあなたを戦わせようと考えていたんです。ですけど、あなたが人里離れた場所に住んでくれると言うのならもう邪神崇拝者などと協力する必要はなくなりましたので、邪神の復活をとめようと思っただけです」

「お前、どうしようもない奴だな。いくら人のためとは言え、邪神なんかを復活させたらさらに大きな被害を齎すって分からなかったのか? しかも、利用するだけ利用して、用済みになったら捨てるってどれだけ自分勝手な事を言っているか理解しているのか? ……俺が言えた事じゃないが……」

「もちろん全部理解していますよ。ですが、狂った運命が将来的に齎す被害を考えればこのぐらい安いものですよ。そして、そうならないように神である私と計画を練ったり会話したりできたんですから、それだけであの人達は感謝するべきであって、捨てられたからと文句を言ってはいけないんです」


 自己中を目指していたお前が言うな……と思うが、確かにベールがしようとしている事はとても自分勝手だった。運命の変化を食い止めるために下界の人々に干渉したが、魔王が人里離れたところで暮らすと言って問題が解決したから終わり……など、自分勝手もいいところである。


「狂った運命は私の手を離れ、他者の運命にも作用していくんです。それが連鎖していけば、蝶の羽搏きのような些細なものだった運命の風は、他者を巻き込む運命の渦となって、やがて嵐へと姿を変えてしまい、誰の手にも負えない滅びを招いてしまう……そうなるぐらいならば邪神を復活させ、意識が覚醒していない状態の邪神を支配して魔王と戦わせ、勝利した邪神を私達神が総力を持って、下界に影響を与える事のない神界で始末すればいいのですよ」

「運命の嵐とやらが脅威だから邪神を使って──と言う考えは分からなくもない。……そして、確かに復活したての邪神は弱かったから支配するのも容易だろうが、邪神を倒せないからお前達神はシュウに邪神討伐を押し付けたんだろう?」

「それは、私達の支配下になく、さらに敵対関係にあった邪神を神界に連れてくる事ができず、私達が戦う事が不可能だったからですよ。その点、シュウさんであれば人間だろうと神だろうと関係なく自分の世界に連れ込む事ができました。ですから私達神はシュウさんに邪神討伐を押し付けたんです」

「なるほど、やはりシュウは他の神と少し違うのか。会話の流れを予想していたわけじゃないが良い事を知れた。……まぁ、悪かったな……お前達の事情もロクに知らないのに突っ掛かって」


 神界から秋を観察して、ある程度の性格を知っていたベールは、秋が自ら非を認めて謝罪した事に目を丸くするが、すぐにその顔に笑みを張り付けて手を振った。


「別にいいですよ。……それでは、私の用事も済みましたしそろそろ地上に送りますね」

「どんな事情があろうと、お前が自分勝手なのは確かなようだ。……じゃあな、またそのうち会おう」


 ベールに転移させられる前に自分で【転移】のスキルを使って神界へ行く前の路地裏へと転移した秋は、ロキシーへと姿を変えて路地裏を出てダンジョンへと向かった。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







 カイネフール洞窟から派生したダンジョンにある四本の通路。そこから模倣のダンジョンへと続く通路を選んで進む秋。通路の奥まで【転移】を使わないのは、通路の途中に張ってある氷の壁を破壊するためだ。


 この通路に現れる魔物は遊戯の女神が生み出したものであり、愉悦のために秋にもう一度遺跡世界を味わわせて進ませるための魔物である。

 秋が一部屋進む度に満足していく遊戯の女神が再び魔物を生み出す事がないのは、通常のダンジョンから模倣のダンジョンの十三部屋目までマーガレット達と進んだ時に確認していた。

 だからここを進む冒険者が模倣のダンジョンの危険に晒される事はなく、一生誰も最奥まで到達できないままにしておくのも憚られるので氷の壁を破壊する。そして、何もない通路が続いているために到達する意味がないので、氷の壁を壊す意味もなければ残しておく意味もないのである。


 それでも破壊するのは、遊戯の女神に会うついでだ。


 十三部屋目の先に辿り着いた秋は、氷の壁を粉々にできるほどの力で氷の壁を殴り付け粉砕する。


 ……この世界に存在する一般人がLv1の時のステータスの平均値は10前後である。つまり、魂の集合体を殺して喰った事によって数億の魂を得た秋のステータスは数十億は優に越えていると言うわけである。

 もちろん、それは全ての生物がLv1であった場合の話だ。


 騎士や冒険者などの魔物を殺してレベルをあげたりしている者もその中には含まれているために、秋のそのステータスは数十億程度ではとどまらない。Lv10の時のステータスが平均値100前後……ステータスの上昇には個人差もあるのでそれよりもステータスの数値が高いと言うのもあり得てしまう。亜人や魔人も含まれているとなればもっとである。

 そのため、この大陸屈指の大国で騎士や冒険者の数も多いこの国の生物を喰ったと言う事は、秋のそのステータスは数百億を越えていてもおかしくない……と言うか、レベルアップした時のステータスの上昇も含まれているので数百億は確実だと言える。


 なのでステータスが一千万程度しかない時に生み出したこの氷の壁を粉砕するのには、大した力を必要としなかった。……一千万と言うだけでも、この世界の神と同等かそれ以上のステータスなので、今の秋のステータスが異質過ぎるのはよく分かるだろう。


 そんな秋を、桃色や水色、黄色と言ったふわふわした色合いの世界から眺める遊戯の女神──ルキア。とっくに身嗜みは整えているために、今か今かとメルヘンな世界をウロウロしながら秋の到来を待っている。……と、模倣したダンジョンの最奥に秋の気配を感じた。


 目を輝かせ、遊戯の女神となった四型元(しかたはじめ)という少女は──ルキアという少女は声を発した。

 前に秋と接した時の、あざとくて、ウザくて、軽くて、頭の悪そうな態度で……道化のように振る舞った。


『──やっほー☆ アタイの可愛い秋クン! アタイが恋しくて会いたくなっちゃったのかにゃぁ? かにゃかにゃ☆』

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