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第275話 意欲的であるか、意欲的でないか

 アブレンクング王国に到着していたフレデリカ達一行は、まずは宿をとってから街で聞き込みを始める。

 だが、当然ながら秋達はこの国へやってきていなかったので情報が手に入るはずがなかった。


「何の手がかりも掴めませんね……」


 宿屋の一室で呟くスカーラ

 ちなみにこちらは女子部屋であり、アンドリューやシュレヒト、アークなどは別の部屋に泊まっていた。


「……て言うか、国を出たって決め付けて出てきちゃったけどさぁ……まだミレナリアにいるかも知れないよね」

「えぇ、国王様の指示ですから従っていましたが、ミレナリア王国内にいる場合やゲヴァルティア帝国方面に向かっていた場合、私達の旅はただの徒労に終わってしまう可能性があります。今のところそうなってしまう可能性が非常に高いですね……」


 モニカの一言に反応してフレデリカ言う。「国を跨いだのに無意味なんて勘弁して欲しいよね……」呟くのはモニカだ。自分が言い始めた事だが人に言われると感じ方が違うようだ。


「……皆さん、マイナスな事を言うのはやめましょう!」

「でも、何も手がかりがないのが現状だよ、お姉ちゃん。……こんなの嫌でもマイナス思考になっちゃうよ」


 立ち上がってスカーラ、モニカ、フレデリカの三人元気付けようとするナタリアだが、モニカに言われて再び座り込んでしまった。


「では、今まで通り小さな村や町でも聞き込みをしながら行動しましょうか。手がかりがない以上、そうするしかないですから」


 フレデリカがそう締め括ってこの話は終わった。



~~~~~~~



 一方、アンドリューやシュレヒト、アークがいる男子部屋では特に目立った事は話されていなかった。

 この旅のリーダーはフレデリカであり、行動の決定権もフレデリカにあるため、フレデリカがいない場所で行動方針について話し合う意味がなかったのだ。

 その上、こちらにはそれほど秋と親しかった人間がいないので、そこまで積極的に秋の捜索をする気がなかったのだ。


 アンドリューは秋が貴重な魔法を使えるからと言う理由で、アークは一度突っかかってしまった事のお詫びのつもりで、シュレヒトはスカーラが捜索するから。そんな程度の理由でこうして旅をしていた。


 今になっては全員がそれを後悔している。軽い気持ちで捜索に乗り出したはいいが、一向に手がかりがみつからず、空気を触っているような感覚が延々と続くのだから、後悔してしまうのも当然だと言えた。無意味な時間を過ごすのが苦痛で苦痛で仕方なかった。


 そんな中、シュレヒトが口を開いた。


「なぁ、どうすんだよ。この旅」

「どうとは?」

「何の手がかりもねぇ、空っぽで無駄な旅。こんなの続ける意味なんてねぇだろ。……だから、やめるかやめないかの話だ。俺は姉御に付いていくがお前らはどうすんだ? やめるなら今の内だぜ? 時間が経てば経つほどやめにくくなるからよ」


 シュレヒトが頭の後ろで腕を組みながらベッドに横になってアンドリューとアークに尋ねる。


「僕はやめたいと思ってますよ。でも、国王様からのお願いです。そう簡単には投げ出せないですよ」


 そう言うアークに頷くアンドリュー。それに「だよなぁ……」と呟いてそのまま目を閉じるシュレヒト。



 シュレヒトの瞼の裏に映るのは、暴力の記憶。

 いつでも、どれだけ時間が経っても張り付いて剥がれない濃密な暴力の記憶。自分が振るうものだったり、振るわれるものだったり、振るわれるのを見ていたりと様々だ。


 シュレヒトの家はスラム街のすぐそばにある治安の悪いところにあった。だから、幼い頃から日常的に見ていた汚い場所で振るわれる暴力。


 子供が殴られたり蹴られたりして、昏倒したところで袋に詰めて誘拐されたり、薄汚い服を着て地面に座り込む男も女もが等しく、道行く人々のストレスの捌け口にされる。殴られ蹴られ、斬り付けられ……時にはスラム街のもっと奥へ連れていかれ、それから二度と帰ってこなかったり。


 痛みによる悲鳴が目覚まし時計のように、子守唄のように、朝から晩まで晩まで絶え間なくと言っていいほどに聞こえる、そんな暴力で満たされた場所だ。


 シュレヒトがどこかへ向かう途中や帰宅する途中などでそう言った暴力に襲われる事は度々あった。さらに言えば自宅を漁る強盗に出会した事もあったし、家まで追跡されてそれから家に押し入られて暴力を振るわれた事もあった。


 お前は俺を襲おうとしていた! だからこれは先制攻撃であり、正当防衛だ!


 そんな事を宣いながらシュレヒトを殴打する者は少なくなかった。完全な被害妄想なのだが、この街ではそうなってしまっても仕方ないほどに、理不尽で無意味な暴力で溢れていた。


 ただ、シュレヒトはこの被害妄想の暴力が日常的に見られる無意味な暴力より好きだった。


──振るうのに意味がある暴力とはこんなにも振るわれていて納得がいく清々しいものだったのか。……ありがとう、こんな素敵な事に気付かせてくれて。




 こんな酷い環境で育ったシュレヒトは暴力に慣れて暴力を振るう側にならなければならなかった。

 自分を守るために。攻撃される前に攻撃できる、意味がある暴力を振るえるようになるために。


 そんな時、徐々にシュレヒトは暴力に美しさを見出だしていた。

 飛び散る鮮血や唾液、折れて舞う歯。暴力を振るった衝撃で揺れる肉。そして意味がある暴力。


 誰かに暴力を振るう瞬間だけは世界がゆっくりに映って見えた。だからこそ血飛沫が舞う光景などに美しさを見出だしてしまった。本来なら一瞬で過ぎ去る光景をスローモーションでまじまじと見てしまったからこんな事に気付いてしまったのだ。


 それは【共鳴】と言うスキルの効果だった。シュレヒトが無自覚に行っているのは暴力を振るわれている相手との体感時間の共有だ。

 相手を殴って音を鳴らせる事によって【共鳴】が発動し、その効果で相手が感じている体感時間を共有しているのだ。

 殴られている側からすれば怖くて仕方ないだろう。

 絶え間なく振るわれる暴力にいつ死ぬかが分からなくなった危機管理能力が異常を起こして、景色が流れない走馬灯のような現象を起こしているのだ。だから殴られている側は体感時間が遅くなり、その体感時間を共有しているシュレヒトが暴力に美しさを見出だせた。


 ……まぁ、実際に異常を起こしているのはシュレヒトが持つ『任意発動能力』の部類に入る【共鳴】と言うスキルなのだが。



 そんなシュレヒトが更に暴力に惹かれる出来事が起こった。

 ミレナリア王国の避難所で、スカーラに助けられた時だ。シュレヒトが暴力を振るったわけではないのでその暴力はスローモーションには見えないはずで、美しさを見出だせないはずだった。


 だがそれなのに、舞うように鮮やかな戦いをするスカーラの暴力にまたもや美しさ見出だしてしまった。


 自分が殴ったわけではないのにスローモーションに映るスカーラの知的で意味のある暴力。これがスローモーションに映るのは今までのものと違って確実に錯覚だったのだが、それでも美しかった。


 シュレヒトは、醜い無意味な暴力の記憶を、美しい意味のある暴力で上書きして記憶を浄化するためにスカーラの側で暴力を見るのだ。


 シュレヒトが振るう【共鳴】によってスローモーションに見える暴力でもいいと思うだろうが、シュレヒトはスカーラが振るう、知的で意味のある美しい暴力が見たいのであり、シュレヒトが振るう、原始的で意味が定まらない醜い暴力ではないのだ。


 だから、無意味な旅であろうとも、シュレヒトはスカーラの暴力を見たいがために旅を続けるのだ。




 やがて目を開ければ真っ暗な部屋が広がる。どうやら眠ってしまっていたようだ。


 ゆっくりと体を起こしてシュレヒトは部屋を出て女子部屋の扉をノックする。だが、返事はない。ならば下の階で夕飯でも食べているのかと思い階段を下りる。


 そこに広がっていたのは仲良く複数の机をくっつけて夕飯を囲むスカーラ達と、他の客達だった。


「おい、なんで誰も起こしてくんねぇんだよ」

「起こしましたよ。でもシュレヒトさんが起きなかったんですよ」


 頭を掻きながら言うシュレヒトにアークが答えた。そしてシュレヒトは空いていた席について、その席に既に用意されていた食事に手を付け始めた。


「そうだ、これ誰が頼んでくれたんだ?」

「スカーラさんですよ」

「か、かか、会長!?」


 平然と答えるフレデリカに、何で教えるの!? と言ったような顔で突っかかるスカーラ。

 スカーラがフレデリカに突っかかる理由は、シュレヒトの食事をスカーラが頼んだとなれば、それを舎弟への好意と受け取ったシュレヒトが調子に乗るからだ。


「スカーラの姉御~……!」

「ちょ、ちょっと、こっちに来ないでください~っ!」


 そうして瞬く間に騒がしくなった食卓。このパーティの賑やかしはどうやらスカーラとシュレヒトの二人らしい。そうと聞けばきっとスカーラは不満がる事だろうが、事実なのだから仕方ない。







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







 マーガレット、ラモン、エリーゼの三人はゲヴァルティア帝国から魔の国へ向かって一直線に進んでいた。風の魔法で追い風を発生させたりして移動速度を上げたからか、意外なほどに到着までの時間は短縮されていた。


 今の日時と言えば、ジャンク達がこの国に到着した日の翌日だ。

 かなりの時間をゲヴァルティア帝国で過ごし、マーガレット達より先に進んでいたジャンク達に追い付けるほどに、街道を無視して一直線に進んだと言うのは大きかった。


 そんなマーガレット達がジャンク達と再会するのはすぐだった。


 ラモンがヴァルキリーの宿の食堂で、ヴァルキリー達に嫌悪感にまみれた視線で見られているところに、ちょうど宿に帰ってきていたジャンク達が通りがかったのだ。


「おぉ、ティアネーとライリーさんとジャンクとグリンじゃないですか」


 そう声をかけるのはマーガレットだ。ライリーにだけさん付けなのは、ライリーがミレナリア王国の騎士団長と言う立場だからだ。同じミレナリア王国の騎士として勤めるマーガレットは、所属は違えど上司であるライリーに敬称をつける必要があった。


「マーガレットと、エリーゼ、それにラモンじゃないか。元気だったか?」

「はい。ライリーさんも元気そうで何よりです」

「当然だ。騎士団長ともあろう者が旅などで参ってはいられないからな」


 それからライリー達は適当に食事を注文し、店員とマーガレット達に許可を得てからマーガレット達の机に自分達の机をくっつけた。


「それで、マーガレット達もクドウを探しているんだよな?」

「はい、ライリーさん達もですよね?」

「あぁ。クドウは私の生徒だからな、責任を持って探す必要がある」

「……つっても、一人の生徒を相手に旅に出て捜索すんのもやり過ぎだとおもうけどな」


 敬語で答えるマーガレットにそう言うライリー。そんなライリーにグリンが言った。


「何を言う。生徒は我が子も同然だ。失踪したのなら探す。当たり前だろう?」

「その、生徒は我が子も同然、ってのがそもそも異常だって言ってんだよなぁ……生徒は生徒であってお前の子供じゃねぇんだからさ」

「よく分からないな。教育を任されているのなら私達は母親のように、或いは父親のように振る舞うべきだろう?」

「わけ分かんねぇ」

 

 子供を育てるのは親の役目。だから子供の教育を任されている教師と言う立場なのなら、親のように大切に扱って親のように真摯に向き合うべき。


 それがライリーの考えだった。


 このようにライリーはライリーなりの考えを持って行動している。だからライリーの思考を……もしくはそれに似た思考を持たないグリンには理解ができなかった。


「そんな事より、マーガレットさん達はどうです? 手がかりとか見つかりましたです?」

「いや何もないな」

「そうですか……何か知っていればと思ったですけど……」

「すまないな」

「いえいえ、謝らないでくださいです!」


 お互いに何の手がかりも掴めていない事に少し落胆するマーガレット達とライリー達。


「…あ、そうだ。冒険者ギルドがあんじゃねぇか」

「冒険者ギルドがどうかしたのか?」


 ハッとしたラモンの呟きにジャンクが反応する。


「…あぁ、冒険者ギルドだ。ギルドカードの使用履歴とかでアキ達の居場所を探れんじゃねぇかと思ってよ」

「ラモン、お前、意外と賢いのか?」

「…ひでぇな、ライリー先生……」

「いやすまない。普段があれだから頭が悪いのかと思っていたんだ」


 体育の授業をやる気なさそうに受けていたり、普段の言動からライリーにバカだと思われていたラモン。そんなラモンの予想外の発言にライリーは思わず失礼な事を言ってしまった。


「良い考えだとは思いますわ。ですが、ギルドカードの使用履歴と言うのは一般人がそう簡単に知れるものではないんですの。入国の手続きなどにも使われる身分証でもありますし、ギルドカードの使用履歴を……と言うのは難しいと思いますわよ」

「まぁそうだろうな。……あ、でもライリーさんなら騎士団長の権限とかで特別に教えてもらえたりとかは……?」


 エリーゼの発言に納得を示し、まぁ無理だろうなと思いながらマーガレットは一応ライリーに聞く。


「無理だな。ただの騎士団長である私にそこまでする権限はない。……もっと高位の貴族であれば、もしかしたら可能かも知れないが、だがしかし冒険者ギルドはそう言った貴族が振るう権力に強いからなぁ……」


 ラモンを賢いと褒めておいてこの言い草だ。本当のバカはライリーなのかも知れない。

 きっとエリーゼがこの案を否定して、マーガレットがそれに納得していた時には冷や汗をかいていた事だろう。


 貴族や王族は冒険者ギルドに対して高圧的に接する事ができない。戦争などの大きな、国の存続に関わる事であれば別だが、基本的に権力で冒険者ギルドは動かない。


 国の安全を主に守っているのは騎士だと思われがちだが、実際はそうではなく冒険者が国の安全を守っているようなものだ。騎士も守ってはいるのだが、それよりも冒険者の働きが大きい。ぶっちゃけ、国の半分以上の安全を守っているのが冒険者である。常日頃から魔物を倒して生計を立てているような輩なのだから当然だと言える。


 なので国の半分以上の安全を守っている冒険者ギルドに不用意に権力を振り翳して、それが気に入らなかった冒険者ギルドが国に反発してしまえば、たちまち国は危機に晒されてしまうのだから。だから貴族や王族は冒険者ギルドに対して無力であった。


 こんな異常な力関係を築いてしまったのは、冒険者ギルドがこれほどまでに力をつける前に何らかの手段で縛らなかった昔の貴族や王族の怠慢だと言えるだろう。


「…そうか……んじゃあ、エリーゼ。ルイスもダメそうか? あいつは俺達を贔屓してくれてたしよ、もしかしたらいけるかも知れねぇぜ?」


 そう言えばルイスは自分達を贔屓してくれていたな、と思い出したラモンはエリーゼに尋ねる。この中でこう言った事に一番詳しそうだからエリーゼに尋ねる。


「ルイスさんですの……? ……うーん……どうでしょう……わたくし達は最近冒険者活動をしていませんし、贔屓する価値がないと思われていそうなものですけれど…………でも、交渉してみる価値はあるかも知れませんわね」

「…おぉ! マジか。じゃあ決まりじゃねぇかよ。 うし、じゃあ明日の朝この国を出てミレナリア王国に戻ろうぜ。んでルイスんとこ行こうぜ」


 肯定的な意見を口にするエリーゼに喜びながらラモンがそう言う。何の手がかりもない状況なのでマーガレットとエリーゼから反対は出ずに無事にそう決まった。


「もしよかったら私達も一緒に行っていいか? このままクドウ達の居場所が曖昧なまま旅を続けていたら頭がおかしくなりそうなんだ」

「もちろんいいですわよ。ね、マーガレットさん、ラモンさん」

「そうだな。ライリーさんが一緒なら心強い」

「…俺も別に構わねぇぜ。男一人ってのも居心地悪かったからな。ジャンクとグリンがいるなら大歓迎だぜ」


 いくらパーティメンバーとは言え、流石に女性しかいない旅路は居心地が悪かったようで、ラモンはこう言いながらもジャンクとグリンに懇願するような目を向けている。


「助かる。三人もそれでいいよな?」

「はいです!」

「あぁ。……ラモンが可哀想だからな」

「先生がいいのなら俺も問題ねぇよ」


 そんなわけで誰一人反対する事なく、同行が決まった。やはり目的が明確ではない旅は精神的な疲労が大きいようで、ライリーティアネーはともかく、ジャンクとグリンはそんな言い方しながらもどこか救われたようなありがたそうな顔をしていた。とは言っても誰かが気付けるほどの表情の変化ではなかったので誰もそれには気付いていなかった。


 それから明日の朝に出発すると言う約束してから団欒とした様子で食事を済ませ、そうしてから各々部屋に戻る。


 ラモンだけで一部屋、マーガレットとエリーゼで一部屋、ライリーとティアネーで一部屋、ジャンクとグリンで一部屋……と言ったような部屋割りになっている。


 ラモンとジャンクとグリンで一部屋で、マーガレットとエリーゼとライリーとティアネーで一部屋にすれば良いと思うだろうが、お互いに合流できるなどと予想もしなかったのでこんな無駄が多い部屋割りになってしまっている。


 他の客からしたらさぞ迷惑な事だろう。実際に、仲良く机を囲んでいたラモン達が四つの部屋に入っていったのを見ていた他の客──ヴァルキリーはそれを見て眉を潜めていた。


 これがヴァルキリーが嫌悪する対象がラモンやジャンク、グリン以外にもマーガレット達にも移ってしまった瞬間だった。




 ヴァルキリーはどんな小さな悪でも、些細な調和を乱す者でも見逃さずに裁きを下す、無慈悲で過剰な正義感に囚われる生物だ。


 怒りの赴くままに壁を殴り付けたり地面を強く踏み鳴らしただけでも、泥酔したなどの理由で気分が悪くてそこらに吐瀉物をぶち撒けてしまっただけでも、街中に痰を吐き捨てるような割かしどうでもいい迷惑な者でも、喫茶店などの店内で下品に騒ぐ者でも、一度だけ軽めの暴言を吐いただけでも、誰にも迷惑をかけない欲にまみれた者でも……そんな程度の者でも容赦なく裁きを下すのだ。


 それが故意であるか故意でないかなどを問わず、小さな悪やでも、些細な調和を乱す者でも裁きを下す。


 だからヴァルキリーを視界に入れれば行動を止める者もいたりする。先ほども言った通り、どんな些細な事だったとしても少しでも調和を乱せば裁かれるのだ。それが人と肩がぶつかった、だとか、何か物を落としただけでポイ捨て扱いされたりして裁きの対象になるのだから行動を止めるのも納得できると言うものだ。


 そんな厄介極まりない性質を持つ上に、ヴァルキリーは常に仲間と行動を共にしており、更にその仲間との連携が物凄く上手い。それだけ聞けば戦争などに駆り出せばこれほどにない戦力になるんじゃないかと思うだろうが、戦闘を行っているだけで悪と認識されるので、味方であろうと裁かれてしまうので本当に扱い辛い生物である。


 ちなみにヴァルキリーは亜人と魔物の中間と言う曖昧な存在なのだが、亜人か魔物かと言えば亜人寄りの部類になる。

 背中には白い翼があったり、頭部の側面に特徴的な飾りのように見える何かがついているが、亜人寄りだ。

 魔物だと言って譲らない者もいるが、人間と同等の知性もある人型の生物なので亜人寄りと言う事になる。そう言った面で見ればアラクネーやアルラウネも亜人寄りだと言う事になるだろう。


 そんなヴァルキリーに目を付けられてしまった。ラモンやジャンク、グリンは嫌悪感を向けられるだけだったのが如何にありがたい事だったかを思い知らされる事になるだろう。

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